山立石池【1】

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現地踏査日:2012/3/11
記事公開日:2012/3/18
東岐波の北部で阿知須と接する付近に山立石(やまだていし、やまだちいし[1])池という細長く大きな溜め池がある。

知名度はそう高くないと思われるので、地図で位置を確認しておこう。


溜め池の名称は国土地理院の地図にも記載されている。
ちょっと変わった名前の溜め池なので先ほどネットで検索してみたが、この池に関する情報としては何もヒットしなかった。国土地理院の地図では溜池名が記載されている。


この近辺を宇部側から走ると、山陽自動車道の下をアーチカルバートでくぐった後、左側に黒谷池が見え始める。市境は黒谷池の先端部分まで引かれ、道路はその途中に市境があるので、池の途中で市境標識に出会うことになる。
写真は3年前に自転車で訪れたとき撮影した市境標識…ここが市道片倉引野線の終点となる


他方、右側にある山立石池はこの道路からは山の尾根と雑木に隠されて全く見えない。いや、実を言えばこの記事を書く時点で初回の11日を含めて2度ほど現地踏査を試みているものの、未だに池の全容を見ることが出来ないでいる。
したがって今からお届けする連続2編には遺憾ながら山立石池本体の写真は一枚もない。あらかじめご了承頂きたい。

そもそも何故この溜め池を訪れる考えを起こしたかは、市内で名前のある溜め池を踏査するという一つのタスクもさることながら、地図を眺めるだけでも現地がどうなっているか気になる物件候補がこの溜め池の近くに少なくとも2件あったからだ。
そのうちの一つは既にYahoo!ブログの速報記事として公開済み

折しも仕事で東岐波方面へ向かう用事ができたので、その帰りにちょっと遠回りして踏査してみようと思った。
厳密に言うと事実関係は逆…あまり訪れることがない東岐波へ行く用事ができたので何となく地図で周辺を閲覧していて現地踏査したくなる物件を発見したのである

11日の午後、私は一仕事こなした後に市道片倉引野線を経由して阿知須入りし、最初に予定していた廃物件を訪れて相応の成果を得た。帰りも同じ道を通り、その途中でこの溜め池に接近できる経路を模索していた。

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阿知須側から山立石池の堰堤に向かう進入路があることは地図で把握してあったし、最初の物件に向かう際に確認してあった。
道中、車を停められる場所に乏しく、この道の途中から池を目指すのは歩いてでも難しいという感触を得ていた。

そして帰路にちょっとこの入口側へハンドルを切って停車してみた。
当然のことだが入口にはフェンス門扉があり車は乗り入れられなかった。


車の中からズーム撮影している。
有刺鉄線付きフェンスではないが、誰にでも読める明確な文字で立入禁止と書かれている。
乗り入れるどころかここへ車を停めることもまかり成らぬと明示されていた。


市境へ至るまでの道(西岐波野口線)はうねうねと曲がっていて幅員もそう広くなく、安泰に車を停められるスペースがない。
駐車禁止区間ではないのでハザードを出して路駐できないこともないが、路線の殆どはカーブが多くて見通しが悪い。緊急でもない限りこんな道に車を停めるのなど非常識の部類である。

この道の途中に車を停め、正規の通用門以外の踏み跡を探すことは諦めてそのまま宇部市側に戻ってきた。
埋設型のトンネルというかアーチ立体交差を過ぎた脇に市道の旧区間があり、そこへ車を停めた。


今しがたくぐってきた山陽自動車道とのアーチ状立体交差。
市道片倉引野線の一部であり、車を乗り入れた部分は旧道区間にあたる。


旧道から分岐して溜め池の方へ向かっている砂利道があった。
しかしここも同じ規格のフェンス門扉があり、立入禁止の札が提示されていた。


最初、このフェンスの前に車を留め置いていた。
立入禁止だけではなく、駐車するのもダメらしい。それも禁止レベルではなく厳禁、通報します!の文字とパトカーのイラストまで入った念の入りよう…


何もこのフェンスの前へ停めなくとも周辺は広いので、あれでもあるかも知れないフェンス門扉を解錠して出入りする作業車の邪魔にならない場所まで車を移動した。

それにしても…あまり気持ち良いものではない。
この先に何か機密情報施設でもあるならまだしも、在るのはただの溜め池の筈である。何だか部外者に探られるのを酷く嫌悪しているようなイメージだ。何度もこの門扉の前に車を留め置かれ邪魔になったとか、勝手に溜め池へ侵入され産業廃棄物を投げ込まれたとか、過剰反応せざるを得ない事件が過去にあったのだろうか…

もっともこの場所の立入禁止ゲートは正直、それほど厳格にする意味がないことはすぐ理解できた。
フェンスは土手の途中で切れていて容易に回避できるし、水路を辿って迂回する経路もあった。


もっともフェンスに立入禁止が明示されているなら、その真横から他人様の畑に踏み込んで内側へ入るなどさすがに常識人ではない。

外側の畦畔を歩こう。
そこなら用水路の経路を眺めに来たなどの理由は充分立つからだ。
前方は市道請川王子線との交差点


畦畔に沿って歩く。
これなら確かに車の進行は阻止できても、山歩きする人に対してあのフェンス門扉は殆ど無意味だ。交通量の多い市道に面しているので、誤侵入防止の意味もあるのだろう。


水を湛えた幅広の水路に沿って遡行する。
しかし現地へ到達する前からでも視認できる同様の表示板の存在で、先の状況が読めてしまっていた。


ダメと知りつつ田の端まで歩く。
同様のフェンス門扉がここからも見えている。


そして再度の立入禁止表示。
掲示が出ていませんでしたとは絶対に言わせない徹底ぶりだ。


ここにも「山立石土地改良区」の文字が見られる。
この表示で池の名前と管理主体を確認できた程度の収穫しかなかった。


ここのフェンスは最初に見たのとは違うタイプだ。
支柱を立てて細い鉄線を格子状に張る簡素なもので、山際にぴったり接していない。傍目には脇が甘いようにも見える。


そこは泣く子も黙る山立石土地改良区である(苦笑)
そんな粗雑な管理をしている筈もない。遠目には見えていないだけで、フェンスの隙間部分には有刺鉄線が数条しっかりと張られていた。


写真には撮っていないが、この鉄条網は地山の斜面までぴったり設置される念の入れようだった。

そして水路側。
さすがに新幹線などに見られるような水路にはみ出す形の忍び返しはない。したがってリスクを承知でフェンスにつかまり反対側へ行くことは、物理的には可能だろう。


しかしそういう非常識な手段をもってしなければ先へ進めないなら、この先の侵入阻止の意図は非常に堅いと言わざるを得ない。少々の藪なら漕いで進むくらいは遂行する私でも、常識的に考えてここは部外者が進攻してはならない場所であると断言せざるを得ない。

近くにあった床版の上から先を撮影してみた。
水面は殆ど流れる動きが見えないことから、この辺りから既に山立石池の水面と同レベルなようだ。もっとも水路自体先で曲がっていて、溜め池の一部すら見ることはできない。


そういう訳で、この日のところの結論:
到達できませんでした。終わり。
そのまま車に戻ってアジトへ帰る以外なかった。

それにしても山立石池は、今まで私が市内で見てきた中で最も部外者に対して排他的な印象を与える溜め池だ。市境を隔てて隣接する黒谷池とは酷く違う。
それと言うのも黒谷池は尾根部分を通る道から楽に見渡せるし、接近も容易である。特に宇部市側へ近い入り江付近で天気の良い休日に釣りを楽しむ人の姿を見たことがある。山立石池では釣りなどもってのほか、絶対に部外者には立ち入らせないという堅い意志が感じられる。

もっともこの程度で完全に諦めてしまうのは早計だ。山立石池は”実地に赴いて観てはいけない溜め池”な訳がない。現に山陽自動車道はこの池の東側にある宇部J.C.を経て池の上を高架橋で渡っている。今の瞬間もこの池の上を渡る車があるし、徒歩で自動車道に入ることはできなくとも池を見渡せる到達可能な場所は必ずあるだろう。

同じ週の土曜日に再び東岐波方面に向かう用事があることが分かっていたので、その時を狙って私は別の作戦を練っていた。

(「山立石池【2】」へ続く)
出典および編集追記:

1.「東岐波ふれあい散策マップ」によれば、読み方は「やまていし」となっている。ただし「ふるさと東岐波」では「山立石溜池(やまだちいしためいけ)」と記載されている。築堤が1684年という大変古い溜め池である。総括記事を作成した折りに一連の記述を取りまとめると共にファイル名を "yamadateishi" に変更する予定。総括記事を作成しファイル名も変更しました)

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