厚東川・五田ヶ瀬井堰

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記事作成日:2020/7/28
最終編集日:2023/8/26
五田ヶ瀬井堰とは厚東川の下流から2番目にある井堰で、厚南平野一帯に灌漑用水を供給する御撫育用水路の取水地である。
写真は西岸(右岸)下流側からの撮影。


位置図を示す。


東岸(左岸)側に取水設備はなく、専ら御撫育用水のための井堰である。歴史的にみて建設時期も御撫育用水路と時を同じくしたと考えられる。初期の井堰は江戸期に建設され、昭和初期から中期、平成期に至るまで数回改修されている。
《 関連する設置物 》
周辺にある関連設備をまとめている。御撫育用水路にかかる設置物も含めている。
【 井堰操作室 】
右岸側にあり、堰板の操作を行う。宇部市御撫育土地改良区の所管。
平成12年に改修され現在に至っている。(銘板


後述する改修記念碑と共に、厚東川氾濫時の水の浸入を避けるために護岸を高くした場所に造られている。
【 可動堰 】
井堰は電動式で、数ヶ所に上下動させるポストが設置されている。


【 瀬渡りの飛び石 】
対岸との往来ができるように、コンクリート製の飛び石が設置されている。


将棋の駒のような形をしていて、尖った方が上流に向いている。


五田ヶ瀬という名称からも、井堰以前からこの辺りが浅瀬であったことが推測される。
【 魚道 】
左岸側(末信側)の階段の下に魚道が設けられている。


厚東川の水量が少ないときは、堰を流れ落ちるだけで魚道に水が流れていないときもある。


右岸側にも井堰の横を通せる部分があるが、常時板で塞がれている。清掃時などで井堰の内側に溜まった水を流すための水路かも知れない。
《 航空映像 》
現在の航空映像。


昭和49年度版。


昭和39年度版。


モノクロ映像などでは温見地区に補助水源として掘られた井戸がわずかに見えている。
《 アクセス 》
接近の容易なのは右岸側である。ここでは左岸側を主体に補助的に右岸側へのアクセスも記述する。
【 左岸側 】
県道宇部駅停車場線を恒石八幡宮の鳥居前で曲がり市道末信棚井2号線に入って山陽線の河原踏切を渡る。末信方面から行く場合は、厚東川の末信橋を渡ってすぐ右折し、市道を北に進むと護岸道との分岐点に出てくる。
写真は市道との分岐点。


未舗装の護岸道が延々と続く。離合場所がないが見通しが良く行き止まりなため対向車両の心配はない。

途中で山陽小野田市水道局の取水地の横を通る。


そこを過ぎると護岸路はコンクリート路に変わり急な下り坂になる。下ったところは護岸がやや広くなっている。


これより先も車の乗り入れは可能だが、両側が厚東川と御撫育用水路で柵はなく夜間は転落する恐れがあるのでここに車を停めて歩いた方が良い。

最後に可動堰の前で登り坂になる。


堤防はここで終わっていて、この先はかつて山陽本線を横断する踏切があったようだが、現在は踏み板がなく廃止されている。
市道沖ノ旦末信持世寺線より護岸に向かう道があるが、野生動物の侵入を防ぐ金網で塞がれている。
護岸道は県管理なので、金網の状態を元に戻すことを前提に開けて入って良いと思われる。
《 近年の変化 》
・2018年11月のこと数年振りに五田ヶ瀬井堰を訪れたところ、井堰の下流にある飛び石まで降りる階段の前に立入禁止の札が出ているのを見つけた。


立入禁止の札は工事現場によく見られるアニメ柄の汎用もので、設置責任者の銘が入っていなかった。階段降り口は塞がれてはいなかったが、周囲の目があるためせっかく撮影に訪れていながら引き返す以外なかった。
飛び石伝いの道は昔から慣行的に通行されてきた筈であり、県に苦情のメールを送った。このときの返答は「うちが設置したのではない。御撫育用水路の水利組合に訊いて欲しい」とのことだった。

・2020年1月に再訪したとき、階段前の立入禁止の立て札に「宇部市御撫育土地改良区」の文字が追加して貼られている変化があった。県への問い合わせが多いため管理主体を明確にするために貼ったと思われる。


・同年6月22日に「にんげんのGO!」のシリーズ”隧道どうでしょう”のシーズンIII向けのロケで広瀬地区にある昭和隧道を訪れたとき、予定の待ち合わせ時刻より早く現地に着いたので御撫育用水路関連の写真採取のために五田ヶ瀬井堰を訪れた。


この後でロケ地となる昭和隧道の前で、現地案内役の御撫育用水路理事長に会った。収録が終了した後、私は前述の五田ヶ瀬井堰の飛び石通路へ降りる階段上に設置されていた立入禁止の札について尋ねた。外部からバス釣りなどの目的で護岸道をクルマが走り回る苦情が地元から出ており、県に相談したところ立て札が設置されたようであり、苦情対応について県との間で認識の違いがあったことが推察された。理事長は「飛び石の通路は温見在住者が昔から往来に使っており立入禁止にするよう依頼した積もりはない」とのことだった。この応対をした県の担当者は年度替わりで異動しているため、現状では立入禁止の立て札が取り除かれる可能性は薄い。

・2023年8月上旬に今月号のコラム題材として現地訪問し最新の写真を撮り直した。コラムは Vol.87 として25日に配信された。
出典および編集追記:

1.「宇部の水道」p.78

2.「厚南を生きた人たち」(江本主幹)p.147〜158
《 地名としての五田ヶ瀬について 》
五田ヶ瀬は厚東区棚井にある小字の一つである。地名明細書では棚井村の高野小村に五田ガ瀬(ごだがせ)という独立した小字として収録されている。対岸の吉見村温見小村にも同名の小字があること、瀬に因んだ命名であることから古くから顕著な瀬があったのかも知れない。

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