厚東川・末信潮止堰

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記事作成日:2016/9/4
最終編集日:2020/7/28
末信潮留井堰[1]は厚東川のもっとも下流側にある井堰で、河口から遡行する海水を阻むと共に厚東川の水位を堰き上げて表流水を取り込む機能をもつ。
写真は東岸(左岸)側からの撮影。


位置図を示す。


左岸(東岸)側では常盤池向けの常盤用水の取水、右岸(西岸)側では広瀬浄水場向けに原水の取り込みを行っている。堰は電動制御でステンレス製のポストで支えられている。通常殆ど最高位まで堰き上げられている。川魚の遡行を助けるために左岸側に魚道が設置されている。
上流東岸側に末信水源地があり、海水の遡行を阻止する重要な役割をもつ。

この井堰は昭和16年に初期のものが造られ、それ以前は堰がなかった。昭和14年の大渇水期には厚東川が干上がったところに海水が遡行し、末信水源地へ浸透し機能停止に陥る事態が起きている。厚南村と協議し、厚南平野の米を買い付ける代わりに五田ヶ瀬井堰で取っていた御撫育用水を得ることで窮地を切り抜けている。

換言すれば現在でも満潮と大潮が重なったときには、この井堰の下まで海水が遡行していると思われる。

《 取水設備 》
【 左岸側 】
常盤用水路の取水口となっている。
【 右岸側 】
広瀬浄水場向けの表流水を取り入れている。この取水口は市水道局の第7期拡張工事により実現されている。当初は厚東区の下岡で取水する予定であったが、下岡で取水可能な程度の余剰水があれば更に下流でも取水可能である筈とされ下流域の水利権者の同意が得られなかった。広瀬での取水では夏場の渇水期に不足水量が発生する可能性を残しつつも昭和42年に水利使用の許諾を受けている。[2]
《 アクセス 》
接近の容易なのは左岸側である。ここでは左岸側を主体に補助的に右岸側へのアクセスも記述する。
【 左岸側 】
市道沖ノ旦末信持世寺線を進み、松賀川を横切る場所にある十字路(勝手呼称「黄金の十字路」)から厚東川方向に進む。車を乗り入れることはできないので、末信接合井に向かう霜降山管理道手前のフェンス横に車を停めて歩く。十字路より厚東川へ向かう管理道(恐らく広瀬浄水場向けの埋設管路)があるが、後述するような野生動物の畑荒らし被害が増えたことから金網で塞がれ通れなくなっている。金網を固定する紐を解いて通行して良いかは確認を要する。遠回りになるが、北側の宇部興産末信ポンプ所の横から護岸に沿って南下する。

この道はコンクリートを散布しただけで均していないような表面の荒れた路面であり、自転車に乗って走行するとパンクしやすいので注意が要る。歩行やジョギングでもここで転倒すると膝を大怪我をする。


なお、以前は川面がまったく見えないほど灌木が繁茂していたが、2019年の護岸維持工事で伐採され見透しが良くなった。車での進行は可能であり狭いが井堰近辺で転回可能。ただし釣り客が訪れていることが結構あり、護岸路で鉢合わせになると離合不可能である。
井堰の右岸側は広瀬水道局の敷地が近く、古川に隔てられている。末信橋を渡って右岸土手に道はあるが、往来需要がなく途中から酷い荒れ道となっていて徒歩でも進攻不能である。工事が継続していることもあり、末信橋から先の護岸路に工事関係者以外立入禁止の立て札が出ている。
《 近年の変化 》
近年、田畑がイノシシなどの野生動物に荒らされる被害が増加している。末信地区も例外ではなく、集落を通る市道沖ノ旦末信持世寺線沿いには一面に野生動物避けの金網が張られている。
2014年頃よりこの金網が勝手呼称「黄金の十字路」からの通路部分を横切る形で設置され通れなくなっている。この金網は一年中設置されているため、現在では末信潮留井堰を始めとする構造物などを観に行くには、宇部興産末信ポンプ場の裏を通り左岸沿いに下る大回りをしなければ到達できなくなった。

金網が張られている通路部分の管理が何処にあるかは分からない。末信接合井から広瀬浄水場に送水する導水管の埋設路となっているので企業局ないしは市上下水道局管理と思われるが、もしそうならこの金網は適宜除去して通行して構わない筈である。他方、通路の両側は個人の田であり金網がなければ野生動物被害は避けられない。
管理主体を問わず金網の固定部分を容易に外せるようにしておき、通行可の標示を出した上で通行後は元に戻すことを推奨する札を出して欲しいと思う次第である。
長門峡発電所の榎谷取入口を踏査したとき見つけたこの場所のように

・2013年4月頃に井堰の左岸側にある魚道の一部にコンクリート補強材が追加打設されている。


この施工の目的はよく分からないが、堰板が動かないよう固定するためと思われる。川魚の遡行に影響がないかは不明。

・2019年6月頃に井堰の下流右岸側の壊れた護岸の補修工事が行われた。この護岸は古川との合流点であり、少なくとも2013年にはブロックが壊れて崩落したままになっていた。


・2019年8月頃から県の河川維持工事の一環として末信橋より下流左岸側の護岸に繁茂していた灌木や雑草を一掃する作業が行われた。護岸路の悪路は手つかずのままだが背丈より高い雑草に阻まれていたので景観的にスッキリした。


出典および編集追記:

1.「水道の歴史」の”厚東川の水利用の現況図”ではそのように記載されている。他方、同書籍の p.110 には広瀬取水堰と書かれている。末信側からのアクセスが容易なことから本記事では末信潮止堰として記述しているが、固定された正式名称が異なっている場合は書き換える予定。

2.「宇部の水道」p.109〜111
《 個人的関わり 》
注意以下には長文に及ぶ個人的関わりが記述されています。レイアウト保持のため既定で非表示にしています。お読みいただくには「閲覧する」ボタンを押してください。

末信潮留井堰およびその両岸にある案件に関して殆ど調べ終えた現在でも市道を自転車で走るとき堰を豪快に流れ落ちる水を観にしばしば訪れる休息地点の一つである。

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