真締川・白濁水事件

河川インデックスに戻る

記事作成日:2016/2/27
記事編集日:2016/3/21
ここでは、2014年の夏頃から秋口にかけて真締川の上流域で白く濁った水が流れ河川付近の在住民を懸念させていた事象を白濁水事件と仮称して解説している。
写真は白濁水が流下している最中に土田橋上流のくるま井手で撮影された映像。[2014/11/16]


なお、本事件は原因が解明され一応の解決を見ている。後続する時系列記事は、未だ原因が明らかになっていない時点での聞き取りや憶測による情報を含むことをお断りしておく。
《 概要 》
この現象は2014年夏頃から特に酷くなり近隣住民を悩ませていたようである。具体的には真締川の上流、市道高領中山線(通称テクノロード)の下流にある下面井手付近の排出口より乳白色で悪臭を放つ液体が大量に排出されていたという。

白濁した河川水の外観は洗剤のようであり、落差ある場所では空気を抱き込んで著しく泡立っていた。周囲の空気は温泉のような硫黄臭が感じられ、特に酷いときには河川に近い家屋では窓を開けられない状態だったという。[1]

この現象を個人的に目撃したのは2014年の夏だったが、白濁水が流れる現象そのものは4年程度前から起きていたとも言われる。[1] 流下場所近辺では明白な汚濁と悪臭が認められる状況だったが、下流域へ向かうにしたがって川上川や白石川などの別水系を取り込むため濃度が下がり、石田橋付近では注意して観察しなければ判明しない程度の濃度に薄まっていた。このため上流域の在住民は悪臭と汚濁水の不安を感じながらも、中流域より下流側ではまったく認識されていなかったようである。

白濁水が流れている現象そのものはかなり早期に真締川の河川管理者である県、保健所更には警察にも報告されていた。上流には河川への排水を行う企業および企業団地があり、当初はそれらの不法排水も疑われた。しかし白濁水を採取し分析した限りでは、環境基準に照らし合わせて違法な要素が見当たらず白濁の原因も判明していなかった。このため濁って悪臭を放つ水が流れる現状がありながら、在住民はなす術もない状況に置かれていた。
《 個人的関わり 》
私がこの事件に接したのは、真締川にある井手の写真を撮るために上流域を何度か訪れたことによる。最初、ある地元在住民に白濁水が流れて困っている旨の話を聞いた。そのときは真締川の水は清澄だったので状況が把握できなかった。

2014年の夏、何となく再び井手の写真を撮りに上流域へ向かったとき初めて白濁水が流れている現場を見つけ撮影した。更にタイムリーなことに、このときちょうど前回お話を伺った在住民と接触し、まさにこの現象ですと説明された。そして真締川に洗剤のような水が流れていることを懸念し、また家の中まで流れ込む悪臭に困っているのに一向に対処されない現状をとつとつと語られた。更に白濁水が流れている最上流の場所に案内された後、ぜひともこの現象をレポートして欲しいと依頼された。

一連の状況を記録した後、私は現状を写真などと共に記述し、依頼者に迷惑の及ばない範囲で情報共有しますと伝えた。これらの詳細な報告は後述の時系列記事に作成済みであり、限定公開に供されている。
2014年夏に真締川上流域を訪れ、たまたま白濁した水が流れている状況を目にしたときのレポート。全4巻。

注意次編以降の4巻は限定公開記事です。閲覧するには規約の同意と申請が必要です。
(状態:執筆完了、版:2014/11/24作成)

時系列記事: 真締川・汚濁水放流事件【1】
限定公開の理由は、執筆当時は白濁の原因が分からず、下流域で真締川の水を採取し田に充てている農家の風評被害を招きかねないこと、憶測で企業による不正排水を疑っている描写があること、地元在住民の特定の恐れがあることによる。後述の通り、現在ではほぼ原因が解明されており企業による不法排水ではないことが分かっている。
環境基準はクリアしている以上、記事タイトルの「汚濁水放流」は不適切とも言えるが、執筆当時は原因が判明していなかったことに鑑み記述当時のままにしている。
《 執筆後の状況変化 》
2014年の夏は特に状況が酷かったせいか苦情が相次いだようで、同年12月には地元メディアによる記事として配信されている。[2] この時点でも環境省の定める水質汚濁に係る環境基準値を下回っていたことが判明している。

その後の分析により、工場からの排水が真締川を流下する過程で自然環境に由来する化学反応を起こし、著しい白濁と異臭を放つ現象が起きたという結論が得られた。
詳細な廃液成分は分かっていないが、工場から出た時点では完全に環境基準を満たしているものの、流下中に分解されて好ましくない外観や臭いを発する化学物質が生成されたものとされる。住民からの苦情にも「温泉のような匂い」「古い卵のような臭い」とあるのは、含硫化合物が分解され硫化水素などの化合物が発生していたものと思われる。

母体物質そのものは排出基準にリストされていないが、環境へ放出されることで分解し有毒な物質を発生することで問題になった事例としては、2012年に利根川水系へキサメチレンテトラミン(HMT)を含む廃液を排出したことによる事件が著名である。[3] この場合は HMT の排出を規制する法制が存在しないため行政指導に留まっている。今回の真締川の白濁水事件も(もちろん母体物質は異なるが)同様の状況であるかも知れない。
このことは環境基準の策定においては工場の廃液の成分のみに限定するのではなく、自然環境に放出され反応や分解が起きたとき問題となる化学物質が生成されるなら、母体となる化合物の放出も何らかの規制が必要になるかも知れないことを示唆している。

なお、当該原因となった母体化合物を排出した企業は明らかにされてはいないが、原因が判明した後は排出後も同じ現象が起きないよう対処されているようである。2016年現在において同じ現象がなお続いているという報告は耳にしていない。
厳密には事件後の経過を再度地元在住民から聞き取ることが必要
【 最近の状況 】
項目記述日:2018/7/11
2017年夏季頃に市内在住のある方を訪ねたとき、本件について未だ充分な解決には至っていないことを示唆された。現在も断続的に同種の排水が行われているようで、白濁した水が流れているのを見たという。また、この方は元眞寺にある山王の滝で水垢離をしていて白濁水を浴び、その後暫く皮膚の症状に悩まされたと話した。山王の滝は真締川の支流にあたる川上川(名称要確認)にあり、最初に現地住民に案内された水系とは異なる。
出典および編集追記:

1. 地元在住民からの聞き取りによる。詳細は時系列記事を参照。

2.「宇部日報」2014年12月3日付の記事。

3.「Wikipedia - ヘキサメチレンテトラミン|事故

ホームに戻る