市道それ自身よりもその後に続く古道と昔の峠を訪ねるレポートが主眼になるだろう。
そうは言うものの古道や峠の存在に気づいたのは、この市道の名称によるものが大きかった。また、峠へ至るまで名前を冠したこの市道を通るので、導入編を兼ねてここに紹介することにした。
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山口県は本州の最西端に位置し、県の西部で中国山地は海に落ち込んでいる。中部地方のように度肝を抜くほど高く険しい山が少なく、必然的に標高1,000mを超えて進む道路は殆どない。とりわけ宇部は瀬戸内海に面した平野部が主体なので、名前の付いた峠自体が少ない地域である。
絶対数が少ないために、名前のある峠は逆に目立つ。私自身も国道など主要幹線が越える市内の峠や位置は大体頭に入っているし、そのうちのいくつかは現地を訪れ、写真を撮っている。
しかし宇部に何十年と暮らしながら、「そんな峠があったっけ?」という名前に接した。
サヤノ峠。
その名前を知ったのは、市道名を調べ始めた一昨年のことだった。この峠名を含む市道の名前は、洲角サヤノ峠線である。市の道路河川管理課に出向いて路線図を開かなければ、恐らく一生その存在を知ることがなかったであろう。
300番台はじめの路線番号は、この市道が東岐波にあることを示している。路線名からは、洲角という小字に起点があり、サヤノ峠という市境にある峠が終点になる市道だろうと想像される。
しかし道路河川管理課の路線図を眺めていて、不可解なことに気付いた。
この市道は、峠に向かっていない?

●が起点で → の向く場所が終点になる。
市道は、国道190号が扇田川を横切る付近からスタートして東に向かい、JR宇部線を渡って日ノ山の麓を通る別の市道(岐波門前線)へぶつかって終わっている。経路の途中にはどう見ても峠らしき場所はない。
この市道名の由来って一体…?
考えられそうなことは、終点が”サヤノ峠に向かう別の道であったということか、あるいはかつての終点が実際に市境の峠だったのどちらかだろう。いずれの場合でも実際にサヤノ峠という峠が存在していたことになる。この市道の終点が日ノ山の麓にあることからすると、日ノ山の肩を越えていく道ではないかと考えたくなるのは自然だ。
私にとって東岐波地区は幼少時代から未知の世界で、昔の歴史などは殆ど知識として持ち合わせない。しかし幸いなことに、先人たちの遺してくれた宇部の道に関する書物に接する機会があり、その中でこの峠に関する小さな記述を見つけることができた。
引用しておく。
> 阿知須町との間、日の山峠(サヤの峠)から門前、花園、磯地、西蓮寺坂、王子、片倉、別名として「日の山峠」とも書かれていることから、紛れもなく東岐波門前と阿知須との境にあったらしい。それもかつては阿知須と宇部新川を結ぶ主要な道だったという…
> 開、寺の前、宇部新川へ通じる旧道は阿知須の船人たちが頻繁に往来した道…
出典: ふるさとの道”(山口県ふるさとづくり県民会議編)
宇部から阿知須へ向かう自動車の通れる道は、日の山を迂回して海岸沿いを進む道(市道丸尾岐波浦日の山線)を除けば、現在でも国道と県道の2本しかない。そのいずれも日の山の西側丘陵部を越え、形の上では確かに峠となっている。以下の2枚は2年前に撮影された写真である。
しかし最高地点付近に山口市・宇部市境の標識があるだけで、どちらも峠としての名前は(恐らく)ない。
かつて阿知須の船人が宇部の街に向かうとき越えたサヤノ峠は、
これとは全く別の古道だったのでは…
そう推測したのも、国土地理院の地図を眺めているうちにそれらしき経路が見えていたからだった。これとは全く別の古道だったのでは…
今はどうなっているのだろうか…
その峠は、現代にあって
どんな眺めを見せてくれるのだろう…
市道が峠の名称を冠された呼称であるからには、道中に何か手がかりがあるかも知れない…その峠は、現代にあって
どんな眺めを見せてくれるのだろう…
行ってみよう。
自らの脚で峠を究める踏査レポートは、
今回が初めてになる。
---今回が初めてになる。
市道の起点付近に来ている。
場所は東岐波、国道190号の上り線歩道から撮影している。この写真からは外れているが、画面の左端にスーパー丸喜東岐波店がある。市内から阿知須方面に向かう車は大抵ここを通るから、見覚えがある風景だろう。
国道を横断し、市道の起点に向かう。
正面には宇部の最東部にある日ノ山が見えている。
ここが市道の起点になる。
標識めいたものは特になく、ごく普通の市道だ。
センターラインのない、1.5車線幅相当の舗装路。車は殆ど通らないが、周囲が開けているせいか寂れた市道という印象はない。
正面に象が伸びのびーっとした姿でお馴染みの日ノ山が見える。地元では親しまれているし、現在でも車では登れないので、軽いハイキングを兼ねて登る市民は意外にあるようだ。
ほどなくして市道はJR宇部線を横切る。
踏切名は門前東第2踏切。
少し道幅が狭くなり、一路日ノ山の裾野を目指していた。
日ノ山にぶつかる寸前で、別の市道(岐波門前線)へT字路の形でぶつかり終点となった。
ただこれだけで、道中はとりててて見るべきものはなかった。
国道を離れて市道はほぼ単勾配で日ノ山の裾野を目指し、峠らしき場所は全く通過しなかった。周囲を注視しつつ進むも”サヤノ峠”に関する史跡や説明板なども一切見かけることはなかった。
【路線データ】
(延長など各データの正確性は保証できません。参考資料とお考えください。)
(「サヤノ峠【1】」に続く)| 名称 | 市道洲角サヤノ峠線 |
|---|---|
| 路線番号 | 303 |
| 起点 | 国道190号・交差点 |
| 終点 | 市道岐波門前線 交点 |
| 延長 | 約400m |
| 通行制限 | なし |
| 備考 |
(延長など各データの正確性は保証できません。参考資料とお考えください。)