市道真締川南小羽山線【3】

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現地踏査日:2012/12/11
記事公開日:2012/12/12
(「市道真締川南小羽山線【2】」の続き)

仕事柄、週に3度は小羽山地区に車を走らせ、この市道を往路として通行する。そのため微細な工事があってもすぐ気付くことができた。今年の10月頃に前編で問題視していた邪魔なガードレールが撤去され、その後すぐロードペイントが新しく引き直された。

今日のこと、珍しく午前中に小羽山へ出向く用事があったので、帰りに写真を採取してきた。
本編では前編の写真を撮った後に改変された後半部分のみを掲載している。
《 ガードレール撤去と標示板設置 》
前編までをご覧になっている読者ならこの場所の説明は不要だろう。
鳴水付近の大きなカーブを抜けた付近で起点を振り返って撮影している。


舗装が新しくなり、減速を促すロードペイントが上書きされている。


黒々としたアスファルト路面に白いペイントがとても目立ち、新たに設置されたような印象を受ける。しかし前編までの写真を見れば以前から存在しており、車の通行で掠れたので上書きしたことが分かるだろう。
ロードペイントはプレーンな舗装面に溶着材を余盛りする形で描かれるので、数ミリの段差ができる。このため行き交う車は帯を跨ぐたびにパタパタと通過音を立てていた。
その微細な振動で注意喚起する役目も果たしている

しかし…
道路面で新しくなったのは舗装とロードペイントだけだ。歩道部分はまったく変化がないし、残念ながら車道部の片勾配問題が解決されていない。以前と同じ横断勾配だ。


つまり、カーブを曲がるとき座席の荷物や運転手自身が外側に引っ張られる問題は道路構造の変更ではなく減速によって対処すべきということになる。
誘導矢印ペイントがカーブに沿ってなく直線ってのは何だかなぁ…以前はちゃんと曲がっていたよ^^;


振り返って撮影。
荒れた舗装面を削って同じ厚さでオーバーレイしたに過ぎない。


写真には殆ど車が写っていないが、敢えてそのようなタイミングを選んでいるだけだ。実際には平日の午前中ながら結構な交通量があった。”なるべく無関係なものを写し込まない”というガイドラインを画定しているから、車の切れ目を待って撮影している。とりわけカーブが多く見通しが悪い市道なので、車道まで出ての撮影は充分な注意が要った。

この場所のカーブ半径は目測でも100m以下だから、これほどの交通量がある現状を考慮するなら、カーブには片勾配が欲しいところだ。
しかし今回も根本的な改良を加えなかったのはいくつかの困難な問題が付随するからだろう。

片勾配をどの程度に設定するかは道路の設計速度やカーブの半径にも依るのだが、この場所なら最低でも2%以上要るだろう。全幅6mの車道なら両路肩は12cmの高低差が生じる。カーブの内側で合わせるなら、外側のL型側溝は車道の下に埋もれるので据え直しが必要だし、場合によっては歩道やガードレールまで改変が及ぶだろう。施工期間も費用もかかるし、果たしてそれに見合う効果があるだろうか…ということになる。まして対象が市道であり、限られた市の予算の範囲で改良工事を行うなら、緊急性の高いものを優先するのは当然だろう。

その意味では、この先に設置されていた危険なガードレールの撤去は妥当だった。まったく無意味で危険な状態が放置されていたからだ。


これが以前の状況だ。
右へカーブする正面にわけの分からないガードレールがあった。


これが現在の状況である。
蛇瀬川を横断するコンクリート床版部分を除いて舗装が更新され、ガードレールが除去された代わりにカーブを示す標示板が設置されている。


市道維新山西山線の方には変更がない。
ついでながらあの赤い鳥居も健在である。


合流点付近では路側帯が破線で引かれている。以前はまったく何もなかったかラインが完全に掠れていて、夜間は道路線形が分かりづらかった。


以前の白いガードレールは危険だったが、道路線形がどちらに向かうかの目安にはなっていた。これが除去されることで直線的に突っこんでしまうドライバーが現れるかも知れない。その意味で路側の破線は必要だし、矢印の標示板もあった方が望ましい。

いきなり新しい標示板が設置されて戸惑わないようにという配慮だろうか…市所有のセフティコーンがそのまま置かれていた。
標示板の設置が最終状態ではなく仮設置を意味するものかも知れない


設置高が通常よりかなり低い。これは緩やかな登りになっていることを考慮したのだろう。遠方から標示板を眺めればドライバー視線の高さになる。

上と同じ場所から撮影した以前の状態の写真だ。
こんな感じで3スパン分のガードレールが車道に張り出し、わざわざ道路幅員を狭めていたのである。


ガードレールのあった部分は舗装を被せて分からなくなっていた。
先端の支柱部分があった穴にアスファルト合材を充填した痕跡が見える。


今年に入ってからのこの市道の工事履歴を思い起こすと…
確か春から夏場にかけて下水工事が行われていた。沿線に新興住宅地が出来たので、つなぎ込みのための人孔を設置したのだろう。このたび写真を撮った180度曲がりの辺りが終日片側交互通行になっていた。
その後、前編で概説した通り10月の中旬以降(正確には20日)にここを通ったとき、あの危険なガードレールが撤去されていた。通るたび気になっていたから撤去にはすぐ気付いた。この区間の舗装とロードペイント更新は下水工事の後だった。

このガードレール以外に撤去された付属物や構造物は存在しない。舗装面のオーバーレイ工事に先だって道路課か施工業者が指摘したのだろうか。
まさかこの記事を読んで危険に気付いたから撤去した…なんてことはないよね^^;

ガードレールが撤去されたことは安全面で大きく貢献できるとして…ただ一つ難癖を付けさせて頂くと、
どうして道路敷内に設置したの?


標示板は仮置されているのではなく、路面に削孔する形で2本のアルミ支柱を埋め込んでいる。
それが何故か道路敷にあり、片方の支柱はL型側溝上に削孔する形で設置されている。

この設置場所はまずいと思う。標示板が車道に近すぎる。ここを通る歩行者は多くはないが、夜間など右側通行の歩行者がバッグなどを引っかけるかも知れない。標示板はアルミ製の硬い部材なので角が当たると怪我をする恐れがある。また、車道からも近いのでスピードが出過ぎてカーブを膨らんで曲がる車が引っかける可能性大だ。

カーブミラー等も含めてこのような道路付属物は通行に支障を来さず視認しやすい場所に設置されるものである。その点から言えばL型側溝の外側が望ましいのだが、地権者と協議できなかったか単に仮設置の段階なのだろうか。

不謹慎かも知れないが…賭けてもいい。
この矢印標示板は、無傷で一年もたないと思う。
この場所が最終設置箇所なら、一年以内に往来の車がぶつかる、引っかける、擦るなどで標示板がダメージを受けるのではないだろうか。
支柱の根元は埋め込まれているが、レミファルトによる仮留めのようにも見受けられるので、地権者との協議が済み次第正規の位置(望ましいのはもちろんL型側溝の外側)に再設置するのかも知れない。

舗装やロードペイントなどの改修はここまでで、この先から終点までは何も変わった部分はない。しかし前編で触れていなかった追記部分があるのでついでながら述べると…

《 まこも池から流下する小川と昔の道 》
標示板が設置されている先で市道は左へ曲がる。南小羽山の終点を目前にして慌てて高度を上げ始める麓の場所だ。


このカーブの内側に若干気になる進入路がある。
入口には閂代わりの棒が置かれており、進入無用を無言で訴えているようだ。


この進入路らしき部分と市道の間に杉の木が並んで植わっている。何となく意味ありげで、もしかすると昔の道ではないだろうかと感じた。
しかし歩道から眺めるだけでもその先は竹藪に突き当たり道がなくなっていた。竹藪の近くまで平坦に押土されており、単なる土捨て場らしい。

前編でも触れたように、小羽山地区は昭和中期以降になって開拓され、この市道もほぼ同時期に誕生した。市道維新山西山線が人の営みによって自然発生した古くからの道と思われるのとは対照的に、市道真締川南小羽山線はほぼ全区間が人工的な路線だ。現在はあのような「酷い仕上げの直角カーブ」で終点に到達しているが、もし昔この付近に自然発生した道があるなら、別の経路を取っていた筈だと考えるのは自然である。

考えられそうなのがここから降りる道だ。
市道が「最後の追い込み」にかかっている中、この道は一旦沢に向かって下っている。


歩道から降りてちょっと先を偵察してみた。
沢に沿って水路があり、その傍らは畑地になっていた。道のようなものはない。


この水路の上流はまこも池に繋がっていることが分かっている。

水は低きに向かって自然に流れるので、川に沿った人の通る道が自然発生するのは道理だ。しかし小羽山地区は昭和中期以降開拓が進んだため、既設の道路は必ずしもその通りになっていない。
この場所は典型例で、地勢としては蛇瀬池に向かう大きな沢と、まこも池に向かうやや狭い沢がある。しかしまこも池から流下する名前のない小川に沿う道は現存しない。

まこも池から流れる水は、今も普通にこの経路を伝って蛇瀬池に合流する。しかし水路に沿って遡行することは不可能である。恐らく昔は道があったのだろう。しかし沢地にあった田が耕作されなくなり、荒れ地となってからは車はもちろん歩行者すら往来できない状況になっている。

前編ではこの市道について「南小羽山の丘に向かって登ろうという意思がみられない」と評した。あまりにも直前になって急勾配となっているからだが、実はそれなりに「努力をした形跡が窺える」と再評価しなければならない。
そのことはまこも池から流下する水路を点検すると判明する。

ここは市道が水路を横断する箇所だ。
小川は市道に対してもの凄く低い位置を流れている。路面から河床までの高低差は5m以上ついている。


ここなど特に分かりやすい。
元からあった水路の護岸は高さが2m程度だ。しかし市道はそこから更に3m程度盛土して通されていることが分かる。


もし地山なら、水路の護岸は最初から一勾配で造る筈だ。現状は元からあった護岸に継ぎ足す形で築いており、最初あった護岸の水路に沿って市道を盛土し、擁壁で補強したことが窺える。
土捨て場らしき場所も既に護岸の天端より1m程度高くなっている

つまりこの近辺のかつての原地盤は水路の天端や畑地だった筈だ。それは現況の市道より5m程度も低い。現状で既に精一杯盛土して勾配を緩めているのであって、これがなかったら終点に向かう最後の坂はもっと酷いものになっていただろう。

先の地図で市道の終点をピンク色の経路に合わせれば縦断勾配は更に抑えられる。他方、北小羽山地区に向かうにはかなりの遠回りになるのは否めない。
周囲の家屋や市道との取り付けが決まっている以上、この「最後の追い込みの坂」が緩和される可能性は殆どない。当面は冬場の夜間・早朝通行などは注意が必要だろう。

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