市道万来町線

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現地撮影日:2014/5/9
記事公開日:2014/5/10
「ばんらいちょう」 と読む。

穿った読み方をしてしまいそうだが意外にも素直な音読みである。その次にありそうな反応は、聞いたこともないその名称だ。
万来町って町があったの?
〜町という路線名になっているからには、万来町という町が存在していたに他ならない。しかし21世紀に入り、インターネットを縦横に使いこなす私たちは情報発信や探索の強力な武器を手にしていながら、ネット以前の情報となると途端に弱みを露呈してしまう。まだネット界に上がっていない情報は、自分が持ち合わせていない限り出会うのは難しい。実際、私がこの町名に出会ったのは例によって市の道路河川管理課で路線名をメモしていた数年前のことだった。

まずはこの路線の起点をポイントした地図を示す。


ここからスタートする道は一本しかないから経路もすぐ先の終点もすぐ想像が付くだろう。
場所は現在の住居表示では新町(しんまち)になる。万来町を冠したアパートや商店など誰でも容易に分かるものは何一つ存在しない。しかし後で述べるように「完全に失われてしまった町名」でもなかったのだ。
末尾で述べる
派生記事: 万来町について
起点に立っている。
地図でも推察されるように真っ直ぐな道路だ。生活道路指定されており大型車両は通行できない。


両側に路側帯のみペイントされた1.2車線相当の道である。
平日だったせいか写真を撮っている間に一台の車も通らなかった。


道の両側は割と昔からの個人商店や民家が並ぶ。飛び抜けて新しい住宅がない代わりに極めて古風という家もない。


公共の施設として、進行方向左側に市営の新町駐車場がある。
もっとも新町方面に出かけるときは自転車なので利用したことはない。


大通りに出る直前で右方向からの斜めの道に出会う。


市道新町線の終点の一つである。この市道はY字形をした奇妙な路線だ。既に記事化しているので詳しくは以下の記事を参照。
派生記事: 市道新町線|終点


前方に大通りが見えてきた。
接続される終点は、4車線仕様の市道東海岸通り線である。


視認性改良のため大通りとの取り付け部分を曲げて直角に接続している。
更に先に見えるのは国道190号の新町交差点である。


東海岸通り線の中央分離帯が切れていないので、ここから新町交差点が見えていながらも直接進むことはできない。このため本路線は起点側から入ってきた場合、途中の新町線へ曲がる流れが殆どでここから出る車はまずない。

終点より振り返って撮影。
荷物の配達をしていた宅配員以外車はもちろん誰とも出会うこともなかった。


やや離れて撮影している。
先の方に東海岸通り線の中央分離帯が切れている場所が見えている。もし本路線を起点から進んで新町交差点へ向かうなら一旦そこまで戻ってUターンしなければならない。
代わりに新町交差点側から本路線へ入ってくる車は結構多い


本路線の起点は真締川東通り線の途中から始まっているので双方向どちらも通り抜けには適さない道である。新町交差点へ向かいたい車は一つ海岸筋になる錦橋通り線を通っている。かなり地元管理道に近い形態の認定市道と言えるだろう。

なお、2014年5月から電子国土が完全廃止され上載せ地図が表示されなくなったので、本市道レポート記事より経路表示の地図表示を取り止めている。
既に作成されたその他の記事の上載せ地図情報も順次削除する予定
【路線データ】

名称市道万来町線
路線番号589
起点市道真締川東通り線・真締川公園前
終点市道東海岸通り線・交点
延長約200m
通行制限大型車通行不可。
備考

延長など各データの正確性は保証できません。参考資料とお考えください
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さて、むしろ本路線の興味はその名称となる万来町にある。市道本体の記述量が少ないので横話相当の記事を本編にまとめている。
《 万来町について 》
万来町(ばんらいちょう)は、かつて新町9丁目付近に存在したとされる町名である。
現在の住居表示には現れないし昭和初期に作成された宇部市街図にも見当たらない。本路線に名称として遺っているものの、通常認定市道の名称は工事看板でたまに見られる程度[1] で一般向けの情報ではない。

しかし驚いたことにネット上には万来町に関する昭和の混乱期を象徴するような出来事の項目が作成されている。いわゆる「万来町事件」である。[2]
詳細に調べれば当時の出来事を知る余地はあるだろうし、あるいは昔からこの近辺にお住まいの方なら身内の伝承で当時を知っている方もあり得るだろう。

もっと客観的に万来町の存在を知ることのできるものはないのだろうか…と周囲を観察していて、つい最近になって見つけることができた。
それは本路線と言うよりは市道新町線の経路に確認された。


新町線の終点近くに立っている電信柱である。
高い位置にプレートが貼られている。


電信柱のプレートに万来町の名称が遺っていたのだった。


プレートは平成17年の年号が見えているので、割と最近交換されていながらも電話線ないしは電線を管理する上で今でも万来町を路線名として使っているらしい。

電柱に古い地名を思わせるプレートが取り付けられていることは以前から散発的に観察はされていた。小字や昔の町名を調べる上での重要な情報源であり、今後ウォッチ対象に含める余地がある。
もっとも認定市道のように路線に沿ってトレースする予定はない…そこまでやったらきりがない^^;
《 丸正について 》
電信柱のプレートと言えば、本路線の終点側から入ったとき左側に位置する電柱にも今では意味がよく分からない情報を見つけた。

本路線の終点側からみて大型車両通行不可の表示板が取り付けられている電信柱である。


電柱の高い位置にプレートが取り付けられている。


ズームで撮影。「丸正」という文字がみられる。
順当にいけば「まるせい」または「まるしょう」と読むのだろう。しかし何を意味するのかは分からない。


電信柱の表示板には古い地名が遺っていることが多く、最近になって注目し始めた対象である。回線や電線の経路名を特定するために命名されているらしく複数の柱に取り付けられている。

丸正町という町があったとは考えづらいので、この名称は町名ではなく何かの屋号ではないかと考えている。かつてこの近辺にあった有力な商店や工場が名称のみ遺ったのではないだろうか。他の場所でも明白に町名や地名とは思われない表示板をいくつか観測しているからだ。[3]
出典および編集追記:

1. 道路工事でも必ずしも市道名が記されるとは限らない。たとえば下水管布設や補修に係る工事では市道名ではなく下水の幹線名などが記されるのが通例である。

2.「Wikipedia - 万来町事件

3. 工学部通りには山口大学工学部と高専を元にした「高工」という路線表示板がみられる。現役でない建物の例としては「勉強堂」という路線名が昭和町付近にある。

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