市道吉ヶ原線【1】

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現地踏査日:2012/5/13
記事公開日:2012/6/1
市道吉ヶ原(よしがはら)線は、善和の吉原集落にある小さな市道である。路線の両側に民家が散在し、最後の一軒を過ぎて沢の奥を目指してそこで殆ど行き止まりになる…という山あいの典型的な道だ。
路線の途中に通行不能区間を持つ道は国道や県道レベルでも結構あるが、特定の目的地へ到達せず他のどの道にも接続されない行き止まりは少ない。これが市道となると登山道に合流するか、全く道がなくなる事実上の行き止まりのどれかになるのが通例だ。

この道は殆ど地元住民の生活道的意味合いが強く、私にとってはそれほど特別な要素はない。沿線住民はまさかこの鄙びた道がネット界に一つの記事として提出されるなど思ってもないだろうし、眉をひそめられる事象かも知れない。
認定市道だから道の写真を撮るのは自由だし、車を乗り入れることもできる。私がこの市道を記事化するのは、この先に存在する「ある特別な物件」を記事として遺す導入編とするためである。市道自体は行き止まりなので、進攻する前に地元在住民に行き止まりを忠告されるとか、帰りに車を転回するのが厄介な事態に見舞われるかも知れないことを申し添える。[1]

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はじめにこの市道の起点を地図で示しておく。
国道490号を瓜生野交差点まで車で走ったことのある方ならこの地図だけで場所が分かると思う。


この近辺一帯は二俣瀬区善和であり、吉原は下善和バス停のある付近になる。国道490号が善和川を挟んでJR山陽本線と並走する区間だ。
市道吉ヶ原線の起点はバス停の若干南側にある。
この写真だけ一昨年の秋撮影のものである


起点より撮影。
側溝工事を行っているようで、市の看板が立っていた。


このちょうど反対側には善和川を渡る橋と善和八幡宮へ向かう石段がある。


この日(13日)はちょうど善和八幡宮の例祭で、善和集落から最も近い参道になるこの場所にも幟が立ち、祭りに繰り出す子どもたちの自転車が石段の前に停まっていた。
余談だが私は前日パソコンの不調に見舞われネットに接続できなくなり、近くのパソコンショップに修理依頼に出していた。パソコンが無ければ全く仕事にならないどころかアジトに居てもストレスが溜まるだけなので、修理の終わる夕方まで予定外に善和八幡宮の例祭を観に行くことになった。
祭りは大盛況で参加者が多く、残念ながら誰一人とて知った方にお目にかかれなかった。それで少し早めに退散し、この市道とあの場所の写真を撮っておこうと車を置いて歩き出した次第だ。

市道は普通車がやっと一台通れる程度の幅で、舗装はされている。


市の設置したカーブミラーがあるのだが…支柱部分は錆び錆びで限りなく古い。ミラーには庇も付属していなかった。
そもそも四角いタイプの支柱を見るのは初めてだ


前方に看板で示唆されていた工事の形跡が窺えた。


アスファルトの端をカットし、U字溝を据え付ける工事が進められていた。蓋掛けまで行えば道路幅を有効に使えるだろう。


道の両側の山が次第に迫ってきており、沢を遡行していることが感じられる。道路センターには一定幅をカットした痕跡が見える。汚水管を埋設したのだろうか…


山腹部を削ったままの場所があった。ここは昔からこうなっていて、更に土砂が崩れないようネットが被せてある。


更に沢の幅が狭くなり、広めの沢の中で蛇行していた吉原川が市道に接してくる。


ちょっと路肩に寄って小川を見下ろしてみた。
練積ブロックに両岸を固められているが、河床には削られずに自然の岩が残されていた。


沢の一番奥にある家を過ぎると、市道の勾配が徐々にきつくなっていく。かつてはここが舗装の末端部分だった。
路面のアスファルト舗装に軽い段差が見える…続編にて検証する


この先には田畑と荒れ地のみで人の住む家屋はない。それでありながら舗装はここから先の方が良質で新しい。

沢の先端部分までやってきた。先の方でかなり狭くなっているようだ。


沢の両端が一つに繋がり、市道と小川が狭い空間を占めるようになる。横断側溝の両端には脱輪防止のセフティコーンが置かれていた。


この場所は狭い。道だけではなく小川と道がボトルネック状に絞られているようなイメージだ。
そこに何があるかは…そして何が起きたかは…
派生記事: 吉原滝(仮称)
この滝を過ぎると小川は再び緩やかな流れを取り戻し、市道の縦断勾配も穏やかになる。


その先で再び沢が二叉に分かれ、いずれも田畑が広がっている。農作業に必要な資材を保管する小屋が散在している。
吉原川はここで市道の下をくぐって小さい方の沢へ向かっている。


前方には沢を塞ぐ堰堤のようなものが見えている。
ここから見ただけでは想像つかないだろうが、上を通っている道路は県道西岐波吉見線である。
市道は更に少しずつ高度を上げている。しかし県道はこの深い沢に盛土してその上を通っており、市道との高低差が5m以上あって相互に行き来はできない。
国土地理院の地図では県道に繋がっているように描かれているので注意

当然ながら市道はボックスカルバートで下をくぐることになる。舗装面にタイヤ痕は殆どないが、通行に支障はなさそうだ。


ボックス部分の正面像。
県道の黄色いガードレールはボックスカルバートの天端に取り付けられているのではなく、その上に練積ブロックを築いた上で設置されている。


このボックスカルバートの成り立ちはかなり古い。上を通る道が県道認定される以前から存在したと思われる。
構造を見る限り、元からボックスカルバートがあった上に盛土して練積ブロックで県道の側面を補強したようだ。

県道西岐波吉見線のこの区間は、善和交差点から持世寺に抜ける部分に相当する。この沢を渡った先に霜降山の登山道(市道霜降山登山線)がある。
詳しくは県道西岐波吉見線の項目で話すが、幼少期からこの道に接して状況を知っているから、県道指定されるとは意外も意外だった。現在の県道は霜降山に向かう登山道に過ぎず、昭和50年代のはじめまで未舗装路だった。車で持世寺まで抜けられたかも疑わしいほど酷い道だったのである。
路面が真砂土のせいで雨が降るたびに削られ至る所に危険なガリーが生じていた

ボックスカルバートの上に設置された練積ブロックも、県道のアップダウンを緩和するために追加で盛土したものと思う。かつてはボックスの天端まで道路面が下がっていて、吉原川の沢を横断するためだけに折角稼いだ高度をかなり吐き出していたからだ。
この付近に登山道900Mを案内する距離標が立っていた

経年変化でボックスの内部はかなり傷んでいる。コンクリート壁の剥落もあった。路面は3年前に追加で舗設されたようだ。


唐突だが、このボックスカルバートをくぐり終えた先が市道の終点とされている。
閲覧した地図の矢印が適当に描かれていて正確な終点は不明
そこから先は昔ながらのダブルトラックの未舗装路だ。


以下の2枚は3年前の秋口、県道西岐波吉見線を走破したときこの市道を見下ろした写真である。


既に市道は舗装されており、舗装直後の最も日にちの経っていない写真である。

既にみてきた通り、この道は認定市道とは言っても吉原地区に暮らす住民の生活道に近い。外部の方が車を乗り入れて警告されることはないと思われるが、たまたま市道沿いを歩いている近隣住民から「この先は行き止まりですよ」と忠告を受けることはあるかも知れない。
なお、国土地理院の地図には記載されないが、冒頭のYahoo!地図によれば滝を過ぎて廃屋っぽく見える農機具小屋のところを曲がって県道に到達する経路が存在する。ただし実際に県道まで車で抜けることができるかは確認していないので留意されたい。
多分道が荒れていて軽四でも無理ではないかと思う
【路線データ】

名称市道吉ヶ原線
路線番号743
起点国道490号・下善和バス停付近
終点県道西岐波吉見線・ボックス付近
延長約1km
通行制限大型車は事実上通行不可。
備考本市道経由で県道には出られない。

(延長など各データの正確性は保証できません。参考資料とお考えください)
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さて、市道レポートとしては大方ここまでなのだが、こんな疑問が浮かぶのは自然だろう。
この先はどうなっているの?
県道横断のボックスをくぐった先は未舗装になっているというだけで、同じ幅の道は更に奥まで続いている。完全な行き止まりとなっている訳ではない。

ただ、この先は市道ではない。地区道もしくは私道になる。登山道の一部を兼ねているので恐らく私道ではないと思われるが、進攻には自己責任が求められそうだ。

(「市道吉ヶ原線【2】」へ続く)
出典および編集追記:

1. 沿線に田畑が広がるので農繁期や土日には市道付近で作業する住民が多く通りづらいかも知れない。

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