市道柳小野宗国線【1】

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現地踏査日:2011/12/25
記事公開日:2011/12/27
宇部市の地図で北部を眺めていると、「〜小野」という地名が非常に多いことに気付く。国道490号が通る小野湖の畔にある小野の街並みをはじめ、元から在る小野に対する位置関係を示す上小野、下小野だけでなく、全く別の場所に市小野、長小野、棯(うつぎ)小野、田の小野などがある。何故に離れた場所に似通った地名が定着したかの考察は専門家に任せるとして、柳小野はそれらのうち市内で最も東側に位置する集落になる。

しかし名前こそ他と似通っていながら、柳小野の立地は他と比べてかなり特異である。

小野という呼称を含む集落はいずれも厚東川水系にあるが、柳小野だけは全く異なる椹野(ふしの)川水系の支流にある。即ち集落は分水嶺となる国木峠を越えて下った所になる。通常、市境は山の稜線を辿るものだが、平原岳から仏坂にかけては何故か宇部市・山口市(旧吉敷郡小郡町)の市境は分水嶺よりも東へ張り出している。それ故に柳小野からは市内の小野集落に向かうよりも山口市小郡上郷に出る方がずっと近い。
市境の取り決めに関して何かの由来があるのだろう

地図で現地を確認してみよう。


この市道は、県道231号美祢小郡線上に起点を持ち、柳小野集落にある小さな沢を遡行する経路を辿っている。地図で分かるように、この付近を中国自動車道が通過している。
その筋の方には既知なのだがよく「中国自動車道は宇部市内を通過しているか?」という問いが引き合いにされる…地図で分かる通り「僅か1kmばかり宇部市内を通過している」が答えだ)

集落のある位置的要因から、この道は宇部市内で最も東側に起点を持つ市道という特徴を持つ。しかし私がこの市道の攻略を目論んだのは、単にその題材だけを求めたからではない。詳細はこれから少しずつ明らかにしていこうと思う(現時点ではまだ分からない点ばかり)のだが、事前の情報として、この市道が向かう山の奥にとてつもない物件が眠っていることを知ったからである。

11月下旬の午後、私はこの市道とその奥に隠されていると思われるものを探求することを主眼に、初めて訪れることになる柳小野という集落に向かった。

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私は順当な経路として、国道490号を小野地区まで走り、そこから県道231号に入っていた。
国木峠を越した先というのは頭に入れていたが、分岐点に目印となる建物などはないので、何となく車を走らせていた。漫然と走っていた状態に近い。県道自体も市内によくあるマイナーな市道並みに狭いので、私は道を間違ったんじゃないかと気になり、車で分かる場所まで走った。
そのまま県道の起点まで到着してしまった

その後に行き過ぎたことに気付き、引き返した。その挙げ句、求める市道の起点と断定できる場所に行き着いて車を停めた。

ここである。

この場所で県道の幅が変わっている。これは一つの目印になるだろう。


振り返って撮影。柳小野の家並みが見える。逆光で見辛いが、道の脇に県道の標識柱が立っている。


地先表示には”宇部市柳小野”とあった。来るときは逆向きだったので確認できなかったのだ。
柳小野の「柳」の字を貼り替えた跡があるのは一体何故だろう…


沢へ向かって伸びる市道の入口。行き先案内はない代わりに、行き止まりですの表示もない。
ここで県道の幅が変わっているのは一つの目印だが、もう一つとっても目立つものが角にあった。


何か由緒ありそうな石仏である。相当に古そうだ
横にはお札が挟まれた串のようなものが立っていた。
道祖神だろうか…お墓でないことは確か


実は最初にここを通り過ぎたとき自然に目を遣っていたのである。県道からもとても目立ち、かつて重要な場所だったことを窺わせる。
後から思えばこれから向かう先にある物件にかかわるものかも知れない。


先に何があるのかは追い追い話すとして…
さて、どうしようか?
軽くうねった市道の先には一軒の民家が見えている。そのため路面に綻びはなく車で進攻することに恐らく問題はない。
この市道は何処にも抜けられず、行き止まりになることは事前に分かっている。知らない車に間違って入って来られて庭先で転回して迷惑なら、この先行き止まりなどと案内することが多いし、そもそも入ってはならない道なら「私道につき侵入禁止」などの文言を掲げるものである。

後々で重要な問題になるから早めに述べておくに、この道は認定市道である。歴とした路線名と路線番号を持ち、市道路河川管理課が管理している。そのことは以前、市内の主要な市道を洗いざらい調べたときに得た情報だ。
私は”行き止まりであるのを承知で、その奥に用事がある訪問者”である。車で進攻するのは県道からどれだけ離れているか分からず歩くのが大儀だからだ。市道の終点は市境付近ということになっているが、多分そこまで車では行けず、何処かに留め置いて歩くことになるだろう。あとは停める場所と転回できるスペースの問題だ。
多分、大丈夫だろう…
行き止まり表示もなかったし…
再び車に乗り込み、この市道に突入した。

この奥に少なくとも一軒の家があるから当然ながら市道は現役で使われている。斜面は草が刈られた跡があるし、田んぼとの高低差がある場所には県仕様の黄色いガードレールもあった。


決着がつくのは早かった。
起点から既に見えていたあの一軒家の前で市道は事実上の車両通行止め状態になっていたのだ。

最初に目にした光景。
車に乗ったまま撮影している。
もやのような物がかかっているのはフロントガラスの反射


市道はこの民家の前で急に細くなり、その先は殆ど通行がないらしく木の葉が散らばっているのが見えた。それより何より、話に聞いた”障壁”が見えているではないか。

その障壁を目にしたときの私の第一印象。

何でこんな事になっているのだ?
民家を過ぎた先もやや綻びているがアスファルト舗装された道が伸びていた。しかしこの先まったく車を乗り入れさせる意図がないようで、殆ど恒久的な車止め障壁が設置されていた。障壁と言っても有刺鉄線付きフェンスなど本格的なものではなく、あり合わせの古タイヤやコンクリートブロックを乱雑に置いているだけで、用事があるとき退けて通すことを全く想定していない状況だった。

考えている暇はない。こんな行き止まりの道に乗り込み、民家の前で車のエンジン掛けっ放しで停車していたら訝られる。一般車両の反応なら「あ、道を間違った…行き止まりだったのか…」で車を転回し直ちに引き返すだろう。私の場合そうではない。行き止まりは想定済みで、それより車をどうするか判断しなければならない。

取りあえずエンジンを停めてサッと降り、障壁部分を偵察しに行った。


その障壁の構造は、頑としてこの先どんな車も通さないという強硬な主張に見えた。農耕車両などの出入りでもあるなら、普通は門扉か簡素化されたバリケードという造りにするものだからだ。


障壁の構造は、イノシシなどの野生動物避けに使う先端の尖った網目部材を2枚並べ、網目の隙間から小動物が通らないようにトタン板を配置し、尚かつ倒れないようにブロック片やタイヤで押さえる念の入りようだ。
周囲は落ち葉や砂埃が溜まり、もうかなり永いこと車の出入りがないように思われた。

振り返って撮影。
車は民家の入口を避けて停めていた。この障壁までの距離は50mばかりだろうか。


障壁が置かれているということは、この先に車が入ってはならない特段の事情があるということだ。元から車で行ける場所まで行き、その先は歩く積もりだったので車両通行止め措置が取られていることに関しては全く異を唱える気はなかった。

いずれにしろ短時間で事は運ばないと考え、私は一旦車に戻ってハンドルを切り直してもう少し山側に車を寄せた。まず有り得ないとは思うが、この家の方が農作業するのにバリケードを退けて作業車を通したいという事態になったとき、私の車が邪魔になるからだ。踏査は自己責任として、近隣住民に迷惑が及ぶようなことをしてはなるまい。

車を動かしたり周囲を行き来している最中、私は一切民家の方へ視線を遣らなかった。余計な手間を取ってゴソゴソしていれば最後には家の方に出て来られるだろう。もし誰何されたにしても私は自分の計画している行動を明確に説明できる自信があったが、余計な時間を取られるし、自分の踏査に関係ないことはなるべく避けたかった。
この民家の方が吠え癖のあるワン公を飼っていらっしゃらなかったことだけでも有り難かった…車を停めただけでけたたましく吠え立てられればそれだけで踏査を諦め退散していただろう

改めて障壁を観察する。
それは粗雑な造りに見えながら車と野生動物だけでなく山歩きを志向する人間までシャットアウトしていた。2枚の金網は風が吹いても倒れないように2ヶ所ほど番線で緊結されており、全く動かせない。高さは1mちょっとだが、金網の端は剥き出しの鉄筋である。跨ごうとして足を滑らせればどういうことになるかは容易に想像がつく。

向かって右手は剥き出しの岩肌で高い垂直壁状態だ。当然登れないし、岩肌までぴっちりと予備の金網で阻まれている。


左側は小川になっていることは来るときから分かっていた。
その小川が障壁の横を通っている。その中を歩くには流水が多いし、何よりも障壁付近は小川の存在自体も隠れるほどの茂みだ。選択肢にならない。


この時点で明らかなように、私は障壁が設置されていようが端から退散する気はなかった。そもそも私は市道とこの先にあると思われる物件を観るために自分の時間とガソリンを使ってここまで車を走らせたのだ。今、先を求めなければいつ来ても同じだ。先延ばしにする理由がない。
それ故に私にとっては車だけではなく山歩きを志向する人間すら締め出すこの障壁は邪魔者以外の何物でもなく、やり過ごす方法だけを熟考していた。

車をここに留め置いている以上、同じ場所に戻って来なければならない。それも怪我をせず運を天に任せるのでもない安泰な方法で。往復作業なら障壁は2度越えるなり回避なりが要求される。

さあ、どうする?

(「市道柳小野宗国線【2】」へ続く)

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