海の眺めの利くのは先ほどの場所だけだった。そこを過ぎると再び木々が鬱蒼と茂る下り道になった。危険な場所はなかったが、きついカーブが多くハンドル操作に集中する必要があってダッシュボードのカメラを触る余裕がなかった。
近年の施工と思われるコンクリート部材を組み合わせた擁壁。
ここは両側が高くなった直線的な下りで、速度を落としてカメラ操作する余裕があった。
日陰で巧く撮れていないかも知れないと思い、日なたに出たところで再度撮影した。
先ほど砂利道を下っているときも左側に練積ブロックの擁壁があった。あのタイプの擁壁が現れるのは昭和50年代から後である。この擁壁は更に後のものだから、安全に通行できるように近年でもそれなりに維持管理されているようだ。
木の根が切土法面を這い回っている何ともシュールな光景を見つけた。
(右側にL型コンクリート側溝のようなものが見えるが撮影時は注意していなかった)
かなり薄気味悪く感じたので、車を停めて窓越しに撮影した。
再び道は急な直線的下りになった。
先に見覚えのあるものが見える。「あ、クルマで行けるのもここまでだな」と感じたときの撮影。
車両侵入禁止の標識だ。真正面に見えていたので、ここで完全に道が終わって行き止まりになると思っていた。
車内からの固定カメラで撮った最後の一枚。
光量が少ないため徐行運転状態でも周囲がピンぼけになっている。
車で行けるのもここまでと思ったので、即座に転回して車を停めた。
標識のある手前はかなり広くなっていて、余裕で車を転回できた。
ダッシュボードに固定していたカメラを外してまずは外に出てみた。スタートして車から降りたのはここが初めてだ。
(分岐路に出会ったときなどで一時停止して降りようかと考えた場面はあった)
さて、ここは何処だろう?
GPS機能を持つスマホなど持っていないから、現在地がまるで分からない。
そこで今居る場所の手がかりになりそうなものを探した。
タバコの投げ捨てに関する注意標識だった。これがあるということは、この場所は公道であることを意味する。
(左側に何か青いものがあることに気付いていたが確認はしなかった)
標識以外にも目が向いていた部分があった。最初にカメラを構えたときから感じていたことである。
林立する樹木の間に直線的に下っていく道のように見えた。
これを下れば大浜地区へ行けるのでは…
侵入禁止標識の先を窺ってみた。トラロープが緩く張ってあるだけであり、侵入阻止の本気度はかなり薄い。
かなり広い幅の道が下っていたが、タイヤの痕は見当たらなかった。
現地に居た時点では、これを下れば大浜地区に到達するという自信が持てなかった。
距離的には充分に走ってきた筈だが、周囲を調べているうちにここが行き止まりではなく左側に更に分岐する道が続いていたからだ。
大浜地区へ下る場所がまだこの先だとしたら、どれほど距離があるか分からない。まさか歩いて行くとか途方もないことだ。
せっかく車を転回させたが、一旦車へ戻ろうとしたとき再び考え直した。
いや…この道は大浜地区へ向かう道ではなく林道ではないかと考え直した。
ヒントになりそうなものが道ばたにあった。
破れてぐちゃぐちゃになった幟のような残骸だ。
全部の文字は読み取れなかったが、森林保全のような白抜き文字が見えた。この先は林道ですと告知するために設置された幟と考えたのだ。
主要な林道では、起点に路線名を記した標識が立っていることがある。そのようなものは現地には見られなかった。この幟があるから林道とは断定できない。一般に林道は関連業種以外の人が車を乗り入れる道ではないから、ロープが張られていたり門扉で施錠されていたりする。そうしたものがあれば現在地が大浜地区へ降りる場所と断定できる。
少し歩いた先に門扉があるかも知れない。
破れた幟の場所から歩いてみた。以下は100mくらい先まで歩いてみたときの撮影である。
同じ程度の砂利道が延々と続いていて、案内標識などは見られなかった。場所柄、あまり車から離れたくなかったのですぐ引き返した。クマが出る場所とは思えないが、少なくともうちのアジトや野山よりは野生動物の遭遇確率は高い。この枝道が林道か先が行き止まりになっているかだけを確認したかった。
どうしようか…
先を調べるなら車を再び転回したい。しかしここから乗り入れたとき、道がどうなっているか分からない。今の場所は余裕で転回できるほど広いが、この先で突然施錠された門扉が現れ、転回することもできず延々とバックで戻るなんて悪夢だ…このように、現地では林道かも知れないこの道を先へ進むか、それともここが大浜地区へ降りる場所と考えて山を下っていくか判断しかねていた。あの侵入禁止の標識の前まで戻ったとき、やはりここが大浜地区に降りる場所ではと考え直した。
侵入禁止の標識があるのは、大浜地区に向かう道だけど住む人が居なくなったから閉鎖されたのでは…
ここから海に向かって下る道があるらしいことは、先の山火事注意の標識を撮影したとき気付いていた。ただしここから海まで下っていって何もなかったら、また延々と登って車まで戻らなければならない。まあ、ここから降りてみよう…
違う場所へ降りてしまっても撮影だけして引き返せばいい…
車を停めたところまで戻るときの撮影。違う場所へ降りてしまっても撮影だけして引き返せばいい…
右側の赤いのが破れた幟、左下に見えているのはトラロープエリアに置かれているセフティコーンだ。
さて、ここからは本格的な撮影スタイルだ。ショルダーバッグにカメラとバッテリーの予備と携帯電話を入れて肩に掛けた。気温は暑すぎず寒すぎずだから水分補給も要るまい。車に載せているペットボトル入りのお茶を一口飲んでから出発した。
(「防府市大浜地区【1】」に続く)
【 記事作成時の付記 】
時系列を離れてアジト帰宅後の分析によると、林道ではないかと迷っていたのはまさに地図のC地点の分岐と思われる。
地理院地図では、この道は山中を彷徨うように進んだ挙げ句行き止まりのように記載されている。しかし行き止まり地点までかなりの距離があるため、もし車で進行していたら延々と先を求めて進む羽目になっていただろう。