常盤水路・本土手【2】

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(「常盤水路・本土手【1】」の続き)

用水路を下流に向かって辿り始め、ほどなくしてこの水路の正体に関係ありそうなものを見つけた。 それは用水路と池の間の土手に見つかった。


独特の企業マークと、工業用水と記された鋳鉄蓋である。


この鋳鉄蓋を見つけて最初に感じたのは、
この用水路は宇部興産(株)の工業用水向けでは?
という推測だった。
用水路とは別に工業用水管が通っているとは考えもつかなった
それと言うのも、以前勤めていた仕事の兼ね合いで、常盤池から工業地帯まで国道190号に沿って自然流下する導水路が存在することを知っていたからである。

その導水路は概ね国道190号の歩道に沿って伸びているらしく、これと同じ鋳鉄蓋を歩道上に見ることができる。そのことは小学校の登下校で国道沿いを歩いていた頃から気づいていたし、人孔の周囲をバリケードで囲って中に人が降りていくのを見たこともあった。

現在も使われているかどうかは分からないが、この導水路を専門的にメンテナンスする業者が市内に存在することも知っていた。関係者からも話を聞いたことがある。
話によれば、工業用水の貯水池を兼ねる常盤池には白鳥を放しているので、排泄物も混じり水質はあまり良くないらしい。漏水防止や補修を含め、定期的な内部の清掃や砂塵の除去などの維持管理作業が必要なのだという。清掃には生身の人間が潜入して作業しているとも聞いた。
内部の構造は詳しく聞いていないが人が一人やっと通れる程度の管径らしい
今から十数年前の話だが、平成時代の初期までは実施していたと思う。

もしこの推測が正しいなら、この用水路は国道を横断したところで開渠から暗渠に姿を変える筈だ。
確認するために、更に下流を辿ってみた。

水路は今も大量の用水を運んでいながら、至るところで綻びが見られた。例えばこのような感じで開渠全体をブルーシートで覆う応急処置をしている箇所が見られた。
夫婦池よりやや高いところを流れているために、池側へ自然漏水するらしい。場所によっては、目に見えてジャバジャバと漏れ出ている箇所もあった。


木々が用水路の上へ倒れ込んでいる。先月の集中豪雨で法面の樹木が支持力を失ったのだろうか。


また、随所にこのような感じで水路の上を跨ぎ越す排水管を見つけた。遊園の方から出る雨水や生活排水を通す管らしい。もっとも管渠の先端は桝から外れており、明らかに機能していない。公園側からの生活排水を流さなくなったのだろう。


繋がったままの排水管もあった。
これらの管はいずれも用水路を跨ぎ越し、直接夫婦池に向かっていた。


この辺りから用水路に沿った小道は荒れが酷くなり、薮漕ぎに近くなってきた。 今の時期藪へ入るのはあまり気乗りしないが行けるだけ行ってみようと思った。

しばし歩いていると、やや視界が開けたところに再び小屋を見つけた。これは少し通り過ぎた場所から振り返って撮影している。


最初に隧道の傍で見つけた小屋より若干大きい。しかしスレートを囲って建てただけで造りが全然違う。
今も稼働しているらしく中でポンプらしきものが唸る音が聞こえた。正面の扉はもちろん開かなかった。
扉のすぐ横に立ち上がっている鋳鉄製のパイプが気になるが、何のためのものかは見当も付かない。


このポンプ室らしき小屋の傍は木々が刈り払われ、池の岸辺に浮きを伴った設備が放置されていた。
ボート乗り場のような造りながら板敷きが全くなく骨組みと浮きだけである。その骨組み部分に2本のビニルパイプが固定され、ポンプ室に引き込まれていた。
浮き草などに侵食され著しく荒廃している。


その先にすぐ上を走る道路と行き来する階段を見つけた。
階段の外には、常盤公園のアトラクションの目玉であるジェットコースターの軌道敷が見えている。


この階段も昔からあったのだろうが今まで全然気づかなかった。
最初に降り立った階段よりは幾分短い。用水路は殆どレベルに近い勾配の筈なので、上を走る市道が思いの外国道に向かって下り勾配になっていることを示している。


ちょっと階段を駆け上がって見下ろすように写している。
水路の横に生えている木には「この池で釣りをしてはいけない」立て札があった。


苦労なしに歩けたのもこの階段までで、そこから先は今まで辿ってきた以上の荒れ方を見せていた。
どうやら用水路を管理する人が行き来するのはここまでらしく、この先は殆ど誰も行き来しないと想像された。


上の写真でも見て取れるが、三面張り用水路の壁面が波打っていて、意外に粗雑な造りに見える。場所によってはこのように水路の幅が歪んでいる。コンクリート二次製品などなかった時代に現場打ちされたらしく、それなりの精度をもって造られたようだ。
常盤用水路と比較したら断然精密さに欠ける感じがあった

その先でこの用水路とは無関係なものの気になる遺構を見つけた。


用水路の壁面に接するように台座コンクリートがあり、その上にサイコロ状のコンクリート塊があって鉄骨らしきものが見える。
これは一体…?
派生記事: 常盤公園・初代ジェットコースター軌道基礎跡【1】
薮の荒れ具合はこの近辺が最凶クラスだった。蛇には怖じ気づかないが、垂れ込める木々の葉から不快害虫が落ちて来ないか気になった。それと言うのも何を血迷ったか、突然飛んできた蝉が鳴きながら私の後頭部に体当たりし、あろうことか服と背中の間に潜り込もうとしたからである。
さすがにウワワァーッと声が出てしまった

次に視界が開けたとき、横を走る市道は用水路とあまり変わらない位の高さに降りてきて、前方から国道の喧噪が聞こえるようになった。


この近辺は用水路と池の堤との間隔が狭く、しかも草木に蹂躙されていて足元が覚束なかった。この先無理に辿らなくても右横の市道から眺められるし、国道側からも接近できるだろう。
反対側から到達できそうな場所まで見届けて、引き返しどきを模索し始めた。

視界が開けてきたものの、足元は相変わらず悪い。この辺りはもう殆どメンテナンスで立ち入ることもないのだろう。道形が見えなくなってきた。


直接は見えないが、国道側の入口から100m以内の所である。
土手の地面も見えず、踏み抜いて池に転落しそうなので用水路のコンクリート壁部分を伝って歩いていた。それも難しくなり、ここで来た道を引き返した。


施錠はしているものの、自転車をあの隧道がある階段の上に置いている。一旦自転車の所まで戻り、もう一つ気になるものを確認した後、ここまで乗って来ようと思った。

(「常盤水路・本土手【3】」へ続く)

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