山口宇部空港建設事務所【1】

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現地撮影日:2015/3/22
記事公開日:2015/12/17
すぐ上の撮影および公開日でも分かる通り、現地の撮影は半年以上前のものである。この記事の作成日直前に現地を再訪し追加の写真を撮ってきたが、大きな変化がなかったので唐突な始まり方になるが初期の撮影のまま構成している。

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亀浦の海岸で国境の石碑などを撮影後、この日の本来の目的地である南東部のデパートへ近づくように自転車を漕いでいた。
山口宇部空港の前を過ぎると、当該デパートへ行くには空港前交差点から内陸部へ入る市道空港線を通る方が近い。しかしこの道は歩道の状態が悪く途中に信号も多い。まあ別に先を急ぐこともなかったので八王子方面へ遠回りとなる市道八王子空港線を経由することにしてそのまま場内をとろとろと漕いでいた。

この場所を航空映像で示す。


この辺りは山口宇部空港の東の端になる。空港正面に立ち並ぶ建物が途切れ再び滑走路が見え始める場所でもある。
この時点では別に特筆すべき物件を見つけたわけでもないので写真を撮っていないが、市道から外れて空港駐車場の中へ入り込んでいた。自転車を乗り回すようになってからもその方へ入ったことがなかったし、別に立入禁止になっている訳でもなかったので。

ふと滑走路の方に目を遣ると、自分としては殆ど見慣れない色の飛行機が一定速度で移動していた。


なんか珍しい色だなーと思いはしたものの積極的に追ってはいかなかった。スターフライヤーという機種らしいが、正直乗り物系にはあんまり興味がないし、写真も系列マニアが沢山撮ってくれている。恐らく当サイトで今後も専用カテゴリが作られることはないだろう。

…と言ってもせっかく空港に来ているのなら写真一枚くらい載せろよって声がありそうなのでズーム画像をお届けしておこう。


有刺鉄線が写り込んでいるし写真自体も水平が取れていない…と言われそうだが、被写体は結構な速度で動いているしズームで追っていったもので…

さて、写真は撮っていないがこのとき自分は空港駐車場の西の端まで来ていた。そこから先も若干の段差があって別の駐車場に続いていた。立入禁止になってはいないが、そこまで入って行く車は少ないらしかった。
行ったことのない場所はちょっと覗いてみたくなるものである。駐車場の滑走路側にはプレハブ造りの建屋があった。私は最初それが何の建物か分からなかったが、じきにかつて訪れたことのある山口宇部空港建設事務所というキーワードが頭に浮かんできた。

これが建設事務所を撮った初めての写真である。


総括記事でも書いた通り、建設事務所は空港の拡張工事が進められるにあたって設置された県の出先機関である。空港建設に係るあらゆる工事がここから発注され、受注を狙う多くの業者が集まり、工事進行中も変更事項に関する協議や変更契約で現場担当者も訪れた事務所だ。

言うまでもなく空港工事は竣工し既に供用されて何年も経つ。施工に関して現在もなお遺されているものは殆どなく、私の知る限りでは調整池の東側、塚穴川の河口部付近の護岸にあるダンプトラックのタイヤ泥落としプール程度のものだ。工事現場臭いものは公園の一部になるなどして殆どが姿を変えている。そんな中で建設事務所は確かに私が現役時代訪れてきたときの姿のままだった。

正直言って建設事務所にはあまり良い想い出はない。しかし年月も経てばすべては懐かしさに変わる。
外から見た限りもう使われていないのではないかと思われた。


それはたまたま今日が日曜日で官庁が休みだからというのとは異なる理由があった。玄関の上に掲げられている銘板部分が書き換わっていること、それから遠目にも玄関のガラス扉に最近開け閉てした形跡が感じられないことにあった。

駐車場に入ってくる車は皆無なので、自転車をそのまま留め置いて近づいてみた。
扉は埃まみれで中の様子が分からない。


これは…どういうことだろう。
「宇■■湾管理事務■■■■舎」となっている上から白い紙を貼って隠しているようだ。


この部分が最初どうなっていたかは思い出せない。大体、紙が貼られている部分は本来は嵌め殺しガラスである。建屋を造った後、来訪者から「何を担当する部署なのか分からない」とか声があって後からワープロ等でプリントアウトしたものをガラスの上に貼ったのだろう。
既に見えている文字と空白の間隔から推測すると「宇部港湾管理事務所空港庁舎」のように見える。あるいは別の文字かも知れない。[1]

玄関扉の前まで近づいてみた。当然ながら施錠されていて開かなかった。扉自体もかなり変色していて長いこと放置されていた様子が窺えた。
埃まみれのガラスを通して玄関の内側には来客者用のスリッパが見えている。


これ…見覚えあるんだよね。
変更契約などで担当者を訪ねたとき、ここで靴を脱いで上がり、入口に並べられていたスリッパに履き替えていた記憶がある。


中の様子は…外の方が明るいこととガラス部分一面に埃を被っていることから殆ど見えない。しかし目を凝らせば何となく荒れているように思われた。


ガラス部分が埃まみれなので中の様子を窺うには指先で拭わなければならなかった。手が汚れるのは憚られたので、カメラのレンズで窺える範囲だけ埃を拭った。
そこで見えた光景に愕然とした。
何これー?


玄関入ってすぐ右側の壁近くに大量のコンクリート材の崩落があった。直接見ることはできなかったがどうやら壁か天井が崩れ落ちたようだ。破片は玄関踊り場周囲に散乱している。なぜかエアコンの室外機らしきものが正面に移動されていた。
これは酷い。
崩れ落ちた部分は汚れまみれの苔まみれ。崩落してかなり時間が経っているらしかった。外部から雨が侵入したのだろうか。


この事務所が閉鎖され使われていない理由の一つなのだろう。使われないというよりは「危なくて使えない」状態だ。
空港拡張工事は平成期に入ってからなので、この事務所も築30年も経っていない。ちょっとした雨漏り程度なら分かるとして、天井崩落など聞いたことがない。屋根から大量に雨水が入り込んでいたのが相当長期に渡って気づかれずにいたのだろうか。
外から見れば単なる閉鎖された事務所だったものが、途端に廃の匂いを漂わせ始めた。その他の部分はどうなのだろうか。

建設事務所は玄関を入って左側に職員の詰めるスペースがある。
入口の扉は開放されていた。


僅かばかり指先で拭った部分からガラス越しにズーム撮影している。
プラスチックケースに詰められた書類が大量に積まれている。工事関係のものだろう。倉庫としては機能している感じがした。


改めて玄関前の様子を眺めていて、正面のホワイトボードに”あり得ない書き込み”がされていることに気づいた。


その書き込みはかつて建設事務所が使われていた時代の書き残しではなく、どうやら今の状態になってから誰かが告知の意味で書いたものらしかった。

これは一体…?

(「山口宇部空港建設事務所【2】」へ続く)
出典および編集追記:

1. 12月中旬に再訪したところこの部分は改めて上から白紙を貼り付けて完全に読めなくされていた。

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