ダム堰堤上に進出開始する。
生雲ダムのゲートは、他のダムとはちょっと違った造りになっている。塔状になっている部分にダム堰堤から直接上るための梯子が掛かっていた。頻繁に昇降するものではないらしく、少し高い位置から梯子が始まっている。
梯子の外側には転落防止のフレームが設置されていてちょうどこれが堰堤上を歩く人の頭くらいの高さになるせいか「頭上注意」の標示板が置かれていた。なかなか来訪者に配慮した環境になっている。
ダム堰堤から塔の高さは目測で8mくらい。「上がらないでください」等の禁止標示はない。場所柄、自己責任で振る舞えるとは言ってもさすがに上がってみようという気は起こらなかった。
中央の塔には制御室からメインゲートを制御するワイヤーが伸びていた。
面白いと思ったのは、制御室からワイヤーが出ている開口部に昆布のようなカーテンが垂れていたことだ。まるで睫のようである。
開口部から雨風が吹き込むのはまずいので閉じておきたいのだが、穴を開けた普通のガラス窓だとゲートを操作するときワイヤーがブレて擦れる。そこでゴムを短冊状に切ったものでカーテンを作ったようだ。何ともアバウトな構造だが、その程度の防水で足りるのだろう。
ゲート室を振り返って撮影。
駐車場からも見えていたのだが、制御室の外回りにはグレーチングの通路が設置されていた。
一番外側の通路は完全に谷底の真上まで突き出ている。強度は絶対に大丈夫だと言われても足の下はスケスケでかなり怖いだろう。
(もっともダム堰堤側の扉は施錠されていて入ることはできない)
そこから先は余水吐になっていて、通路は調整池側に屈曲して若干高度を上げて対岸に通じていた。
その先も何ら問題なく通行可能だ。即ち、ダム堰堤は完全に開放されていて一般の歩行者も両岸から自由に往来できる。
既にあの気になるものが近くまで見えていた。
さて、ここで勢いよく水を吐き出している場所の詳細を調べに行った。
派生記事: 生雲ダム注水口
この余水吐に向かう通路の端にも来訪者を配慮する立て札が…ちょっと出っ張っている縞鋼板の蓋の前にも注意書きが出ていた。
(もっともこの標示板自体に躓いてしまいそうな気も…)
これほど丁寧に一般向けのサインを出している理由は、対岸の様子を観に行って分かった。
生雲ダムの堰堤自体が両岸を結ぶ通路として機能しているためだ。
駐車場で観てきたように、右岸の道は中国自然歩道に指定されている。それなりの歩行者需要があるのにここが通れなければ、対岸との行き来は先に車で通ったあの橋まで戻らなければならない。
私企業による建造物や空き地は、トラブルを避けるために大抵は一般の立ち入りが禁止されている。
(もう一つの中電管轄となる佐々並川ダムでは堰堤への立ち入りが制限されているらしい)
堰堤上を開放して渡れるようにして欲しいという要望もあったのかも知れない。
ダム堰堤から観る調整池の眺め。
対岸の注水口から勢いよく水が注がれているせいで水面は波立っている。生雲川上流からの流れよりも注水口の水流が強いせいか、 のも特異だ。
数珠繋ぎにされた浮きは相当長いこと放置されているようで、浮き草に激しくまとわりつかれていた。
右岸に近い部分に巨大なスクリーンが見えている。先に観たあの2階建ての小屋の下だ。
今やこれが何の設備かは分かっている。後でじっくり調べよう。
真下を撮影。
調整池とは言っても実態はダム湖に変わりはない。相当な深さがある筈だ。
この反対側にはスケールが貼り付けてあった。しかし何故かメートル刻みの表示が欠けているので深さは分からない。
深さが分かりそうな場所があった。
調整池の壁となっている鋼鉄の樋門。高さは10m程度あった。調整池の底は少なくともこの樋門より下にある筈だ。これ一枚で水圧に耐えられるとは…
下流側の眺め。
元々が発電目的のダムだからなるべく多くの水を発電用に回したい筈で、河川維持のための最低量しか流れていない。
護岸も正面カーブに石積み補強している程度で、河床など含めて殆ど手つかずだ。
(ダムにより水生生物の棲息状況に影響が出たのは間違いないだろう)
副ダムは存在しない。
エプロンに相当する部分に水を滞留させて緩衝池としている。下流側は自然の岩が目立つ。
ダム下には特別な人工物は一切みあたらない。そのせいか管理道レベルでもダム下へ降りられる経路が全く見当たらなかった。
(下流側の何処かから河川敷へ降りて遡行しなければ接近できないと思う)
再びレールが通路を横断している場所まで戻ってきた。
容易に観られる場所は一通り眺めて撮影したので、そろそろ「難しい場所」に向かおうかと思い始めていた。
(「生雲ダム【3】」へ続く)