佐々並川ダム【1】

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現地踏査日:2013/7/27
記事公開日:2013/8/9
時系列では平成25年度新阿武川発電所の見学会を終えて阿武川ダム管理所でちょっと休憩させて頂いた後のことである。

今回のスケジュールでは当初から見学会の後に佐々並川ダムを訪れることにしていた。経路については早くから分かっていたものの、ネットで見られる情報では狭く険しい道を延々運転しなければならないようなことが書かれていて怖じ気づいていた。
この件について、佐々並川ダムとは無関係ながら新阿武川発電所の見学会の担当者にそれとなく尋ねていた。そして断定はできないがという前置きでこのような回答をもらった。
「軽四ならまず大丈夫ではないでしょうか。中電も管理に行っているのである程度整備はしていると思います。もっとも倒木くらいはあるかも知れませんが…」
もう一つの懸念材料が野生動物、特にクマの出没である。これは最近懸念を感じているリスクの一つだ。餌を求めて里山へ降りてきている報告例が多いからである。以前は間上発電所の上水槽を単独で訪れたが、今だとそっちの方が怖くて夏場はとても行けない。
その件についても尋ねたところ出没を目撃することも稀で、まして遭遇することは殆ど心配はないということだった。藪歩きをして巣に近い場所まで踏み込んだならともかく、ちゃんとした道を車で走るなり歩くなりしていれば遭遇する前に人間の気配を感じて向こうから逃げるだろうと…

以下は初めて佐々並川ダムを訪れるときの状況を、往路から含めて記事化する。久し振りの総括を意識しないリアルタイムレポートなので、自分の構成したいように適当に書き連ねることとする。
ダラダラと長いけどこういう日記形式の方が早く書き上がったりします^^;

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総括記事で示したように、佐々並川ダムに向かう道の入口は県道萩川上線の大藤大橋を渡ったところになる。
県道から延々4km近くも走らなければならない雲行きだ。それも道路の状況がどんな塩梅かも分からない。特に担当者の話では未舗装路ということを聞いていた。

県道萩川上線は大藤大橋を渡ったところで終点となる。もっとも道路としては橋を渡って直角に左へ折れる形になる。
つい先ほどこの橋を渡って車を停めたところだ。


既に車を分岐路に停めて歩いて撮影している。


県道を走る車は殆ど居なかった。車を降りて橋の中ほどまで歩き、再び戻って撮影する間に2〜3台通っただけだった。そのいずれもがここで素直に曲がっている。私が向かおうとする道へ入る車は一台もないし、出てくる車もなかった。


ちなみに大藤大橋はこんな感じの赤く目立つ橋だ。県道のこの先にある阿武大橋も赤色の同様なスタイルの橋である。一昨年もこの橋を渡って長門峡発電所の前を通ったのだった。
佐々並川ダムの存在は知っていたが準備不足で立ち寄る予定は当初からなかった

地図によれば、ここから佐々並川に沿って進む道ということになる。
矢印の誘導表示板が出ている脇に確かに舗装路が見えていた。[15:27]


さて、前振りが長くなったがそろそろ進攻してみようじゃないか。

…とは言ったものの、率直な印象。
本当にこの道って大丈夫なんだろうか?
道を間違っている心配はまずないが、確かに狭い。もし対向車がやってきたらちゃんと離合できる場所があるのだろうか…それ以前に両側から押し寄せている藪の海も心配だ。殆ど管理されない道なら、道の中ほどまで藪が進出しているかも知れない。

まさか歩いていく積もりもないがちょっと偵察してみた。
そして道の狭さや周囲の藪化よりも本気で心配すべき懸念材料があった。


林道大代線は、
崩土のため
通行できません


落石注意の標示板に手製の注意書きが貼り付けられていた。PCで印刷したものをガムテープで貼り付けているようで、最近設置されたらしい。
おい、おい…いきなりかよ?
まだ戦いは始まってもいないというのに。

この狭い道が「林道大代線」という名称を持つらしいことは分かったが、崩れているのがどの辺りなのか、佐々並川ダムまで行けるのか等は何も示されていない。いや、この先に佐々並川ダムがあるという案内すら出ていなかった。
佐々並川ダムは中国電力の保有する企業ダムである。元から観光地まがいにフラッと立ち寄って鑑賞するような対象でないことは、この先にある筈のダムの案内がいっさい書かれていないことからも推察された。行くならそれなりの覚悟が要ると念押しされているようだった。

確かに道は狭いが軽四なら楽々通行できる。また未舗装路ではなく路面もそれほど傷んではなさそうだった。
ざっと見る限りではすぐ先で大きく崩れているようなイメージは感じられない。


車に引き返しつつ、さてどうするか迷った。[15:28]
何故か人権週間の標語の紙をリサイクルして使っている^^;


もし途中で林道が大きく崩れていて迂闊に立ち入ったら脱出不能になる位なら、こんな標識如きで済まさずちゃんとバリケードを設置するだろう。
標示は出ていながら車が入れる状態になっているということは、ダムまではどうにか行けるのかも知れない…あるいはこの道自体はもしかすると該当する林道ではなく、この先にある別の道が崩れて通行止めになっているということでは…

自分の中で肯定的な結論ばかり引きだそうとしていた。換言すれば、標示だけで先を確かめもせず諦めてしまうのは早計というのがこのときの判断だった。
それにしてもこの暑い中、歩くなんて大変だ。車でちょっと偵察してみようではないか。[15:29]


もっとも「行けばどうにかなる」的に安易な発想で進んだのではない。道の急峻さはあらかじめ地図で十二分に理解していた。いきなり進攻不能箇所に出くわし、そこで転回もできず延々バックで退出…という事態だけは避けなければならない。谷底へ転落したらほぼ間違いなくあの世行きということは地図を見るだけで分かっていた。

まずはドアを擦りそうなほど草が押し寄せた部分を通過した。ありがちなことだが、異様に狭く見えるのはこの場所くらいのもので、先に進んで両側の草が退けば幾分道は広く感じられた。

最初に見つけた離合可能場所。
このような場所を頭に入れておくことで、もし次に進攻不能な場所に出くわしてもここまでバックすれば転回可能だ。[15:31]


転回可能箇所を目視で確認しながら進むことは重要だった。途中はこんな感じで転回どころか離合すら極めて困難な幅しかなかったからだ。


道はずっとアスファルトで舗装されていた。もっとも谷側に設置されているのは飾りのような貧弱な車止めが如何にも頼りない。

初めてさしかかった橋。ここにはちゃんと両側にガードレールが設置されていた。
コンクリート床版タイプの橋で親柱はない。[15:32]


舗装路や橋の上には車のタイヤ痕が結構ついていた。舗装もしっかりしていて崩落箇所が出てきそうな様子ではない。

道中ずっと線の張られた電信柱が道路沿いに建っていて、先に電気を必要とする設備があることを仄めかさせた。


基本的に進行方向左側が山側の断崖、右側が谷底という状態で進んでいく。
そこへ変化が現れた。

トンネルである。


県道からダムまでの間にトンネルが一つあることは国土地理院の地図で判っていた。
外観はコンクリートを吹き付けただけの簡素なもので扁額などはない。

さっきからすべて同様だが、車に乗ったままフロントガラス越しに撮影している。
ここで初めて佐々並川ダム関連のものを示す標示板に出会った。[15:34]


同じく運転席に乗ったまま窓も開けずズームで撮影している。
ダム放流時による増水のお知らせだ。最初の部分は全部ひらかなで書かれており、子どもでも読めるようにとの配慮である。
こんな山奥を子ども一人で歩くなんてまず考えられないのだが…


ダムはここから上流2.8kmのところにあるという。
「河原に降りないで下さい」と書かれてはいるもののこの場所から河原どころか谷底も見えなかった。もしかするとトンネルを迂回する旧道部分があったのかも知れないが、撮影後そのまま車を進めた。

何とも言えない風合いをした素堀り同然のトンネル。
トンネルの手前からコンクリート舗装になっている。電線は内部に引き込まれていた。まさか…トンネル内部で天井が崩落しているなんてことはないよね?


徐行しつつ内部でカメラを操作する。
何故かフラッシュが動作せず真っ黒になってしまった。ライトは点灯していなかったが、路面の状況は目視できていた。


出口付近で再度撮影した。
不透明のもやがかかっているように見えるのはガラス越し撮影の宿命である。[15:35]


丹念に撮影したいなら車を停めて降りて撮ることはできた。退避する場所はないものの対向車も後続車もない。路面に荒れはなかったが、7月27日というこの日に林道大代線を車で通ったのは間違いなく自分のみと思えるほどの場所だった。
ここまで走ってきているうちに崩落箇所は見当たらなかった。いつの間にか転回場所をチェックすることも忘れ、ダムまで行けそうな感触を得た。もっとも山側からネットをくぐり抜けた落石は結構あった。こぶし大の石でもタイヤを乗り上げると危険なので、カーブの先で現れても回避できる程度の速度で進んだ。

タイムスタンプ上では前の撮影から5分経っている。その程度に進んだ場所だったが…[15:40]
えっ?またトンネル?


今度はきちんとしたコンクリート造りのポータルを持っている。しかし先の素堀り隧道よりも狭い。
再び国土地理院の地図に戻れば、ダムに着くまでトンネルは1箇所しかなかったと思うのだが…

(「佐々並川ダム【2】」へ続く)

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