佐波川発電所・第二次踏査【1】

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現地踏査日:2014/7/23
記事公開日:2014/7/27
初めて佐波川ダムの見学会へ参加する途中、まったく偶然に発電所を見つけて3年が経った。
最近は市内ネタ関連に注力し、別途FB側でも情報発信している故に市外の物件が色褪せている感がある。それでも夏季に開催される「森と湖に親しむ旬間」の見学会はなお刺激的で、過去に撮った関連写真を眺めているうちに再度行ってみたくなるのだった。
この過程で特に刺激的な眺めが多く当サイトでも記事アクセスの多い佐波川ダムを再訪することとし、その途中にある佐波川発電所に寄るスケジュールを立てた。数年間使い続けていたデジカメがダム見学会を控えた数日前遂に動かなくなり、急遽上位互換品の新しいのを買ってきたばかりだった。

佐波川ダムは佐波川の上流にあるイメージから前回は防府まで出てそこから県道を通った。しかし今では山口宇部道路が整備され山口市までのアクセスが良くなったので、仁保を経由するルートを選定した。結果的に所要時間は30分以上短くて済んだ。

初回踏査で既に書いたから佐波川発電所までの詳細な経路は省略するとして…ただし今回は野谷峠を越えて国道489号をここで横切った。


この道を川沿いに進めば佐波川ダムに向かう。時間に充分余裕があるので佐波川沿いに下り、後で立ち寄る積もりで佐波川関水の駐車場に車を置いて変電所の方に歩いた。

初めてここを訪れたときの記憶が甦ってきた。
あの水圧鉄管を一目見ようと、この枯れ草が目立つ斜面を登ったものだった。


水圧鉄管が近くに見られるならぜひそうしたい。しかも今回は新しいカメラだ。まず接近できないと思われるサージタンクも前回よりは精密に撮影できそうだ。
前回はこの斜面を登ったところで水圧鉄管へ接近できなかったことを覚えていたので、軽くスルーして発電建屋の方へ歩いた。

変圧器の並ぶ敷地からは稼働中を示す電気音が洩れていた。
その奥に見えかけている水圧鉄管に変化があった。


塗装し直されている。
さっそくテストを兼ねてズーム撮影する。
この程度の光学ズームならまだ軽いものだ。実際にそこまで接近できている程度に鮮明な画像が得られる。[1]


初回踏査時には水圧鉄管はこれより薄い水色で、全体が酷いコケまみれになっていた。日射で褪色していたのだろう。やはり工業用水関連の施設は濃い水色で塗装されていなければ感じが出ない…

相変わらず殆ど車の通らない長閑なところである。
正面遠くに水圧鉄管よりはずっと細い水色の管が見えている。あれは前回もあっただろうか…


草木が生い茂りがちな今の時期にしては正面入口付近はよく見えるようになっていた。
フェンス近くの樹木は伐採したようだ。


当然中には入れないのでフェンスの網目から撮影している。
誰も常駐しない建屋にしては玄関の窓ガラスが綺麗だ。最近清掃したのだろうか。


入口の右側に木製の銘板が架かっていた。
手書きのような感じがする。


階段前に来客者用のスリッパがそのままになっていた。
木製の簀の子といい茶色なタイルといい昭和期を感じさせる。


前回写していなかった放水路部分。
発電タービンは稼働中で、排水口からは前回と変わらない量の水が流れ出ていた。


さて…あの水色のパイプは一体何だろう?
水圧鉄管と同じ色で塗装されている。恐らく前回からあったのだが色褪せていたので気付かなかっただけと思う。


こんな所から水を落として小水力発電なんてこともないから、何か別の機能を持つのだろう。

パイプの上部まで擬木の小さな階段が設置されていた。斜面は丁寧に草が刈ってあったので今の時期ながら接近に困難はなさそうだ。


容易に上がれる階段があるなら当然ちょっと偵察することになる。そしてこの階段やパイプに気付いたのは後から思えば大きな成果だった。
三条のパイプは水を落とすのではなく逆に発電終了後の水をポンプアップするためだった。汲み上げられた清澄な水を用水路へ吐き出していた。


ポンプ小屋の手前にある管は確認できていたので、前回気付いていないだけだ。
これは灌漑用水補償のために企業局の責任で給水しているのだろう。


灌漑用水路は佐波川ダム以前からあった筈で、ダムが出来ると下流側の田畑は影響を受ける。発電所より下流に堰を設けた程度では給水できない場所の田には別途電力を用いて水を揚げているわけだ。厚東川ダムや宇部丸山ダムでも右岸側は企業局の責任でダム水および工業用水から灌漑用水を取水している。[2]

パイプの正体だけ確認できたので降りようと引き返しかけたときだった。
落石防止ガードの上部に一定幅の通路があるように思われた。


初めてここを訪れたとき、水圧鉄管の上部に小さなコンクリート橋が見えていたのを思い出した。そこまで行かれるなら水圧鉄管を正面から観察できたのに…という思いで眺めていたものである。
つい先ほど眺めてきたものと重ね合わされた。
あの水路橋では…


パイプから給水されている灌漑用水路は上流側も続いていたが、完全に干上がっていて草ぼうぼう状態になっていた。ダム以前からあったらしい。
コンクリート部分がやっと見える状態で、その上を伝い歩きすればフェンスのある側まで移動できそうだ。


これには先を見たいという本気度と深い草むらの中へ足を突っ込みコンクリート水路の細い天端を伝って歩く度胸が要った。進行方向右側は地山だが左側は大きく抉れた斜面だった。もっともすぐ下に落石ガードがあるので道路まで転落するほどの危険はない。

発電建屋の近くまでやってきた。ここまでの経路に立入禁止の札や柵などはなく、お行儀が良くないとは言え取りあえずは接近可能な場所だった。
発電建屋から4mくらいのコンクリート擁壁で、その上に落石防止柵が設置されており古い水路はその内側に沿って伸びていた。


発電建屋を前にして落石防止柵がなくなった。
建屋は管理区域内であり当然立入禁止である。さすがに擁壁を伝って降りる梯子などはいっさいない。その代わりに水路へ沿って進攻することは問題なくできた。


建屋がすぐ近いのでさすがに視線が気になった。
窓にはブラインドが降ろされており無人であることは殆ど間違いない。しかし枯れ草をガサゴソと踏み締める音に気付いて宿直担当者が窓を開けて「コラー!」などと言われそうな気がした。


しかしそう怖じ気づくことも遠慮することもない。現在自分が居る場所は一般の野山と同じである。水路の管理者が退去を求めるなら従わなければならないが、不法侵入などの法的に問われる場所ではない。自分はこの先にあれがあることを知って進攻可能な場所を歩いているだけである。
もっとも子どもが観ているなら真似をさせないための自重は必要だろう

ここから先は変圧設備のある方まで水路沿いに落石防止柵はなさそうだ。進攻を阻む門扉も見当たらない。このことから一番期待している眺めを得られる場所へ接近できる確信を抱いた。
コンクリート擁壁の上部に建屋で使用する電源の引き込み線がある。しゃがんで手を伸ばせば容易に届いて感電できてしまう位置だ。


擁壁の上にフェンスが途切れているのは、まさかこんな場所まで入り込む一般人は居るまいという予測というよりは、単純に落石の恐れがある崖ではないからだろう。水路の管理者にしても訪れるとは思えない。
しかしその割に水路沿いはそれほど藪化していなかった

そして発電建屋のほぼ裏側へ回り込んだとき…
そいつは自然に姿を現した。


やっぱり…あの水路が続いていたのだった。
初回訪問時は変圧設備側から接近しようとして失敗した。今回、最初にあの灌漑用パイプを見て何だろうという気を起こし偵察して正解だったなーと思えたひとときだった。

(「佐波川発電所・第二次踏査【2】」へ続く)
出典および編集追記:

1. 実際は前のカメラと同等以下の撮影品位になってしまっている。これは撮影枚数を確保するために一枚当たりの画像サイズを小さく設定したこととリサイズによる損失である。
どの設定で記録するのが良いかは暫く援用した上で検討する予定

2.「宇部市の水道」p.75

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