素材分類の意義

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記事作成日:2018/9/20
最終編集日:2019/5/14
ここで言う素材とは、市内にみられる現行の道路から史跡や遺構まで含めて、それらを構成する要素となっているパーツを言う。

したがって特定の場所に存在する単一素材そのものは、よほど特異なものでない限り当サイトに定義している「物件」には該当しない。それにも関わらず新規カテゴリを設定し情報を盛り込んだ記事の収録を試みるのは以下の理由による。
(1) 同じ種類とみられている素材の中にしばしば注目に値する微細な特性の差違がみられること。
(2) 当該特性をもった素材がしばしば地域や設置年代によって明白に偏った分布を示していること。
(3) 特に注意を払われていない素材で急速に数量を減らしているものがあり、その分布や絶対量を把握すること。
(4) 特定の素材を持つ「物件」に関する情報検索を容易にすること。
素材という語そのものが大枠であり、一般名などによりどこまでも細分化が可能である。しかし徒に細分化しても実際に収録されるであろう項目は少ないと思われるので、言及に値する程度までの区分を行っている。
【 注目に値する特性の差違について 】
近年の幹線道路には、しばしばその下に汚水管や共同坑が設置されていて路上にマンホールがみられる。単一路線で同時に施工されたものはすべて仕様は共通するが、稀に歩道などへ古いままのものが遺っている場合がある。蓋は鋳鉄製であるものの周辺部が鋳鉄リングではなく花崗岩を敷き詰めたものもある。
写真は市役所前の歩道にみられる古い下水道人孔蓋


あるいは汚水管でも幹線と準幹線、枝線では蓋の仕様が異なっていたり、電線地中化地区など景観に配慮している場所では、鋳鉄蓋そのものも特定のデザインが施されているものが見られる。市街部でそういった特殊な鋳鉄蓋を探し歩くのは一つのテーマ踏査ジャンルとして確立されている。一般には殆ど頓着されない鋳鉄蓋であるが、中には初期の貴重なものがあり注意深く観察されている。
【 年代と地域による分布の差違 】
宇部市内においては建築素材の一つとなった桃色レンガにおいて顕著である。かつては処分に困っていた石炭焼却灰の出る近辺に限定されるものと思われていたが、近年の調査で桃色レンガは隣市はもちろん更に遠方まで出荷されていたらしいことが判明している。[1]
写真は山陽小野田市埴生地区の教蔵寺で確認された桃色レンガ塀


市内に限定してもその分布状況は一様ではなく偏りがある。その裏には従来型の濃色レンガを比較的安価で安定供給できていたのではないかといった推論が成立する。

他の素材に関しても分布状況を調べることで、その地域の特性を引き出せるのではないかという考えがある。このため項目名としては一般的なものでも市内では何処に存在していたかについてを記録している。例えばユッカ類のアツバキミガヨランは平成期に手の入った地には存在しないことが経験的に判明しており、この植物がある場所は少なくとも30年以上前から変わっていないということが言えるのである。
ただしそのことは市内に限らず全国的に当てはまるかも知れない
【 絶対量と保存評価のための資料 】
当サイトでは定型句の如く唱えられている一つに「街の景観はかならず変わる」という事実がある。別に市街部に限らず市内ひいては全国的に何処でも言えることなのだが、近年の旺盛な住宅需要とコンパクトシティー推進の流れにより市街地回帰志向が強まっており、変化のスピードが目に見えて速まっている。

現代の建築基準法に適合しない建物は取り壊され、ついでに周辺の路地や石積みも除却される。間知石積みはその代表例で、現在では殆ど新規に施工されない。まだ至る所に見受けられるとは言っても時の流れにつれて減少する一方である。
このような時代を物語る構造物が市内全体でどれ位の規模で何処に遺っているかを把握しておくことが重要である。「まだ何処でも普通に見かける」と思っていたところが、気がつけば殆ど見られなくなった例として街路樹としてのヤナギの樹が挙げられる。
写真は湾岸道路以前の通称西海岸通りにあったヤナギの街路樹で既に存在しない


当サイトでは、観測される頻度という基準を元に、しばしばそれらを生物の保全状況の言葉を借りて表現(「絶滅危惧種」など)している。例えば木製の双脚電柱は絶滅危惧種であるし、一回線のスズラン型鉄塔は絶滅種(既に何処にも観測されない)となっている。これも市内に於いてという付帯条件があり、他の地区では当てはまらない。
ただし区分はIUCNレッドリスト程の厳密性は当然なくあくまでも主観的判断である

近年、市内でかつて遍在していた桃色レンガ塀が急速に失われていく報告を受けて、素材の絶対量評価を行っておくことの重要性に気付いて先述のIUCNレッドリストを模倣したランク付けを考えた。詳細は以下の記事を参照。
時系列記事: 素材の絶対量評価
この評価では分布状況ではなく市内全体でみたときの現存量のみを考えている。
【 特定素材をもつ物件の検索 】
これは純粋に探し求める記事へ行き着くのを容易にするための試みである。同じレンガ構造物でも桃山の六角堂は水利カテゴリの施設として収録され、常盤小学校近くにあるレンガ造りの長生炭鉱火薬庫は遺構カテゴリに入れている。ある物件がいくつかのカテゴリに跨がる現象はまったく一般的であり、そのことがカテゴリから記事を探すのを難しくしている。

そこで素材カテゴリで例えばレンガに関する総括記事を作成しておけば、そこから市内にある既に記事化されているレンガ構造物の記事へリンクで案内することができる。

この観点のみから言えば、物件の素材ではなく所在地を元に区分する方が現実的かも知れない。カテゴリを限定しない代わりに校区単位でさまざまな物件を紹介することは、市内各校区で作成された郷土マップが該当する。同種のものを当サイトでもインデックス化すれば更に記事検索が容易になるが、その分だけリンク設置作業の手間も増えるため見送られている。
出典および編集追記:

1. 俵山温泉や防府の富海で観測されたという報告がある。
ただし個人的には実地に確認はしていない

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