写真は鍋倉の宮地嶽神社周辺に生えているトウジュロ。
漢字では概ね「棕櫚」と書かれる。日本に持ち込まれた外来種だが、気候の適合から自生するヤシ科で唯一の植物である。市内にみられるのは葉先が垂れずに尖ったトウジュロであり、ワジュロは恐らく殆どみられない。一般的な項目は[1]を参照して頂くとして、以下では市内にあるトウジュロに限定して記述する。
《 概要 》
トウジュロは真っ直ぐに伸びて一番高いところで扇を開いたような特徴的な葉をつけるので、遠くからでもかなり目立つ。枝分かれせず上へ上へと伸びた後で、幹の部分が箒などの材料にも使われるシュロ皮となる。
相当な高さになっても幹の太さは殆ど変わらない。特に市内でみられるトウジュロはソテツなどよりも幹径が細い。
《 市内の分布状況 》
個人的には特に今まで注目はしていない植物だった。分布についての興味は、新川歴史研究会の高良氏により提出された。報告によれば、観測されるトウジュロの殆どが昭和中期以前からある民家の敷地などで、それも高さが概ね一定で数本列を成すように植えられているという。写真は島地区にみられるトウジュロ。
この観測は、かつて(株)宇部日報社が創刊110周年を記念して2022年5月31日より開始した「誇れるふるさと24地区リレー」企画で、高良氏が記者と共に新川地区題材を紹介する題材採取で小串台を歩いたときの体験に基づいている。場所は分からないが、小串坂(県道琴芝際波線の尾崎交差点から北に向かう坂道)を登り切った右側に背の高い特異な樹木が数本並んでいるのを見つけた。それは島地区にもみられるので、ある時期に植え付けたものではないかという仮説が生まれたのである。
県道沿いにはトウジュロが見られる場所がなく、高良氏が発見した場所が何処かを後日探し歩いた。そして小串墓地(宗隣寺の東側にある墓地)の近くに割とまとまった本数が植えられているのを見つけた。
細い路地を丹念に歩いて調べたところ、他にもやや小振りな高さのトウジュロが1〜2本敷地に植わっている民家があった。シュロであることは予備知識として持っていたが、トウジュロという名称の外来樹であることが分かったのはこのときである。
【 分布理由の推測 】
今まで調べてきた範囲で、トウジュロは昭和50年代以降人の手が加わった土地には見当たらない。例えば小羽山ニュータウン領域には一つもない。これはアツバキミガヨランに似るものがある。見つかる場所も大抵が民家の敷地の端で、複数ある場合は殆どが一列に並んでいて山野にみられる樹種のようにランダムに植わっていることが殆どない。このことから、ある時期に植え付けが推奨されたり流行ったりすることで人為的に植えられた可能性が高い。[1]によれば、トウジュロの成育は極めて遅く樹高が1m伸びるのに概ね10年を要するようである。市内に観測される敷地内のトウジュロは殆どが5m以上の高さなので、昭和初期か大正期に一斉に植え付けられたように思われる。
トウジュロの植え付けを推奨したという客観的資料は今のところ見当たらない。昭和初期の宇部時報の紙面に南国気分を堪能できる植物の植え付けを推奨している記事がみられ、今のところ最も関連性の高い資料である。
風水学的観点から、ある種の樹を家の特定の方向に植え付ける習慣があったことも指摘されている。葉の尖ったヒイラギを玄関近くに植える習慣があり、かつて恩田に居たときのうちの家もそうだった。これは鬼や邪悪な気が家の中に入るのを防ぐ意味で植えられた。シュロの植え付けもそうかも知れない。
【 野良生えの個体について 】
明らかに人が住んでいた履歴がなさそうな場所にトウジュロが見つかる場合がある。写真は2012年に女夫岩池の滝落下口付近で見つけた野性の個体。
(印象的だったのでこの場所で撮影したことを覚えていた)
ノラジュロは鳥によって種子が散布された結果と考えられている。概ね背丈が低く雑木林の中に他の樹種に混じって生えている。注意して観察されていないだけで、ノラジュロは思いの外多く、むしろ近年では温暖化の影響で繁茂しているため除去している自治体もある。
【 保全ランク 】
上記のノラジュロを除外し、人為的に植えられたと考えられる市内限定の個体に対する評価である。| ランク | 呼称 | 概要 |
|---|---|---|
| 3 | 脆弱 | それほど豊富とは言えず、将来的な減少が予測される。 |
《 類似する樹木 》
ソテツも幹や葉が似た樹種だが、シュロとは別の属である。シュロよりも個体数がずっと少なく、特別な場所に記念として植えられたものが多い。市内に野良生えがあるかはまだ観察されていない。フェニックスの名で知られるカナリーヤシは、松山通りの中央分離帯にあるものが象徴的な存在である。
市内では民家の敷地に植えられたものが存在し、どれも概ね背丈が共通するので同じ時期に導入されたのかも知れない。
ときわ公園のペリカン島に面した半島に植えられているひときわ背の高いシュロのような樹木は、ワシントンヤシである。
この樹木は平成3年の常盤公園野外彫刻展示場整備工事において、園内の別の場所に植えられていたものを丸ごと巨大な機械によって周辺の土を付けたまま掘り起こし、移動して植え替えられている。
(この目的で特殊な大型機械を四国より運んで援用している)
《 記事公開後の変化 》
この総括記事を作成後、撮影で市内各所を訪れる折りにシュロの樹を観察するようになった。FBページでは2025年1月18日に投稿し、近くに植えられている場所があるという報告が西岐波地区より2件寄せられた。[2] 床波駅の裏と国道190号床波バイパスの間にあるものが顕著で、樹高からすると100年以上経っていそうである。サンデーうべのコラム題材で村松の海岸を訪れたとき、極めて背の高い同種の樹木を見つけている。これはトウジュロではなくワシントンヤシか近隣種かも知れない。
他にも白土から丸尾崎にかけての海岸沿いに見つかっている。
【 市外からの情報 】
周南市において、農家で副収入を得る手段としてシュロの樹が植えられていたという報告を受けている。皮を剥いで縄をなう素材になっていたが、昭和中期以降合成繊維が普及してからは自家消費分だけとなり、やがてシュロ皮が採取されなくなってそのまま自然に還っているという。この傾向は全国的にみられるものかも知れない。《 関連記事リンク 》
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