恩田スポーツパークをデザインするワークショップ【第二回】

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記事作成日:2018/12/6
最終編集日:2018/12/7
(「恩田スポーツパークをデザインするワークショップ【第一回】」の続き)

恩田運動公園の改修計画に関するワークショップ(以下WSと略記)の第一回の続編である。第二回WSは「パーク内のゾーニングを考える」というテーマで第一回WSへの参加者をすべて集め、12月2日の午後1時よりユーピーアールスタジアム会議室で開催された。当日は天気が不安定だったので会場までは自転車ではなく車で行ったが、正午過ぎの産業道路から清水川交差点辺りまでは車が非常に多くノロノロ運転で開始時刻数分前にやっと到着できた。
自転車なら十数分で行ける距離なのに車を使ったばかりに20分近くかかっている


私が最後の到着者だったので、手早く一番前の席に座った。全員揃ったところで若干定刻より早く始まった。
《 第一回WSで提出された意見 》
まず第一回WSのおさらいとして、開催状況や提出された意見が報告された。参加者は日時を違えて開催された3回で延べ35人。アドベンチャー広場を利用する親子での参加もあったという。意見は対象施設と内容別に整理されて一覧が参加者へ配布された。予算や現実味はあまり考えず欲しいものを各自が書くというスタイルだったので、釣り堀やカヌーを漕げる場所といったかなり実現困難なアイデアがあった。また、お化け屋敷といった子どもらしい意見もあった。

個別の意見を紹介することはされず、各自が配付資料を見ることとなった。ざっと見たところ公園にしても運動設備にしても市民参加型のものが多く求められていることが窺えた。それも比較的近年盛んになったスポーツを行える設備に対する要求が目立ち、既存の設備と同じ内容のものを更新するスタイルでは時代に対応できないことが感じられた。
《 自分なりのスポーツパークを構成する 》
参加者のテーブルの上には第一回WSで提出された意見一覧の他に、恩田スポーツパークの平面図2枚と鉛筆が置かれていた。今回WSのテーマに沿う形で、この平面図に各自が望ましいと思える設備をレイアウトする課題が与えられた。


レイアウトの作成に関しては若干の制約があった。第一回WSで解説された通り、野球場と陸上競技場は基本的にその位置を変更しないこととなっている。野球場は平成10年に改修済みで設備がまだ新しいこと、陸上競技場は400mトラックは今も公認設備となっているため本部席の改修は行うものの位置の変更はしないことが理由だった。この他に現在も改修工事が進められている俵田翁記念体育館も変更の対象外である。このため平面図には始めからそれらの設備が印刷されており、残りの空白部分に欲しい設備を配置することとなった。

もう一つの制約としてスポーツ施設・公園施設・にぎわい創出施設を1つずつ配置する条件が課せられた。
一例として主催者側で作成されたサンプルはこのようである。


古典的なビデオゲームの一つにシムシティーなるものが存在する。参加者には”神になった積もりで”思うままにレイアウトを書き込んで欲しいと告げられた。こうして約45分の時間が与えられ、各自がレイアウトを作成した。

私はテーブルの上にセットされていた鉛筆以外に色ボールペンを持ってきていたので、まず「ここは変更せず継承して欲しい」という部分を書き込んだ。潤沢な資金があり好きなだけ欲しい設備を配置できるなら夢あふれるレイアウトを行うだろうが、既に我が自治体の財政事情がどうであるかを知ってしまっている。更にこの先を考えても税収が急増する見込みも殆どなく、税金を投じて大きな施設を建設することへの風当たりも過去にないほど強い。このため今そこにあるものを取り壊して無理やり新しいものを造ろうとするのではなく、今そこにあるリソース(過去からの利用可能な資産)を最大限活かすスタンスである。そうなれば何か欲しいものを配置するというよりは、むしろ今そこに在ってそのまま存続させて欲しいものを列挙した方が早い。

この考えの元で真っ先に赤で記述したのが、陸上競技場とプールの間にあるメタセコイア並木である。その景観が如何に秀逸であるかはリンク先を閲覧すればすぐ理解できる。現場を見ず机の上だけで設計しようとすれば、何か新しいものを造るのにスペースが邪魔だから…などという理由で除却を検討するだろう。かつて新天町こども祭りのとき市内のイチオシ場所を撮影した写真を掲示したことがあり、そのときこのメタセコイア並木は実に多くの「イイネ!」シールを貼られた経緯があった。これをわざわざコストをかけて伐採除去するなど実に愚かなことである。私はこの場所に今あるメタセコイア並木以外の如何なる秀逸な建設物も思い付かない。

しかし大きく伸び過ぎた高木が縁石を歪め、周辺の地面を盛り上がらせていてジョガーや散歩する高齢者のつまづきを誘発しているのも確かである。そうであれば地表へ露出してしまった根を被せる形で土を盛れば良い。なまじコンクリートやアスファルトでガチガチに固めようとするから悪いのである。現に産業道路のインターロッキングもイチョウの木を植えた上から施工してしまったため、著しい不陸が生じて大変に通行しづらい状態になっている。一度でもそういった現場を目にしていれば、この種の設計が如何に高木などの植生に配慮しないものであるかが理解される筈である。

次に考えたのは新生スポーツパークとなって人の流れが出来たときのアクセスである。現在でも周辺の市道は一部が狭かったり一方通行になっていたりで利便性が悪い。今の車社会があと数年〜十数年程度で大きく変化することを考えるのも困難であり、可能であれば安全な設計にしなければならない。この過程で、現在の恩田運動公園のエリアを若干削ってでも周辺道路を拡げる設計を提案した。俵田翁記念体育館前を通る市道恩田野中線はセンターラインで仕切られ両側に分離された自歩道があるから及第点だが、その他の2路線はスポーツパーク構想がなくとも拡幅が必要である。

国道190号から入った直線部分にあるアスファルト舗装は、駐車場出入口までを残してそれより先は無意味なのですべて剥がす。これで降雨がある程度地面へ染み込み涵養機能が戻るだろう。ただしメタセコイアは今までの「降雨にあまり頼らない環境」で育ってきているので、地面に降雨が染み込むようになった変化が悪影響を与える可能性は一応考慮すべきかも知れない。

プールは機能縮小して温水プールや屋内化を施して存続した方が良いだろうが、市費単独でこれを行うのはまず予算的に無理だろう。近年は民間資本の導入による運営が盛んなので、手を挙げてくれる企業があれば検討に値する。賑わい創出施設と併用で建設から維持管理から委託することになるだろう。そこまで無理なら、当面は単純に屋根付きのコンクリート張りスペースだけでもスケボーの練習場は造れる。プール前などはアスファルト舗装がガタガタなのだが、よほど場所がないのかそういう場所でスケボーを楽しんでいる若者の姿がよく見られるから、一定の需要はあるだろう。

こうして書き上げたレイアウト素案。
温存すべき部分を赤で、道路部分の修正箇所を紫色のペンで描いている。その他のスペース利用に特段のこだわりはないので鉛筆で記載している。


第一回WSの延べ参加者は35名だったのだが、本日第二回WSでは(天候が不安定でもあったせいか)自分を含めた参加者は12名程度だった。そこで参加者全員に自分のレイアウトを提示して説明する時間が数分与えられた。レイアウトをスライドで投影可能にするために配布された紙は一旦回収され、画像データに変換された。私は上の画像にみられるように「コストを考慮した現実案」と題して説明を行った。このとき話した内容はほぼ上に書いている通りである。
《 グループで素案を作成・発表する 》
参加者の発表後、それぞれのプランが分類された。大まかにはコストをあまり考慮せず賑わい創出に重点を置いた「ドリーム重点プラン」、私のようになるべくコストをかけない身の丈に合った「コスト重視の現実的プラン」、そして両者の「折衷案」として3つに分類された。行政としては財政事情は厳しい状況にあることが明らかなため、コスト重視プランは”涙が出そうな程に有り難い案”と表現された。

このようにして3つのグループが作られ、1グループの構成員が4〜5名の状態でそれぞれ所定の席へ移動することとなった。


グループでは、構成メンバーの意見を擦り合わせて拡大されたエリア平面図へ書き込む作業が行われた。しかし実のところ我々の班では殆ど何の作業も必要なかった。興味深いことに、現実路線を考えているメンバーの誰もがメタセコイア並木を温存して欲しいという考えで一致していた。俗に「箱物」と揶揄気味に唱えられるのだが、行政が税金を投じてそうした箱物を量産することに批判の目が厳しい時代である。可能な限り今あるものを改修して利用すべきであって、メタセコイア並木を伐採して何かを造るのは勿体ないと考えられた。それ故にまず同じく温存すべきメタセコイアのある部分を赤ペンで記述した。

最後に各グループ毎に発表を行った。超現実路線案を唱えたのが言い出しっぺでもあり、私が責任もって説明を行った。画像は採取していないので手元にないが、大きな紙に描かれた配置図は「新たに造りたいもの」が殆どなく、むしろ「温存して欲しいもの」を強調した簡素なものだった。

発表では、ここでもメタセコイア並木の温存を強調した。それらは国道190号から入ってきたとき正面に見えるものであり、アスファルト舗装を剥がすなどの変更は行うも高木はできるかぎり現状を継承する。可能であればその景観を損なう元となる建物も周辺には設置しない。しかし入口側には駐車場と遊具類などに限定すれば、むしろ既存のプール管理棟がなくなる分だけ景観は好転すると思われる。

グループ案ではプールの再配置を考慮していない。これは第一回WSの参加者からの意見でぜひともプールを温存して欲しいという意見が思いの外少なかったことを反映している。現状は夏季の2ヶ月しか稼働されておらず、通年で営業可能とするには規模を縮小しないとコスト的に困難だろう。更には市営プール時代には市内で一般が利用可能なプールは殆どなかったものの、現在は(会員制という制約はあるが)市内にも数ヶ所ある。50mプールが公認を解かれてきららへ移っていることもあり、プールを再建することに対費用効果がどれほど見込めるかが不透明なのも理由である。

エリア内には適当に広場やにぎわい創出スペースと書いているだけで、確定的な設備は描いていない。例えばアドベンチャー広場は人気を博しているので更に拡充したものを造るのは賛成である。それを造ってしまった後で思いの外需要が薄かったために他のものへ転用するといった事態はできれば避けたいが、簡素な遊具程度なら移設は可能だからである。これを何か大掛かりな箱物を造ってしまうと、あてが外れたとき変更を行うのが困難である。最悪、それを取り壊すのに追い銭がかかることになる。時代の流れは明らかに昔よりも速いので、すべての施設を確定させるのではなく、世の流行や人気状況を見ながら対応できる余地を残しておいた方が良いのではないかといった考えである。
《 まとめ 》
今回のWSは午後1〜5時の長時間が予定されていた。主催者の配慮でできる限り早めにまとめて切り上げることが表明されていたのだが、蓋を開けてみると些か白熱した取り組みとなり、ほぼ予定通りの午後4時半過ぎに終了している。参加者自身が描いた平面図プランは持ち帰り可能だった。ここへWS終了後時点での最終案を映像化して載せておく。


第一回WSと同様、提出された参加者の意見はすべて吸い上げられ、設計の参考にされることが表明された。今後のタイムラインとしては来年の2月までに市の基本構想を提示し、パブリックコメント募集にかけられる。完全ではないが一連の流れはここへドキュメントとして記録された通りである。
【 余談 】
今回の第二回WSまでに得られた情報をまとめて、総括記事の提案に反映させている。

なお、WS終了後に以前から念頭にあった恩田プールの視察について主催者側に話をした。俵田翁記念体育館は改修工事開始前に内部の撮影を終えているが、プールは利用者でなければ入場できない(更には利用者であってもシーズン中のプールエリアでのカメラ撮影は禁止されている模様)ので、未だ詳細な映像記録ができていなかった。
12月現在はシーズンオフであり現地にはメンテナンス要員しかいないので、入場も撮影も全く問題はないという回答を頂いた。そして12月5日の午後より2時間かけて現地を視察し記録を行った。この情報を元に、未だ作成されていないプール関連の総括記事を作成する予定である。
出典および編集追記:

1.「FBタイムライン|”恩田スポーツパークに必要な機能を考える”ワークショップ・第2回」

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