白岩公園・第四次踏査【1】

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(「白岩公園・第四次踏査【序】」の続き)

適当な位置で妥協して撮影した一枚。
渡辺翁揮毫の「大自然」と短歌の描かれた側面が同時に見える場所である。


結局、大自然の文字と側面の短歌が読み取れる場所からの撮影はできなかった。巨岩自体が斜面の上部にあり下から見上げる形になること、周囲の藪が酷く眺めが制限されることが原因だった。
白岩公園がまだ一般市民にも親しまれ、多くの人が訪れていた頃にはメインの園路からでも読み取れていたのだろうか…

この巨岩付近からメインの園路は再び登り坂になり、上池との高低差が拡大される。
上池には第三次踏査で見つけたウィスキー瓶型の石灯籠が据わっていた。肉眼ではまったく明白なのだが、少し離れて撮影しただけで何処にあるのか写真から見つけ出すのはちょっとしたパズルだ。
同じくらい緑色に苔生している岩が本来あの石灯籠が置かれていた場所なのかも…


倒木峠にも日が差し込めている。
園路に倒れかかった木が放置されているというだけで陰鬱な印象があったのだが、普段より日が射し込んでいるというだけでイメージも違って見えた。


法篋印塔の写真が思いの外少ないことに気付いたので、枝道を経て再度法篋印塔のあるピークに向かった。
その途中にある石灯籠のところにまた別の野球のボールを見つけた。
前回撮影したときには無かったような気がするのだが…


白岩公園で野球のボールを見つけたのはこれが2個目だ。前回は白岩公園の入口近くにある沢沿いの藪で見つけていた。


大きさから汚れ具合から瓜二つである。白岩公園は子どものボール遊びの場にもなっていたのだろうか。それにしてもボールで遊べるほどの広いスペースもないような気がする。
前回見つけたものも含めて、ボールがこの場所に転がったのは最近のことの筈だ。ボールの下敷きになっている枯れ葉が新しい。何十年も前からここに在るなら、いくら丸っこいボールでも木の葉に埋もれてしまう筈だからだ。
最近の踏査か一年程度前にここを訪れた誰かが見つけて拾い上げ、再度ここに放り投げたのだろう。

この日の踏査で得られた可能な限り鮮明な法篋印塔の全容。
これ以上に鮮明な写真を撮影したいなら、それこそ草刈り用具が要るだろう。


撮影にあたっては今回手の届く範囲で撮影を妨げる枯れ枝などを取り除いた。
この程度手を加えても管理されていない現状ならすぐに元へ戻ってしまうから問題ないだろう。

側面の文字。
聖妙三百三菩提のように読み取れる。意味は調べてみないことには判らない。


法篋印塔の上部構造。4つの羽根のように伸びる部分が法篋印塔としては独特だ。
その下には梵字と思しき文字が見えている。


下部構造。
蓮の花をイメージしているのだろうか…


上の3枚の写真を撮るときも垂れかかっている枝が邪魔だった。生きている木の枝なので、左手でちょっと枝を押しのけて右手でシャッターを切っている。そうしなければこの写真は撮れない。
法篋印塔の羽根の上には枯れ枝が載っていたが、取り除くには塔によじ登らなければならず、まさかそんな不作法なことが出来る筈もないだろう。寺院・仏閣関連に関心が薄く知見も殆どないのだが、この法篋印塔が重要文化財級の遺構であることだけは確信できる。大きく取り上げられ市民の耳目を集めるようになれば、今ほど近づけなくかも知れない物件と思う。一般に知られる法篋印塔の中でもかなり特殊な形状のように思えるのである。

さて、石灯籠のところに見つけたボールも持って帰る訳にはいかないので、分かりやすいこの場所に置いた。
心当たりのある方は…もうボール遊びをすることもない大人になっていることだろう。


再び倒木峠まで戻り、白岩公園内の踏査はそこまでにして第二次踏査のときも辿った白岩公園コースに向かう道を進んだ。あの「鼻の穴」の正体を極めておこうと思ったからである。この後の踏査で予定されている門前池に向かう道の途中でもあった。

涸れた沢を横切り再び山道が登り坂に変わる先に黒々とした穴が見えかけていた。


第二次踏査の帰りに偶然見つけた勝手呼称「鼻の穴」。
その通りどういう訳か鼻の穴の如く同じサイズの整形された穴が空いている。そして山道も何故かこの場所で直角に屈曲しているのである。


初めてこの穴にまみえたときは恐怖を覚えて内部の調査はいっさい行わなかった。野生動物が棲息していてフラッシュ撮影に驚いて飛び出してくることを恐れていたのである。
この穴の前も白岩公園の各種遺構と同様、草をざっと刈ったような痕跡がみられた。恐らく記事を読んで現地に赴いたメンバーが偵察のために刈り取ったのだろう…ということはそれほど恐れる程ではないかも知れない。

念のため、わざと周囲の枯れ草をガサガサと音を立てつつ穴に近づいた。野生動物が中に潜むなら普通はこれだけで身の危険を感じて移動する筈だからだ。
フラッシュが強制オフモードになっていることを重々確認しつつ、少しずつ左側の穴の前ににじり寄った。

左側の穴。断面はおよそトンネルらしくもない長方形だった。凝視しているうちに少しずつ暗闇にも目が慣れてきた。


当初私はダムに造られるグラウトトンネルの如く真っ直ぐ延々と続いている洞窟を頭に描いていた。しかしそうではないことは入口から差し込む自然光だけでも想像がついた。

内部の様子。奥行きは殆どない。目測でも1m以下だろう。入ったすぐ奥で右に曲がっているようだ。
内部の天井と地面のほぼ同じ位置に円形状に掘り取られた部分があった。
何のための掘削跡かは分からない


大丈夫…中には何も潜んでいない。それでもサーチライトも持たない状態で潜入するわけにもいかず、カメラだけ押し込んで撮影している。
剥き出しの土壁で内部には何も目立ったものは見つからなかった。


右側の穴の前へ移動する。
しかし左側の穴から内部を撮影したとき右へ折れているのが分かったので、状況が見えた気がした。


実際に肉眼で見えるのは暗闇だが、中に何も居ないと分かっているのでそう不安はない。
再びカメラを持った両手を差し込んで撮影している。


想像通り右側の穴は入ったすぐ先で左に折れていた。穴の正面にはやや小さく長方形状に掘り取られた部分があり、これは先ほど左の穴から観たものと同一である。このことから左右の「鼻の穴」は繋がっていることが分かった。
さながら鼻輪を通された牛の鼻の穴ってことか…^^;

最大限にカメラを差し入れて撮影。
左の方から微かに明かりが入ってきていることからも明らかだ。


単一の写真よりも動きがある動画の方が分かりやすいだろう。
左側の穴に接近する過程を動画で採取しておいた。

[再生時間: 42秒]


これで「鼻の穴」の形状は判明した。しかしこれが何のための穴かと問われればなお返答に窮する。

まず、土砂などの崩落によって自然発生した穴でないことだけは確かだ。人の手によって何かの目的によって掘削された穴である。導水や人馬の通行に供する隧道目的でもなさそうだ。この穴の方向に真っ直ぐ掘削しても何処か重要な場所へ通じるあてがないからだ。

白岩公園に向かう裏道としてはこの場所で直角に曲がることになる。そのこととこの穴が何か関係あるのかも知れない。例えば何か目印になるようなものを設置していた跡だとか、関係するものを格納するための仮の貯蔵庫だったとか…
白岩公園に関しては昔そこで遊んだ年配の方から若干の情報は寄せられているが、今のところこの「鼻の穴」については何も得られていない。存在さえも広くは知られていないらしく、言及なさった方はどなたもいらっしゃらなかった。倒木峠から北側には何の石碑も存在しないことからも、この「鼻の穴」は白岩公園には属さないのだろう。
そういう訳で今となっては正確な答えはもう得られないだろうと考えている。案外、昔白岩公園へ遊びに通っていた悪ガキが探検ごっこ紛いに掘った穴だ…なんて可能性もありそうだ。

去り際に振り返って撮影。
裏側から白岩公園に向かうこの道は「鼻の穴」のところで直角に曲がっている。少なくとも道なりに沢を下っていく踏み跡は存在しない。


想像だが、上の写真で「鼻の穴」の前を通過して真っ直ぐ沢を下る道があった筈と思う。岩田堤池へ出られる筈だが通行需要が皆無となったので道が失われ自然に還ったのだろう。

第四次踏査としてはここまでだ。
白岩公園コースに復帰し、面河内西分岐に向かって歩き始めた。


白岩公園の第四次踏査としてはまことにあっさりとしたものであった。複数回もの踏査を経て白岩公園の主要な遺構はすべて確認できたし、微細な構造物もかなり判明している。殆どこれで調べ尽くしたと考えるのも当時としては無理からぬことなのであった。
それも例の書籍にさえ掲載されていなかった物件が発見されるまでは…
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終わりとは言ってもこのままアジトへ帰ったわけではない。本日メインの踏査目的地である門前池の「自分なりに分かりやすい入口」に到達するために白岩公園コースを戻った。
時系列としてその後訪れた門前池の記事を案内しておこう。

(「門前池【序】」へ続く)

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