白岩公園・第五次踏査【2】

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(「白岩公園・第五次踏査【1】」の続き)

崖の上を登り切った先にいくつかの岩が集まる場所があった。
中央部に空洞が見えていたので、人為的に岩を積んだ遺構かとも思われた。第三次踏査では薬師如来の祠の下に井戸らしきものが発見されていたからだ。[13:47]


丹念に観察した。
しかし空洞のように見えた部分は、単に岩が積み重なって出来ただけだった。

かなり目立つ大岩だっただけにがっかりした。
仕方がないだろう。そもそも今いる場所は何の脈絡もない斜面である。獣道の痕跡さえ見つけられない藪なのだ。
もっとも木の葉を除去すると何かが現れた…という可能性はあるかも…

手書きマップでおよその位置情報を得ていたとは言え、見通しの効かない藪の中から石碑と御堂を探し出すなど、雲を掴むような話に思えた。しかしかれこれ白岩公園に訪れたのが5度目ともなる状況で、ヒントまでもらったまま探し出すことが出来ず撤収…なんてのは、最近の白岩公園火付け役となった私の矜恃にかかわることだった。この斜面を辿ってピーク部分まで辿れば、いつか必ず見つけられるだろう…

もう暫くピーク部を自分の右側に見る位置で中腹部を辿った。
藪の中にひときわ明るい薄紫色の花を見つけた。[13:48]


山に咲くツツジだ。
思えばもうそんな季節になっていた。


踏査には無関係だがしばしカメラを向けた。
個人的にこの淡い青みがかった薄紫色が大変に好きだ。
この色はすたカラーと呼ばれているので覚えておくとよい…^^;


パッと咲いて人々の目を喜ばせたかと思えば大概風雨に見舞われ敢えなく散り行くサクラと異なり、ツツジはずっと長い間私たちの目を楽しませてくれる。いや、あまりにも長期に咲き続けていて飽きる位で、特に植樹帯で育つ濃い赤紫のツツジは些か食傷気味だ。
それでも人に観られるためでもなくこんな山野の藪にひっそりと咲くツツジは目を和ませてくれた。何しろ今までの写真を観ても分かるように藪と巨岩ばかり…灰色と緑色ばかりが支配する写真ばかり見続けてみた読者にも目の保養になるだろう。

さて、このまま歩き続けるとK氏の指摘した尾根を越えてメインとなる隣りの尾根に到達してしまう。
適当な場所で進行方向を変え、今度はピークを左側に見る形で高度を上げ始めた。[13:48]


斜面をジグザグに歩くとは言ってもまったく闇雲に進んでいるのではない。少しでも与しやすい部分を見つけて歩いた。それは外部から閉ざされた遙か昔の踏み跡のようであり、単なる錯覚かも知れなかった。

進行方向を再び変えた先で再び巨岩に出会った。
巨岩の下は小さな平場となっていて、何やら散乱している。[13:49]


ちょっと尾籠な話だが、私が踏み跡と認識して追跡しているこの場所は野生動物たちも同様に通っているようだ。
何の動物か正体は分からない排泄物が転がっていた。


巨岩下の平場には、棒状の石材が散乱していた。
紛れもなく人の手によって加工されたものだ。


これはかなり明白な遺構だ。
石材が柱状なので、石段ではなく何かの構造物があったように想像される。


御堂の跡のように想像したくなるが石柱以外には何も見つからなかった。仮に御堂があったとしても一世紀近く経っているなら木製のものは原形を留めることなく土に還るだろう…

すぐ背面にはもの凄い大岩が鎮座していた。
高さは目測で5m以上あって、岩の上にも木々が見えたからピーク地点はまだまだ先らしい。


この巨岩に回り込むように斜面をよじ登った。
この辺りは巨岩が集中していた。石碑を造るための材料なら事欠かず、そろそろ現れるのでは…という期待感があった。[13:51]


最初この岩を観たとき「人工物では…」と感じた。
サイズの異なる岩が離れて転がっているのに、その2つに共通して同じ角度で斜めのクラックが走っていたからだ。


残念ながら岩に人の手が加わった形跡はなく、同じ角度で走る筋はまったくの偶然の産物だった。

前方を覆う原生林が少しずつ薄くなってきた。
最初の沢から尾根に移り、ピークが近くなったのを感じた。[13:53]


道なき藪を進攻していてとても奇妙な感じがする場所に出会った。
写真を観るだけではどう特殊なのか分からないだろう。


周囲に踏み跡がない藪は確かなのだが、この近辺は妙に原生林の密度が薄かった。小さな平場がいくつも点在しており、それぞれ高さが少しずつ異なっていた。墓石が失われた墓場のような地形だろうか。

この場所にもかつて「何かがあった」のはほぼ確実と思った。
現実に観察されるのは、数個の加工された間知石のみだった。[13:54]


私の脳裏でこの近辺に建屋が並ぶ風景が頭を過ぎった。
実際には家屋の残骸などまったくない。しかし区画分けされた平場が連なっているように見えたのだ。


人の生活感が遺っているように思われて私はこの区画割りされた周辺をかなり丹念に調べて歩き回った。何か手がかりがあるにしても恐らくは枯れ葉や土砂の下に埋もれているらしかった。

諦めてその場を離れ、どの方向に進んだときだったろうか…今となっては思い出せないが、それほど離れていないのは確かだったと思う。何しろ目標物が殆どない藪の中なので正確な場所を記述する術がない。

尾根のピーク付近に到達したところで再び藪の中に大きな岩を見つけた。この程度のサイズの岩ならもう飽きるほど観ていたので、最初は殆ど頓着しなかった。
実際その岩は何の特徴もなく、加工された形跡もなかった。[13:56]


その巨岩に隣接してやや小振りな岩が数個転がっていた。
手前の岩は自然の岩らしい風合いだったが、奥の小さい岩に疑念を持った。形が変だ…


まるでヤップ島に散在する石の通貨を思わせるような形状だ。
とりわけ気になったのはその表面だった。何か文字が刻まれているように思われたのだ。[13:57]


近づいて調べてみた。
何となく不自然だ…筋状の線がいくつか走っている部分があり、漢字のようにも見える。しかし明瞭に読み取れる文字はまったくなく、結局は石の上の凹凸がそのように見えるだけだった。


それにしてもこの岩自体の形状がおかしい。アルファベットのTを横倒しにしたような形になっている。自然の岩がそんな形をしている筈もないことは気付くべきだったのだが、当初はそこまで想像が働いていなかった。

念のためその裏側を調べようと歩み寄ったときだった。

あっ!!!


(「白岩公園・第五次踏査【3】」へ続く)

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