常盤公園・憩いの家

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記事作成日:2017/7/24
情報この記事は2017年の改修工事後の憩いの家について記述しています。
改修工事以前の憩いの家については こちら を参照してください。
憩いの家は常盤公園の野外彫刻広場北のぼたん苑に存在する古風な茅葺きの一軒家である。
写真は改修工事完了後の見学会時での撮影。
全体工事が完了したら写真を差し替える予定


位置図を示す。


昔からの憩いの家をご存じな方は、背景の見え方や茅葺き民家自体が新しくなっていることに驚いたかも知れない。これは2017年の始めから夏場にかけて行われた改修工事の結果である。
改修にあたってはどのように手を加えて何に活用するかを含めたワークショップ(以下WSと略記)が開催され、参加者による多くの意見が反映されたものとなっている。このWSに関しては以下を参照。
時系列記事: 常盤公園・憩いの家再生WS
上記WSでは茅葺き民家という現状は最大限残したいという意見が大勢であり、安全面を優先した老朽化部材の交換と過去の資産の引き継ぎという相反する要素を考慮して設計されている。
【 以前の憩いの家との主な差違 】
改修の主な内容は以下の通りであり、いずれもWSの議論により得られた合意事項である。
(1) 茅葺き屋根の構造はそのままで元々の外観を継承した改修を行う。
(2) 古民家自体を常盤池側へ20m程度牽き家し、かつ濡れ縁が南を向くように回転させる。
(3) 周遊園路からの高低差を緩め湿気を排除するために敷地全体を1m程度地上げする。
(4) 母屋で火気の使用ができないため別棟に台所と洗面所を設ける。
(5) 別棟と母屋は渡り廊下で連結され、車椅子で登れるスロープを設ける。
(6) 玄関と旧厨房の土間部分は一般開放された休憩スペースとし、玄関の反対側にも出入口を設ける。
茅葺き民家という外観を残したいという希望はWS参加者の殆どで一致する意見であった。ただし可燃性のある部材が主要になるため囲炉裏が実使用できないという問題、茅自体を調達して葺くことができる職人の確保も問題視されたが、後者の問題については克服されている。[1]

牽き家と回転、古民家の地上げは相携えて行われた。これは元々のぼたん苑が周遊園路に比べてかなり低く下りスロープになっていること、そのために湿気が溜まりやすい状態になっていたことの対処策である。常盤池側へ寄せるのは景観面の配慮もあった。具体的には移動先の基礎工事を行い、古民家を可能な限り軽量化した上で牽き家を行い基礎の上に載せている。濡れ縁を南向きに変更したのは日射の考慮の他に、ぼたん苑の端へ移動させることで玄関の位置を広い側へ向けるためである。

別棟の建設は、既存の囲炉裏が使えないための不可避な条件であった。この部分はまったく新規の追加となるため、古民家の背面のあまり目立たない位置へ置く代わりにコンパクトながら現代社会の要請(火を使わないIHヒーターとバリアフリーのトイレ)に対応している。調理は別棟で行われるため古民家の土間にあったコンクリート造りの炊事場は除去された。

炊事場が取り除かれることで土間のスペースが拡がったので、この空間は靴を脱がないまま通過できる汎用スペースとして使う案が提示されている。旧来は玄関を入って上がり框があり、引き戸を一つ隔てて奥が炊事場だった。炊事場の奥は物置だったが、ここの壁を穿つことで玄関の反対側からの出入りを可能にしている。これは古民家の壁面に加えた最大の変更箇所となっている。
出典および編集追記:

1. 茅は熊本県阿蘇から調達し、一部は県内萩からも取り寄せている。茅葺き作業は山口市の職人によるものである。
《 改修工事の概要 》
上記の協議事項に基づき、2017年1月より改修工事が行われた。施工手順としては牽き家先と別棟に土間コンクリートを打設し、古い茅などを除去して軽量化した上で基礎の上に載せている。更に新しい茅を保管する倉庫を仮設し、古い上部構造を取り替えると共に新しい茅で葺かれた。牽き家後から改修完了までを含めた様子は以下の時系列記事を参照。全3巻。
時系列記事: 常盤公園・憩いの家改修工事【1】
改修工事は6月末までに完了し、7月からは外構工事に着手されている。庭園部の整備、ロックガーデンとの取り合い、周遊園路からの新しい階段設置などが含まれ、工期は10月末で11月より供用開始される予定。
《 古民家の内部 》
《 別棟 》
改修後の憩いの家のすぐ西側に隣接して建てられている。憩いの家とはバリアフリー仕様の渡り廊下で繋がっている。
写真はスロープのある側からの撮影。


内部は炊事場とトイレで構成される。憩いの家は茅葺き屋根を保持しているため、法的制約により火気の使用ができない。このため火の気を用いる調理と従来追加設置されていたトイレが和式で使いづらかったことから、両者を別棟へ集約している。炊事場は電熱調理器(IHヒーター)で、トイレは身障者向けに設計されている。
《 記事公開後の変化 》
以下の記述は改修工事が行われる都度追記され、竣工後は記事中へ移動する予定。

・2017年7月中旬までに憩いの家本体の改修工事すべてが終了し、23日に午後4時までの限定で見学会が開催された。[1]現地では市公園緑地課担当者が駐在し、来園者に見学の呼びかけを行っていた。(2017/7/23)

・憩いの家の一般開放は2017年11月中旬頃が予定されている。庭園部を含めた工期は10月末だが、その後市公園緑地課への引き渡しと竣工検査、利用方針などを策定した上で供用開始される。お披露目式のようなイベントは計画されていると思われるが時期は未定。

・11月11日に新生憩いの家のお披露目を兼ねて開花ぼたんの限定展示が行われることとなった。[2]11日の午前11時からは開苑式、翌12日にはお抹茶の接待が予定されている。
なお、開苑式が11日になることは1日に現地を訪れたとき既に情報をキャッチしていた。(2017/11/10)
出典および編集追記:

1.「FB|ときわ公園公式アカウント(2017/7/23)」による情報。

2.「FB|ときわ公園公式アカウント(2017/11/10)」による情報。

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