常盤公園・憩いの家改修工事【1】

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現地撮影日:2017/1/18
記事公開日:2017/1/20
ぼたん苑にあった憩いの家についての再生活用を議論するワークショップが開催され、最終回となる第3回目のワークショップで具体的な改修案がまとめられた。改修工事のための予算は付けられているという告知がなされていたため、最終設計がまとまり次第すぐにも着工されるものと思われていた。ところが最後のワークショップが終わった11月中旬以降も目立った動きはないまま年を越すこととなった。

2016年度入りしても変化はなく、同年秋口に漸くぼたん苑にある植物の移植が始まった。それから傷みの激しい憩いの家の屋根部分にブルーシートが被せられた。しかし工事開始を予告する看板はなく、またFBでもときわ公園関連のアカウント等から着手を伝える情報は流れて来なかったので、工事は更に年が明けてからとも思われていた。ワークショップできちんとした協議を通したことだし、このまま立ち消えになる恐れはないと感じたものの、あと一度現地へ行ってみて何の変化もなかったなら着工時期について尋ねてみようかと思っていたときだった。

萩原方面へ行く便があったので自転車でちょっと立ち寄ってみた。
ときわミュージアム横の通用門から入って自転車を停め置き、そこから歩いて行くと…工事が始まっていた。


ときわミュージアム側の入口から進むと憩いの家は木々の向こう側で疎らにしか見えない。
それでも工事の柵が見えたし作業に伴う音がここまで聞こえていた。


通路を進むにつれて工事の進捗状況が少しづつ見え始めた。
池に近い側には既に基礎工事も進んでいた。


茅葺きでお馴染みな古民家は外周の壁が取り払われ骨組み構造のみとなっていた。ただし茅葺き屋根そのものに変化はなかった。
位置も既に動かしているのだろうか…以前見えていた場所よりも若干予定の位置へ移動しているように思われた。

確かに既に曳き家を始めたことが分かったショット。
敷地の右端に制御ボックスが見える。あれは元々は古民家の外壁に接して造り付けられていたからだ。


ロックガーデンに接する側の敷地には建築ブロックの基礎が見えている。
見た目は新しそうだがこれは古民家の裏側にあったものだろう。一部は斫り処理もされている。


園路はときわミュージアムの横で少し曲がり、そこから常盤神社まで参道が真っ直ぐ伸びている。
その経路上にユニットハウスが置かれ周辺は立入禁止になっていた。


立入禁止柵の手前まで行って撮影している。
ぼたん苑へ下っていく小道や据えられている石灯籠はそのままだった。この場所は今回の工事にかからないからそのままだろう。


工事中のぼたん苑に入ることはできなかったが、看板のすぐ前まで行くことはできた。
工事概要、建設業の許可票、労災保険関係成立票、そして建築確認の赤い札も掲げられていた。
看板の拡大画像はこちら


工事名は常盤公園休憩施設改修工事となっていた。憩いの家というキーワードは現れていない。これはよほど大きな設備で名称が固定化されていない限り工事の段階では一般的である。

ぼたん苑入口側から撮影。
重機が降りる場所に覆工板が敷かれ周囲は真砂土で地上げされているのが分かる。古民家も真砂土で地上げした場所へ移したらしくどの程度上がっているかは分からない。


工事看板からやや離れて常盤神社入り口との十字路近くにイメージ図が置かれていた。


イメージ図の概要。
これは第二回目のワークショップで配布された計画平面図に彩色したものである。
現況との重ね合わせ手書きマップはこちら


イメージ写真も第三回目のワークショップで参加者に提示された実物の縮小模型である。


切貫樋門の園路に沿って歩いている。
敷地の端が若干周囲よりも低く、真砂土で埋め戻そうとする状況になっていた。ここに何があったのかは…思い出せない。


上の写真では端に丁張が見えている。この相棒を探したが見当たらなかったし桟木に釘は打たれていなかったので、敷地の切土位置と高さの控えだろうか。

平日でそれほど天気も良くないせいか園内を散歩する人はそう多くはない。
それでも改修工事に足を止めて眺める人は結構いた。


園路に面する階段は塞がれていた。
この階段は造り直しが要ると思っていたが厨房棟の基礎の位置からすればその必要はないかも知れない。


以前はこの階段を降りると古民家の玄関が斜め正面に見える位置関係だった。計画では階段を降りた場所に厨房棟があり、しかも厨房棟の出入り口となるスロープは反対側に着くため、あまり使われない階段となるかも知れないと思ったのである。
階段の一番下から厨房棟までは結構離れているので横を回り込める。それでもスロープのある出入口は既存の階段側にあった方が便利かも知れない。

常盤水路の上溝との位置関係。
上溝の通る高さが最初期の地盤高だったので、低いとは言っても元々の憩いの家も結構地上げして建てていたことが分かる。


基礎部分の全体像。
左側のコンクリート基礎の上に奥の古民家が鎮座することになる。かなり池側に近づくことが実感できるだろう。


古民家・厨房棟共にコンクリートのベタ基礎になる。昭和期の施工では周囲を建築ブロックで造って内部はそのままにしていた。時に材料の切れ端が放置されることもあってシロアリを呼び込む原因にもなっていた。近年はさすがにそんな粗雑な施工はない。

追加設置される厨房棟の基礎部分のズーム。
古民家がある場所とは数十センチの段差がついているのが分かる。この部分が地上げ代だ。


ワークショップでも明らかにされていたように、古民家では火の気を使用できない。茅葺き屋根を残すための制約であり、このことから別途煮炊きに必要な厨房棟を離れに造ることとなっている。離れにはバリアフリー仕様のトイレ併設も予定されている。

厨房棟は新築だから技術的に難しいものはないが、水回りが集中するため上下水の配管などコストはかかるだろう。古民家側は既存の茅葺き民家を基礎の上へ載せるだけだが、技術的な難しさがありそうだ。移した後は保たれるのは柱など骨組み構造程度で、内部の畳や板の間は全部新しいものとなる。茅葺き仕様は温存するとは言っても茅自体は葺き替えられる。この出来映えは憩いの家リニューアルがどう評価されるかの最大要因になり得る。

現在の茅葺きはかなり濃い茶色を呈している。これは素材の経年変化もさることながら、かつて現役時代に囲炉裏を用いて煮炊きしたことで煙により燻された結果と言われている。燻蒸効果は茅葺きを重みのある色調に変えるだけではなく、防水防虫にもある程度寄与していたという。
もし茅葺き素材を全て新しいものに取り替えたなら、色調はかなり明るくなりそうだ。そうなれば重みが感じられない、軽いといった声があがるかも知れない。それでも茅葺き仕様を保持したまま修復されるのは嬉しいことであり、使われないまま倒壊寸前まで現状維持されるよりはずっとマシだ。茅葺き屋根には穴が開いて内部から空が見える状態であり、雨が降れば直接降り込むので周囲の畳などが外されていたのである。[2]

再びときわミュージアム側へ戻って撮影している。
ここは定期的に訪れて進捗状況を記録しておきたいと思う。


下部構造のズーム撮影。
すべての柱が養生された上でジャッキアップされている。本当に骨組み部分だけで自立している感じだ。


そうそう…これを言い出したらもしかすると困ったことに気づかれたと思われるかも知れないのだが、
石灯籠や記念碑は何処へ行ったの?
古民家の玄関より西側に大きな石灯籠と三九クラス会十周年記念樹と彫られた石碑があったことは総括記事でも写真付きで記述している。これらは新築される厨房棟の位置にあたるため別の場所へ移動されたようだ。少なくとも敷地近くには見当たらなかった。植わっていたぼたんと共に圃場へ移されたのだろうか。
ぼたんを圃場へ移植したことは看板で案内されている

石灯籠なども遠くへ移したとなれば、再度ここへ戻されるかどうかは改修工事が終わった後で再度据えられるスペースがあるかどうかの問題になりそうだ。3月末が工期となっている[3]ので、それまで可能な限り訪れて記録する予定である。続編が書き上がったら以下のリンクと更新通知で案内する。
総括記事も閉鎖されている当時の状況の記述で古くなっているので書き換える予定

(「常盤公園・憩いの家改修工事【2】」へ続く)
出典および編集追記:

1.「FBページ|2017/1/18の投稿(要ログイン)

2. 屋根の開口部にブルーシートが被せられたのはワークショップ終了後の2016年6月以降である。

3. その後改修工事の工期が10月まで延伸されている。

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