古原田池

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記事作成日:2014/5/7
記事編集日:2016/11/16
古原田(ふらんだ)池[1]は東岐波区の南端にある溜め池で、上下2つの池に分かれている。名称は溜め池のある小字の古原田に由来する。(末尾の項目を参照
本編は総括記事として上下池を概説している。それぞれの池については項目に設定されたリンクを参照。また、古原田という地名の読みに関しては末尾の節に記載している。
上古原田池
堰堤から撮影した上池の眺望。
正面に見えるのは宇部興産中央病院である。


余水吐を中心にポイントした地図。


地図でも分かるように、上池は周囲が入り組んだ複雑な形をしている。南方と東方に伸びる3つの沢地を幅広の堰堤部分で締め切ることにより形成されている。
余水吐は堰堤の東端にあり、下池との高低差は10m近くある。堰堤は緩やかに湾曲していて200m近い幅をもつ。複数の沢地を締め切っていながら高く長い堰堤で水を溜める谷池と皿池の中間のような形態をしている。

入り江部分は原生林に覆われている。一部すぐ近くまで住宅地となっている以外、堰堤以外に溜め池へ接近できる場所はなさそうだ。
個人的関わりは、十数年前に仕事でこの溜め池と思われる場所の近くまで訪れただけである。

古原田上池の写真をFacebookページで紹介したところ、南岸に一対のプール飛び込み台のような遺構が半ば水没した状態で存在しているという情報が複数の読者から寄せられた。
写真は民家の進入路途中から当該物件を撮影している


かつて池を利用して造られた簡易プールの飛び込み台ではないかという意見が出ているが、造られた時期や経緯はまだ明らかになっていない。
本件を受けて再度上池を訪れ南岸を含めた調査を行った。詳細は以下の記事を参照。3巻構成。
派生記事: 上古原田池【1】
本件は未解決物件であったが、その後屋外に造られたプールの折り返し部分のみを池の中に設置した構造物(ターニング台)であることが明らかになった。
下古原田池
堰堤から上池方向を撮影している。
ここからでもなお中央病院が見えている。


余水吐を中心にポイントした地図。


下池は三日月状に湾曲した形をしており、堰堤上を市道横尾山線が通じている。堰堤の高さは上池よりやや低い。上池からの余剰水を流す水路が繋がっているものの、水路に沿って下池へ到達する道はない。また、下池に関しては上池以上に個人的関わりがない。

今のところ古原田池の成り立ちや築堤時期などは不明である。ただ、上池の堰堤を見る限りではかなり規模が大きく、築堤は大工事だったのではと想像される。下池の堰堤は平成期に改修されたらしく記念の石碑が下池の堰堤上余水吐付近に設置されている。
《 古原田について 》
古原田(ふらんだ)は東岐波区の丸尾付近に存在する小字で、概ね現在の上古原田池を含む。前もって知っておかなければまず正しく読めない地名と言えるだろう。


原田という小字であれば市内でも複数箇所に観測される。鵜の島付近には北原田、沖原田といった派生的小字も存在していた。それらは恐らく「きたはらだ」「おきはらだ」の如く順当な読み方をされる。しかし古原田は常に「ふらんだ」と読まれそれ以外の読まれ方は存在しないようである。

地名の興りは発音先行で後から適当な漢字表記が宛がわれることが多い。他方、一部の地名には漢字表記先行のものがあり、神田(かんだ・じんで)が一つの例である。「神に捧げる米を造る田」が大元であり、異なる場所が同じ読みだと混乱するからか表記はそのままで読み替えが多い。古原田も同等な表記先行由来の地名だろう。即ち「ふらんだ」と読まれるような地名が自然発生して今の漢字が宛てられたのではなく「原田と呼ばれる大元の場所」が存在し、発音の揺らぎによって現在に至ったのではないかと思える。地名に「古」がつく場合は概ね「元々の場所、最初の地」のような意味合いがあるからだ。[2]

もしそうだと仮定するなら、当初は恐らくそのまま「ふるはらだ」と読まれただろう。しかし地名に五音節は長い部類でありしかもラ音が重なる間に省略されやすい摩擦音系のハ行の音が挿入されている。このため「る」と「ら」が一音化または長音化し、簡単に発音できる鼻音の「ん」に置き換わったのだろうか。
古原田と近い音を持つ地名として、美祢市西厚保町に平沼田(ひらんだ・ひらんた)がある。この地名も表記先行型の由来ではないかと考えている。

東岐波校区のホームページ情報によると、西岐波校区との境にある古原田池のことを指して「ふらんだ」と呼ぶと方言カテゴリの情報として紹介されている。[3]このことより、古原田という小字ではなく上池に限定して慣用的な読みが定着した可能性がある。
読者コメントで古原という地名ないしは大地主が存在し「ふるはらの田」が転じて「ふるはらんだ」→「ふらんだ」と変化したのかも知れないという指摘を頂いている。[4]助詞の「の」は、口語においてしばしば「ん」に置換される傾向を勘案すると充分に考えられる。
また、東岐波小学校の副読本として制作されたと思われる「ふるさと東岐波」(東岐波小学校郷土誌編集委員会)の p.2 に「ふるあんだ」という振り仮名を記載した部分がある。[5]現在も「ふらんだ」の読みが大勢な中、この書籍の通りの「ふるあんだ」と呼んでいたという読者の報告もある。[6]

溜め池の管理者および市の担当部署が古原田池をどのように呼んでいるかは興味の対象である。この件について情報が得られたなら追記する。
出典および編集追記:

* 地名明細書には東岐波村の古殿小村に古原田小名が記載されているが、読みは率直な「ふるはらた」となっている。したがって現在の特異な読み方の変化は比較的後年のものかも知れない。(2015/9/18)

1. 大津出町内会案内板の地図に描かれた古原田池に「フランダ」の振り仮名が記載されている。

2. 古原田に隣接はしていないが、吉田と柳ヶ瀬の間に原田という小字がみられる。

3.「『ふ』から始まる東岐波の方言

4.「Facebookページ|5月15日投稿分(要ログイン)

5.「FB|2016/11/15のタイムライン(要ログイン)

6.「FBページ|2016/11/15の投稿(要ログイン)

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