こっとう池

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現地踏査日:2014/11/30
記事公開日:2014/12/5
こっとう池は、上宇部校区の上高田にある溜め池である。
写真は堰堤からの撮影。


下の地図は、こっとう池の余水吐を中心にポイントしている。


こっとう池の名称は一般の地図には記載されていない。しかし上宇部校区では古くから知られているらしく史跡マップに記載がみられる。[1]また、宇部市が作成している市内31ヶ所のため池ハザードマップの一つに挙げられている。[2]
《 アクセス 》
この溜め池は現在農業用としては使われていないかも知れない。堰堤まで到達する明確な経路が存在せず、地元管理の上高田公園の裏手から僅かに堰堤が見えるのみである。
上流側は赤岸池と繋がっている筈だが経路は知られていない。

直接の関連性はないが同じ日に一つ尾根を隔てた沢地にある化粧田池を踏査している。同様に話題が少なく再訪のあてがないので、引き続き踏査時の時系列レポートを記述する。

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前述のようにこの溜め池の堰堤へ接近する道はなさそうだった。
最初時雨川を遡行するこの道に入ったもののすぐ民家の裏側で行き止まりになっていて無駄足になった

上高田公園の奥からは堰堤が見えている。フェンスの外側は荒れ地だ。
まったく道がない代わりに沼地ではなくどうにか進攻はできそうだった。


誠にお行儀が悪く子どもには見せられないのだが、やむなく公園のフェンスを跨ぎ越して外側に出た。
膝下まで隠れるほどの雑草の海だ。今の時期だからヘビの尻尾を踏んづける心配はないにしてもズボンにほいとがくっつくのは嫌だなーと思いつつ…

堰堤の真下まで到達した。
公園からも見えていたことに、この溜め池の堰堤はどういう訳か全体が土木シートのようなもので覆われている。


堰堤の中央に取り出し口があるらしく少量の水を排出していた。
溜め池を出た水は今しがた苦労して横切ってきた荒れ地の山際にある水路を流れていた。


さて、ここまで来たのだから当然堰堤の上に登るとして…一歩足を踏み出してすぐ感じた。
何だか、見るからに滑りそうだなぁ…


シートは不織布のような材質で割と足掛かりは良いように思われた。しかし地面へ密着して敷かれているため地中からの水分を吸い上げて全体が湿っていた。堰堤の傾斜は結構きつい。両手両足をフル稼働して登るにしても滑り落ちるのではという懸念が払拭できなかった。
仮に足元が滑ったとして大怪我はしない。精々ズボンが酷いことになる程度だ。だがこんな所へ入り込んで遊び事をやっている場合ではない。まして堰堤の正面には民家が並んでいる。家に誰か居るなら、一体何が始まるのだろう…と窓越しに私の方を観察している視線がありそうな気配を感じた。溜め池の写真を撮りに来ているのだ…という目的を理解してもらうには堂々としていなくてはならない…
そういう問題か?という気がしなくもない…^^;

それはさておき踏査では絶対に怪我をしてはならない。少しでも安全な場所を探した結果、余水吐横の藪が堰堤登攀ルートの候補にあがった。
右側の水路状のものは余水吐からの走水路である…急斜面なのでもちろん登れない


普通なら藪は避けたいところだが、適度に木々の枝が伸びているのが助けになった。

それでも最後まで気が抜けない。シートは充分に水分を蓄えており、表面には苔がびっしり着いていた。


初めて目にしたこっとう池の様子。
そして殆どの読者も市民も私と同じ体験をしただろう。


堰堤の端から撮影している。
中央に斜樋が設置されているらしく、金網のようなものが見えていた。


堰堤の真上も全部シートで覆われている。滑る心配はないが足元がフワフワしていて如何にも不安定だ。
池の両側から木々が枝を張り出しているので、それらを避けて眺めが効きそうな場所へ移動した。

中央やや右岸寄りから撮影している。
水位が低い。溜め池と言うよりはもはや湿地帯だ。殆ど全体が葦のような水生植物で覆われている。


ちょっとズームしてみた。
時期柄殆どが枯れて水面に倒れている。勝手に生えては勝手に倒れて池を埋める…を延々繰り返しているのだろう。


池の奥をズームで窺ってみた。
到達できそうな道はいっさいない。上流側は葦もしゃんと立っているので殆ど陸地化しているのではないだろうか。


ステンレス製の枠に網を被せて木の葉などが入らないようにしている。
その内側に古くからあったと思われる石の樋が見えていた。
ズーム撮影画像はこちら


堰堤下の様子。
一定距離を置いて住宅が建ち並んでいる。
これほど近いのだから在宅中であれば何をしているのだろうと窓越しに眺められるだろう…


化粧田池と違いこっとう池では余水吐を介して岸辺まで接近できそうだ。
写真は余水吐から下流側を写している。


コンクリート造りの余水吐なので足元を気にする心配は要らなかった。
しかしコンクリート床版から池の部分に足を降ろすときはさすがに気を遣った。


水上に現れて充分な期間が経っているのだろうか。足元はしっかりしていた。
堰堤部には少しばかり石積みが見られた。


堰堤下を補強するためだろうか。木の杭が見えていた。


この杭というか補強の仕方には子どもの頃見た覚えがある。池の縁や小川で崩れやすい部分に杭を打ち、細い竹を半割りにしたものを杭の間へ編み物をするように交互に通し、一枚物の柵のように仕立てたものを見かけた。
多分あれの痕跡だろう。経年変化で朽ちて土に還るし最近は新規にそういうものを造らないから現在残っているものは殆どないだろう。

堰堤の高さの割には池の底が高い。溜め池ができて相当年数が経って浅くなってしまったのだろう。


接近可能な限界まで岸辺に寄って撮影した一枚。
あまりにも浅くなったせいか魚類などの姿は見かけなかった。


帰りも余水吐横の堰堤を注意深く降り、荒れ地を横切って再びフェンスを跨ぎ越した。
名前や由来に興味があるものの再訪することは恐らくないだろう。
《 個人的関わり 》
常盤用水路のNo.3サイフォンの排泥桝の位置を調べるために時雨川を辿ったとき上高田公園まで訪れ、その奥に溜め池があることを確認し写真も撮っている。ただしそのときは名称は分かっていなかった。
《 こっとうについて 》
本溜め池の名前である「こっとう」の意味するものは現在のところ何も分からない。そのような小字は存在しない。
音感的にはやや高田(こうだ)に近いとは言っても読みの揺らぎ程度で説明できる変化ではなく、何か地名とは別の由来を持つような感じである。

地図で以前「コットウ鼻」と表記された岬を見かけた気がする。書籍では小野田に存在すると書かれていた。しかし地図を見ても何処か分からなかった。
琴芝の項目でも述べているように、音としての「こと」は地勢的には海や平野部に向かって突き出た岬や突端、崖地を意味することがある。これは琴崎八幡宮の元となった琴崎には地勢的に当てはまるが、こっとう池に対しては名称の由来になっているとは言い難い。
出典および編集追記:

1.「上宇部史跡マップ」に赤岸池の西にある小さな溜め池として記載されている。
実際には赤岸池の西には2つの溜め池があるが、このうち北側にあるのは(まだ詳細には確認されていないが)古くからある溜め池ではなくひらき台を造成したとき設置された調整池である。
時雨川の上流がこの調整池ではなく上流の沢へ向かっていることから

2.「宇部市ため池ハザードマップ」(PDFファイル

3.「FB|11月29日のタイムライン」より。(要ログイン)

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