夫婦池・本土手【2】

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現地踏査日:2012/3/9
      2012/3/25
記事編集日:2013/1/24

時系列としては夫婦池の未踏査区間の汀調査を終え、半ばアジトへ帰る段取りで国道190号へ向かっていたときのことになる。

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常盤公園入口交差点から国道を渡り、塚穴川の国道横断部から先を辿るためにこの場所にやってきた。
しかしこの本土手の下流側が気になったし、未だ詳細な写真を撮っていなかったので寄り道することにした。


この場所はこの日最初に訪れた夫婦池・塚穴川接続部の反対側にあたる。
距離標補助(16K500)のある少し先から歩道幅が若干狭くなっている。その外側に歩道拡幅以前の古い柵を見つけた。
元の歩道は現在のより一段低くなっており、転落防止柵も低くて貧弱である。歩道の外側の木々がここまで伸びてきていた。


通行人があるのでちょっと躊躇われたが、そこは踏査目的だ。ガードパイプをかわしてその内側に入った。
既に時刻は午後5時近くで、下校中の子どもたちが居ないのが幸いだった。


歩道の手すり部分の支柱は、何と廃レールの再利用だった。レールを歩道支持部分のコンクリート擁壁に取り付け、そこに単管パイプを柵代わりに3本掛けている。
国道関連の付帯設備に鉄道関連の資材が流用されている…今となってはあり得ない話だ。あるいはレールに見えるだけで元々道路管理者が保有していた資材を流用したのだろうか。


古い柵を撤去しないままにその内側へ4本掛けの転落防止柵が設置されていた。
国土交通省管轄における転落防止柵の仕様は4本掛けに変更された…今は建設省時代のものを除いて3本掛けは残っていないだろう…


古い柵を残さず、そこまでアスファルト舗装して新規に転落防止柵を設置すれば歩道を広く使えるだろう。
後になって思うにそうしなかった理由は恐らくこの2つ…一つは現状でも歩道幅が充分に確保されているので敢えて拡げるメリットがないということ…

そしてもう一つは…
この本土手の特質に起因すると思われることなのだが…


柵の外側は物凄い急斜面…


歩道の際まで木々が伸びている現在では、この場所から海はもちろん塚穴川の下流部はまったく見えない。この場所に堰堤があり、かつては広く深い沢だったことを体感しづらい原因になっている。

盛土による堰堤だからコンクリートによるダムほど危険性はない。しかし堰堤の傾斜はかなりきつく、しかも高低差が物凄い。この柵から眺めても垂直高で5m以上あった。いくら土の斜面とは言っても転落時の姿勢によっては一番下まで転がり落ちてしまうだろう。
古い防護柵を撤去し歩道を拡げなかったのは、安全面にも留意したのではないかと感じられた。

手すりの堅牢性を信じて、身体を預け身を乗り出して歩道の下を撮影してみた。
歩道は張り出し式で、築堤幅の足りない部分を桟橋形式で補って造られていた。
この国道沿いには今も若干このタイプの歩道が遺っている


この歩道の外側が結構深い谷のようになっていることは、初めてこの歩道を自転車で通った3年くらい前から知っていた。その頃から既に木々が生い茂り、柵から外を覗き込まなければ状況が分からなかった。

隔離された古い歩道部分を端まで歩いてみた。
沢は常盤公園入口交差点の反対側にある車屋のところで終わっている。


柵と車屋の間に沢の方へ降りていく踏み跡があった。
ここが元の沢の端にあたるのだろうか…


この近辺は藪の繁茂が尋常でない。何処に地面があるかすら分からない位だった。


あまりに壮大な混沌状態なので原典ファイルを載せてみた。
拡大してどれほど酷い藪がご覧頂こうか。拡大対象画像です。
画像にマウスをかざすと拡大、ダブルクリックで最大化します。
クリックすれば元のサイズに戻ります。


沢の下が見通せる場所がないか踏み跡を少したどった。
電信柱のつっかい棒がある近くで藪がやや薄く見通せる場所があった。


かなり下の方に溜まり水が見えた。目測で高低差は10m程度。このあたりが本土手で一番高低差のついている場所ではなかろうか。


枯れ木やゴミなどが沢の斜面を覆っている。
正面やや左側にある2本の木の左側あたりから古い堰堤らしきものが見える。肉眼では分かるのだが…


その部分をズーム撮影。
傾斜のつき方からして盛土ではなく石垣のように見える。ズームで捕らえるのが精一杯で近づく方法はない。


もしかして大正期に夫婦池が造られ、その後堰堤上に道を通すために補強した最初の施工ではなかろうか。少なくともあの張り出し歩道よりはずっと古いはずだ。
現在の国道に付随する歩道はこの石積みより遙かに高い場所を通っている。その時期に合わせて造ったなら、こんな中途半端な高さの石積みにはならない。

この付近の地勢を調べるなら国土地理院地図の方が等高線が表示されていて分かりやすい。


国道190号は夫婦池の本土手に更に土を盛る形で通されている。塚穴川を渡る名前もない橋(と言うかボックスカルバート)を渡るだけで、目立った橋はない。
道行くドライバーは殆ど近辺の景色に頓着しないし、精々ここから常盤池の延長のような池が眼下に見える程度の認識しかないだろう。

しかし国土地理院の地図を眺めると、国道は大きく深い沢を渡るように表示されている。等高線が本土手の手前で折り返していることからも分かるだろう。
そして実際、夫婦池が造られる以前は、対岸に渡るのに高低差のある谷底まで降りなければならない沢だった筈だ。もし大正期に夫婦池が造られず常盤池から流下する塚穴川が元のままだったなら、この場所に国道を通すのに長さ100m以上、谷底までの高さが10m近い橋を架けなければならなかっただろう。

堰堤の高さを知るために、先の平場まで出てみた。


現在の塚穴川は、広い沢の東側に寄った部分を流れている。もっともそれは夫婦池以後に整備されたものだから、かつてはこの広い沢で別の場所を流れていた可能性がある。
視座と塚穴川との高低差は10m程度あるだろうか。


振り返って撮影。
国道との高低差は3m程度だから、現在の国道は塚穴川の流れる谷の10m以上高い場所を通っていることになるわけだ。


夫婦池の標準的な湛水面は国道より3m程度低い。しかし本土手が造られる以前は夫婦池側の谷底も同じ程度の深さがあると考えられる。


現在は押し黙った池の水に隠されているから見えないだけだ。夫婦池の最深部分で10mを超える場所があるかも知れないと考える理由である。

先に藪の隙間から垣間見えた古い堰堤らしき石積みが気になる。しかし今の時期ですら藪が酷い上に現地は極めて急峻な斜面で降りていく場所もまったく見あたらないことから、接近は絶望的と思う。
たまさか現地へ赴くなど新たな展開があれば続編を書くが、恐らく本記事に関しては追記レベル以上の報告をお約束できないだろう。

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2016年の梅雨時のこと、常盤池が満水位の状態から短期の豪雨に見舞われ近年ないほどの流水がみられた。一連のレポートを常盤池の余水吐から時系列で記述した。本編からも後続記事としてリンク案内する。

(「夫婦池・本土手【3】」へ続く)

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