面河内池【序】

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現地踏査日:2013/2/20
記事公開日:2013/4/14
面河内(おもごうち)池は、2級河川中山川の上流にある溜め池である。


下の地図は、面河内池の堰堤にある余水吐を中心にポイントしている。


冒頭の写真は堰堤からの撮影である。そのことから示唆されるようにこの記事を書き始める現時点で面河内池の堰堤へ到達し写真撮影は完了している。
しかしこの溜め池の踏査は見かけ以上に困難を極めた。その原因の大半は思いこみと準備不足に帰せられるものだったが、真に困難な要素もあった。この序編では失敗に終わった初回踏査を収録し、第二次踏査からを本編としている。本編は「面河内池【1】」から読み始めることができる。

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馬の背堤として知られる3つの溜め池の踏査を完了したので、次の踏査ターゲットは尾根一つ隔てて存在する面河内池に向けられた。
いずれ記事で詳細に述べる積もりだが、蛇瀬川と中山川は流域の「力関係」において興味深い仮説が立てられている。その記事に取りかかる前の下準備としても面河内池の写真が必要だった。
白岩公園の記事を先行公開している関係からも本物件の記述が急がれた

県道琴芝際波線に沿って流れる中山川は、中山観音のところで県道とは逆方向の北へ伸びている。市道門前馬の背線を経て登山道の中山観音コースによって到達できる馬の背池よりはずっと近い。中山観音の入口にあたる門前橋付近に県管理とされる上流端があり、地図で観る限り面河内池の堰堤は直線距離で500m以下である。中山観音の駐車場に車を留め置けるので「すぐ行ける場所」と考えられむしろ踏査が先送りになっていた。

馬の背池の踏査を終えて一週間後のこと、好天に誘われて私は一仕事終えた折に中山観音を訪れていた。中山川の上流端から遡行して面河内池を踏査し、引き続き蛇瀬川の上流部を撮影しようと計画していた。

市道門前馬の背線沿いで廣福寺を過ぎたすぐの所に北へ向かう分岐がある。


この場所を拡大地図で示している。


中山川が向かっている沢と同じ方に伸びる道と言えばこれしかない。地図では途中で記載が切れているが、それほど問題視していなかった。車の入れる道が存在しないだけで登山道程度の経路があると考えていたからだ。

馬の背池に向かうために市道門前馬の背線は何度も歩いたがこの分岐へ入るのは今回が初めてだった。


一軒の民家を前に道は未舗装路となった。そのこと自体は想定の範囲内だったのだが…何だか先行きが怪しくなってきた。
もしかして…道がない?


一本道は民家の庭先へ入り込んでいた。その横を通って更に山側へ向かう道が…なさそうな気がする。

そんな筈もないだろうと更にちょっとだけ進攻したのだが…
本当に道がなかった。どう見てもここから先は民家の庭だ。


不審者の臭いを発散させてしまう前に引き返した。その途中で何処か枝道が出ていないか調べたがそのような経路はまったくなかった。

いや…いつでも行ける溜め池だとは言いながらどうも様子がおかしいという感じはしていた。
中山川が向かっている沢にはみっしりと民家が詰まっていてまったく道がなさそうに思われたからだ。

市道門前馬の背線が最後に中山川を横切る場所である。
この辺りではコンクリート水路同然でかなり勾配がきつい。両側には管理道は存在しない。


先の方を眺めても道がないことが示唆される。
軽トラが往来する道どころか人が歩いて行ける山道すら見あたらない。


水路の天端を歩けばある程度までは先に進めるだろう。両脇に民家が並ぶ中でそんな怪しい振る舞いなどできなかった。まだ直接水路の中を歩いた方が目立たない位だ。
もっともカメラ片手に長靴装備で水路の中を歩く人の方がもっと不審者だが…^^;

道がないというのも奇妙な話である。コンクリート水路を拵えた以上、資材を搬入する道が要る筈だ。
先の拡大地図には確かに道が描かれていない。その代わり余水吐付近から中山観音の北側へ道のようなものが記載されている。それもどういう訳か何処にも繋がっていない道だ。実際にそうなっているわけがなく、どうも地図があまり参考にならないということは踏査前から感じていた。

先述の通り、この日は蛇瀬川の上流端から写真を撮りつつ下ることも計画していた。そこで取りあえず再び馬の背堤の新堤に向かう例の道を歩いた。その途中から面河内池に向かう山道の分岐を見つけられるかも知れないと思ったからだ。

結論として馬の背池に到達するまで面河内池の方へ向かう山道にはまったく出会わなかった。

唯一可能性として有り得るのが、新堤の堰堤上を辿って西に向かう経路である。それは昭和中期の国土画像情報では明瞭に観測され、道があったらしいことを示唆していた。
現状はほぼ完全に自然へ還っており踏み跡の痕跡すら見つからない状態なのは先週に確認済みだった。


池の西側から攻める道しかないらしい…
地図では県道から分岐し常盤用水路を横切って面河内池近くに向かう道がいくつか見られる。常盤用水路の踏査時に通ったことのある道もあった。
そこで蛇瀬川を下りつつ写真撮影した後、今度は県道に沿って歩き、何度か通って覚えていた細い道に入った。
その入口は以下の地図にポイントされた場所であった。


地図では表記されていないだけで、この細い道は常盤用水路の上を跨いで更に山へ伸びている。ところが…

失敗に終わったので多くは語らないが、一つ手前の間違った分岐に入り込んでしまったため道に迷い、彷徨っているうちに結局中山観音の上にある八十八箇所に戻ってきてしまった。偶然とは言え八十八箇所を訪れたのは初めてで、藪から山道に出てきた先で夥しい数の祠を目にして何とも言えない奇特な雰囲気だった。
かなり山歩きしたことだし足にも堪えていた。そこで再度ちゃんと地図を参照した上で出直そうと考え、この日は一旦撤収した。

第二次踏査はその2日後に行われることとなった。

(「面河内池【1】」へ続く)

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