岩鼻駅

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記事作成日:2021/4/8
最終編集日:2022/4/5
岩鼻(いわはな)駅はJR宇部線の駅の一つで、岩鼻町1にある。
写真は正面から見た駅舎。


位置図を示す。


岩鼻駅の歴史や構造など一般事項については、[1]を参照されたい。ここでは重複しない項目について記述する。
《 概要 》
冒頭の写真で駅舎のすぐ右側に線路が見えていることから分かるように、駅舎の出入口が線路と平行になっている特殊な構造である。これは駅が厚東川へ張り出した尾根の中腹にあって平坦地が充分に確保できない地形に依る。

駅に向かうには駅に接続する路地(市道岩鼻駅線)からスロープを登ることとなる。
駅舎の後は高さ3メートル程度の崖となっている。


岩鼻駅は市内にあるJR宇部線の中で、車での到達がもっとも困難な駅である。駅前を通る昔からの道(市道平原厚東川線)は離合困難な狭い幅で延々と続き、駅前も駐車スペースがまったくないどころか、送迎目的で駅の下まで乗り入れると転回が非常に困難である。このため駅の利用者は徒歩圏の在住者か自転車通学する学生に限定される。

駅舎は木造平屋で、待合室と既に使われていない駅長室が一体化した旧琴芝駅の駅舎と同様な構造である。
出入口に扉がなく改札口も同様なため冬期はかなり寒いと思われる。


学生利用者の多い古い駅舎にありがちなことだが、待合室の壁には落書きが遺されている。同種のものは旧琴芝駅の駅舎にもみられた。

岩鼻駅は離合可能な構造で、上り列車の乗り降りには陸橋を渡る。
ホームのすぐ裏が切り通しとなっている。


岩鼻公園より撮影。
斜面の真上に園路が通っているので、駅を見下ろす位置まで接近できる。この位置は駅の陸橋よりも高い。


ホームの端より宇部駅側を撮影。
厚東川を渡るためにこれより先更に高度を上げている。


陸橋付近より小郡駅側を向いて撮影。
斜面を削って線路を通している様子がよく分かる。


岩鼻公園側の斜面はコンクリートで固められている。
直高が5mをはるかに超えていながら単一斜面で構成され、四角い水抜き孔が至る所に空いていることに時代を感じさせる。


これほど高い斜面なので、小郡方面へ向かう列車が岩鼻駅に停車している間、車窓からはこのコンクリート壁しか見えない。その特異な光景自体が岩鼻駅を特徴づけていると考える人も居る。

上り線ホームの端には、かつて使われていた構内踏切の痕跡が今も遺る。
ただし線路の踏み板は取り除かれ、ホームから直接行けないようにネットフェンスで塞がれている。


ホームより東側を撮影。
先の方で緩やかにカーブしているが、最初期にはもう少し直線で伸びてから曲がっていた。


岩鼻駅は最初期である宇部軽便鉄道時代には停留所として開設されている。このときから駅とその前後100m程度は当時の線形をそのまま辿っている。換言すれば、それより東側も西側も新線の建設や線形改良により最初期とは異なるルートを通っている。東側は昔の線路敷の多くが市道に転用されているが、西側は現在もJR西日本の社有地として遺っている。詳細は岩鼻駅西側の線形改良を参照。
先行してサンデーうべのコラムでは Vol.29で「宇部線の線形改良跡」として紹介している

駅舎までのスロープには駐輪場が設けられている。
時期は不明だが2016年から2020年までの間に設置された。


駐輪場の整備以前は、駅舎への通路部分しか舗装されておらず自転車はフェンスに寄せて適当に停められていた。風に煽られて自転車がなぎ倒されるなどの問題があったのだろう。スロープの途中まで設置されていたネットフェンスもこのとき一番下まで延長設置された。

駅舎への往来として、徒歩限定の裏通路がある。
駅舎の裏側にコンクリート階段があり、この近くに自転車を停めて歩く利用者もある。


この裏路地から駅舎辺りまではあまり手が加わっておらず、昔ながらの構造物がみられる。駅舎自体もかなり古いので、今後は旧琴芝駅の駅舎と同じように取り壊され待合室のみの形式になるかも知れない。

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居能駅宇部駅

《 近年の話題 》
この総括記事が初版なので、把握している限りでの近年の変化を記録している。

2016〜2020年までに駅舎スロープの線路側に駐輪場が整備された。駅舎に向かうスロープの途中までしかなかったネットフェンスも延長された。
【 駅ノート 】
2020年の始め頃、使われなくなった券売窓口のところに”駅ノート”なるものが置かれていた。[2]


設置者は不明で、ノートはクリアファイルに入れられ誰でも書き込めるようになっていた。書かれた内容は落書きが多いものの、中には忘れ物と思しきものを落とし主に伝える内容もあった。

この駅ノートは駅舎などの落書き抑制に貢献した可能性がある。内容的に面白いので私もお忍びで書き込みステートナンバーを遺している。2020年の後半には No.3 まで発行されていたが、2021年2月に訪れたときには駅ノートがなくなっていた。管理主が卒業するなどして片付けたのかも知れない。
【 昔の駅の位置について 】
・2022年3月に現地在住者からの聞き取りで、初期の岩鼻駅は現在よりも西寄りだったことが判明した。位置は現在岩鼻公園に上がる道のある岩鼻西踏切付近ということであった。

昭和12年に制作された宇部市街図では、確かに岩鼻駅が現在位置よりも西側に記載されている。 現在の駅は、前面道路から少しループしているすぐ西側にある。


岩鼻西踏切は昭和30年代半ばの線形改良の東の端にあたる。踏切の西側には線形改良とは直接の関係がなさそうな待避線が遺っているが、これは初期の岩鼻駅の一部かも知れない。
出典および編集追記:

1.「Wikipedia - 岩鼻駅

2. 正確な時期は不明。冒頭の Google map において駅ノートの存在を指摘するレビューがみられる。
《 個人的関わり 》
幼少期から学生時代まで宇部線を利用した短い間でも、岩鼻駅は乗ったまま通過するだけの駅だった。このため個人的関わりは殆どない。
注意以下には長文に及ぶ個人的関わりが記述されています。レイアウト保持のため既定で非表示にしています。お読みいただくには「閲覧する」ボタンを押してください。

無用なアップダウンを避けて宇部駅方面へ自転車で行く場合、岩鼻駅下を通る市道平原厚東川線は第一選択である。このため駅に変化が起きた場合に気付くことが容易である。琴芝駅の駅舎簡素化を見れば次は岩鼻駅かも知れないと想像がつく。改修の情報をキャッチすれば継続監視対象になるだろう。
《 地名としての岩鼻について 》
暫定的に岩鼻駅のこの総括記事に収録している。記述内容が増えれば本項目を分割し独立記事として地名カテゴリへ移動する。

岩鼻(いわはな)は駅周辺の地名で、平成14年7月22日施行の第31次住居表示で岩鼻町となっている。駅舎の所在地は岩鼻町1-1である。
写真は駅名プレート。


駅名の存在により、岩鼻の知名度は高い。駅の裏側山手にある岩鼻公園は花見の名所として著名である。しかし住居表示以前の小字絵図を参照すると、字名としての岩鼻は存在しない。現在の駅がある周辺も字松崎(資料によっては松崎三)となっている。

地名明細書を参照すると、藤曲村にある居能浦小村に岩鼻(いわばな)という小字が記されている。興味深いことに同じく独立して松崎(まつさき)という小字が収録されている。現在では「いわな」「まつき」と濁点の有無が昔とは逆転している。
【 岩鼻の由来 】
岩鼻の「はな」は、明白に先端を意味する。ここでは海に出っ張った岬である。岬そのものも下関市の岬之町(はなのちょう)のような読まれ方をする。取りかかりのことを「初っ端(しょっぱな)」と表現するし、植物の花(はな)も全体の先端に位置することが由来と考える人も居る。韓国語で1つを意味する 하나 も同じ由来かも知れない。

同じ藤山地区に花河内(はながわち・はなごうち)という地名が存在する。地名明細書では鼻河内と書かれており、これも「海に突き出た谷地」の義と考えられる。この書き換えから、岩鼻も後年「岩花」と表記される可能性はあっただろう。

市内には他にも「はな」の読みを含む地名は(東岐波の花園のように)いくつか存在する。そのいずれもが「端にある〜」の義であると考える。音としては同じでありながら、市内のよく知られる地名で漢字表記で「鼻」を当てているのは岩鼻だけである。

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