鉄道の跨線橋が抱える問題

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記事作成日:2018/6/15
最終編集日:2018/7/15
ここでは、鉄道の上部を跨いで設置される各種構造物の抱える問題について記述する。この問題自体は一般論だが、対象とする構造物は市内のものに限定している。即ちこの記事においてローカル線とは宇部線と小野田線、在来線とはローカル線と山陽本線を合わせた呼称、新幹線とは山陽新幹線、そして鉄道とはそれらの包括的呼称を意味する。
《 問題の所在 》
鉄道に対し、物資や人が往来する動線を交差させる手段は、踏切を介して双方を同一平面上で交わらせるのではなく原則として立体交差にすることが求められている。[1]後期に設置された路線や高速運行される新幹線では当初から完全な立体交差仕様となっている。

立体交差の方法は、対象物が鉄道の上を通るか下を通るかになる。鉄道が上となる場合、下を通るものが幅のある道路や河川であれば概ね鋼製の橋が架けられる。固定された軌道上を重量物が走る仕様上、構造体が変形するだけで大事故に繋がる恐れがあるので、橋脚部に石積みやコンクリートを用いても橋そのものは当初から充分な耐久力をもつ鋼鉄製で建造される。橋は鉄道の構成要素なので維持管理も鉄道管理者に帰属する。

他方、列車が下で上部に人や車両を通す場合、列車ほどの重量物は想定されないため鉄道橋よりも相対的に簡素な構造であるものが多い。交通量がそれほど多くない道路などでは構造体は鋼製でも通行部などに鉄筋コンクリートが用いられている。古くから存在していた道を鉄道建設により堀割の形で分断する場合、往来を保証するために鉄道管理者が費用を負担して架橋する。しかし以後の橋の維持管理は当該道路を維持管理する側に帰属する。
【 対処が必要な構造物 】
落下リスクのみに限定して考える場合、鉄道に限らず立体交差の上に配される構造物は、下を通る往来者に被災リスクを負わせる。例えば道路の場合、高速道路の陸橋から故意に異物を投擲して交通車両に被害を与えた事例があるし、人間が介在しない場合でも橋の老朽化に伴う破片の落下が起こり得る。跨道橋はコンクリート施工されたものが多く、鉄筋の錆びなどによりコンクリート破片が剥落する事故が実際に起きている。

鉄道の場合、運行本数の少ないローカル線では落下物により被災するリスクは幹線道路に比べて小さい。旅客数が多く列車の往来頻度や車両が長くなるほどリスクは上昇する。山陽本線では市内において駅間が長いこともあり、一般道を走る車よりはるかに高速で運行している。上部からの落下物があったとき乗客に被害が及ぶことは稀と思われるが、高速走行する車両へ充分に重い部材が落下した場合は屋根の破壊やそれに伴う乗客乗員の被災も起こり得る。

恐らく想像されるようにこの点でもっともリスク対処が必要なのは、新幹線の跨線橋である。

新幹線は現在のところ陸上輸送では最高速で大量の乗客を輸送する交通の大動脈であるが、山陽新幹線に限って言えば昭和40年代後半の高度経済成長期入口に建設されていて構造物の老朽化が目立ち始めている。市内区間でも橋脚から500kg超のコンクリート片が剥がれ落ちる事件があった。[2]当時、建設資材のうちコンクリートを構成する川砂の調達が困難で海砂を(洗浄することなしに)用いたために劣化が早まったという見方がある。これを受けて橋脚など主要構造物の点検と補強工事が断続的に行われた。

市内では新幹線の上部に設置された跨線橋が5ヶ所知られる。二俣瀬区田の小野に1ヶ所で、残りはすべて船木地区にある。民家のある居住区域は専ら連続した高架橋を設置して高い位置を通っているため、新幹線より更に上を通る道のための跨線橋がある場所はすべて山間部に限定される。

この跨線橋すべてが同様のリスクを抱えているわけだが、跨線橋構造そのものを変えることが殆ど不可能で維持管理しつつ運用する以外ないものがある。宇部美祢高速道路の立体交差は4車線がオーバークロスしており、構造も跨線橋というよりは重厚なボックスカルバートであるため今更変更はできない。県道江汐公園線迫田跨線橋も交通量が相応にある県道で、新幹線の建設以前は西側を通っていたものを立体交差に変更している。このような跨線橋は当然管理が行き届いているのだが、問題は往来実態が殆どなく放置されている跨線橋である。
《 通行実態に乏しい跨線橋 》
以下に掲げる3箇所は、利用者が維持管理を行う鉄道関係者や送電線の点検、新幹線そのものの撮影などに限定され、一般の往来が殆どない。詳細は項目に設定されたリンク先を参照。
黒見山跨線橋
山陽新幹線の二俣瀬区車地に架かる里道の跨線橋である。幅が狭いため当初から四輪の通行はできない設計である。


新幹線の建設により分断された土地の通行補償で架けられた可能性もあるが、恐らくは里道である。この跨線橋を必要とする墓地などは周辺になく、登山コースとしての通行需要もない。特に跨線橋より北側は道自体が喪われており既に往来実態は皆無である。
【 第一銭ヶ原跨線橋 】
船木の新郷地区にある市道第二新郷線の跨線橋。市道から見た管理上の名称は上原橋である。[3]
未舗装路ながら四輪の通行が可能な仕様である。かつて耕作のための往来があったようだが、現在は周辺に田畑がなく廃道同然で通り抜け不能なため市道路課がバリカーを設置して通行止め扱いとしている。


跨線橋より先は四輪どころか既に歩行による通り抜けも出来ないほど荒れている。新幹線撮影の目的でたまにマニアが訪れる程度である。
しかし撮影スポットとしても好適とは言えない
【 第二銭ヶ原跨線橋 】
同じく船木の新郷地区西側にある市道西見迫田線の跨線橋。市道から見た管理上の名称は下原橋である。[4]
第一銭ヶ原跨線橋と同様、四輪の通行可能な仕様となっている。


西見と迫田の両地区への往来が可能なことは確認されたが、四輪向けの普請が行われておらず通行不可能である。元々の道が山の斜面を伝う線形だったため、跨線橋は斜めに架かっている。すぐ西側を船木トンネルが通っている。

黒見山跨線橋についての言及はないものの、新郷地区にあるこの2つの跨線橋はかつて補修問題が話題に上ったことがある。[5]それらは市道(建設時は楠町道)で現在では民家も田畑もない山の中に存在し、四輪が通れる程度の幅と堅牢さで造られていることから、仮に撤去するにしても黒見山跨線橋ほど容易ではない。かと言って跨線橋前後の市道を整備したところで往来需要が見込めないのが現状である。適正な維持管理を行わなければコンクリート片の剥落が起こり得ることから放置もできず、楠町時代に造られた構造物を維持費のかかる負の遺産として宇部市が継承する形となっている。

補修や撤去いずれの場合でも、鉄道の往来に影響を与えず施工するのは困難である。道路のオーバーパスでは車線を絞りながらの施工が可能であるが、鉄道に架かる跨線橋では軌道が固定されているためそうはいかない。

新幹線ほどに高速航行が前提となる公共輸送機関では、跨線橋ならずとも走行空間の上部に設置されたすべての構造物が脅威になり得る。トンネルと言えども鋼材の巻き立てとは異なりコンクリートの連続体であることから、部分的な剥落があり得る。落下に伴う事故を防ぐために日々点検されていると思われるが、トンネルの場合は構造をもっと堅牢にし、人や物の落下が起こり得る跨線橋のような構造をできる限り回避する必要があるのかも知れない。このことは建設が計画されているリニア線について特に当てはまる。
出典および編集追記:

1.「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」による。

2. 2008年5月11日に厚東区下岡にある下岡第1高架橋の橋脚から530kgのコンクリート片が落下している。近所の在住者が報告したものの運行に支障はないと判断され13日になって発覚し全国ニュースとなった。当時のことをブログ記事に書いている。詳細は以下を参照。
なお、ブログ記事中に掲載されているニュース記事へのリンクは既に期限切れで無効となっている。

3.「うべ情報マップ|地図表示

4.「うべ情報マップ|地図表示

5. 新郷地区にある2つの跨線橋について、市費による維持管理費と補修の問題を指摘したPDFファイルがかつて検索によりヒットしていたのだが、その後削除されたらしく存在しない。
宇部市|橋梁点検結果の公表について」において平成28年度橋梁点検結果表(PDF)の中に市道西見迫田線の下原橋がランクVの早期措置段階(構造物の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずるべき状態)に指定されている。
《 潜在的な危険が予測される跨線橋 》
新幹線以外の在来線でも跨線橋構造を持つものに対して同様の問題が考えられる。以下は具体例であり、同種の構造体をもつその他の場所にあるものにも当てはまる。なお「潜在的な危険が予測される」は、現状を観察した限りの主観的なものであり、実際には現状が把握され適正に対処されていることもあり得る。
【 西岐波中学校裏手にある跨線橋 】
宇部市西岐波区の西岐波中学校と国道190号の間に存在する跨線橋である。
宇部線の上を跨いでいる。


跨線橋は全体がレンガ積みであり、建設当時のものをそのまま使っている。上部を部分的に削ってコンクリート床板を配置したような変則的な構造となっている。これは当初レンガアーチ状になっていたものを部分的に取り壊して造り直した結果と思われる。アーチ構造から長方形の断面に変えたのは車両限界の問題をクリアするためかも知れない。

これどほぼ同じ構造のレンガ積み跨線橋が西岐波・東岐波地区合わせて他に3ヶ所存在する。それらは市道に組み込まれた跨線橋で一般車両の往来が多い。この場所の跨線橋は、物理的には北側で国道190号に繋がっているものの地図では通路部が破線で記載されているため、私有地分断に伴い通行補償のために架けられた跨線橋かも知れない。
物理的には中学校横の通路は四輪の通行が可能であり、跨線橋手前にはバリカーなどは設置されていない。相応な重量のある四輪が入り込んでしまった場合の影響が懸念される。
【 迫条にある跨線橋 】
山陽本線の迫条にある跨線橋で、正式名は迫条こ線人道橋である。


県道宇部船木線の寺田橋の西側に存在し、かつて宇部線と美祢線をオーバークロスさせるための「3線構造」と貨物入替線が存在しているため、跨線橋は通常の複線よりもはるかに長い。人と自転車しか通れないが、東側の寺田橋まで迂回せずに迫条バス停まで往来できるため現在も相応な往来がある。跨線橋の基本構造は鋼製だが通路部分にコンクリート板が使われており、また橋自体も半世紀が経過していて老朽化が目立つ。コンクリート部材は鋼橋の上に並べられただけでフェンス等で覆われておらず、部分的に割れた破片の落下が懸念される。

例示した以上の2つは、先述の新幹線に架かる利用実態に乏しい跨線橋よりは往来需要がある。また、鉄道部も列車の通行頻度も運行速度も低いため新幹線の跨線橋ほど重大インシデントに至る危険性は小さい。
この他にも灌漑用水や工業用水を通す目的で設置された水路橋や鋼管が存在する。後年造られたものは相応な部材が用いられているが、灌漑向けの水路橋は鉄道以前から存在していた水路を対応させたものが殆どで、老朽化しているものが多い。
《 類似する問題 》
冒頭でも少し述べたように、鉄道に限らず凡そ立体交差構造になっているものは下の交通が落下物リスクを負う。そして下の交通が新幹線同様に往来頻度が高い高速道路や高規格道路、交通量の多い幹線道路に架かる利用頻度の低い跨道橋に対して同じ問題が存在する。例えば山口宇部道路に数ヶ所架かる通行実態のない里道および私有地を連絡する跨道橋は維持管理費がかかることから、将来的な撤去が予告されている。具体例としては迫田跨道橋および黒岩跨道橋を参照。

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