真締川・砂どめ井手【1】

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現地踏査日:2014/11/23
記事公開日:2014/12/16
既に総括記事の方で記述しているので包み隠さず書くと、砂どめ井手と思われる堰堤は真締川上流の採石所がある場所付近に存在する。そこは真締川沿いの道を下流から辿ってきたとき立入禁止の札がある内側になること、そこを通らなければ接近できないらしいことは地図で堰堤の位置を確認したときから分かっていた。

この場所へ初めて来たのは去年の9月だった。
以下の2枚はそのときの撮影である。下流側から自転車を押し歩きしていて立入禁止の札を見つけた。


チェーンが張られていて物理的には横から入ることができたので、このとき自転車を置いて歩いて先がどうなっているか偵察していた。

少し進んだところに分岐路があって、アスファルト殻などの産廃物が積まれていた。


この日は平日だったせいかブルドーザに乗った運転手が産廃物を押す作業をしていて立入禁止の札の手前から既に機械音が聞こえていた。そのため立入禁止になっている理由を素直に理解してそのまま引き返している。

年が変わって2014年11月のこと、別の用件で地元在住民との随伴で同じ場所から初めて先へ進攻する機会があった。[1]
以下の2枚は地元の方と立入禁止の先を歩いたときの写真である。
プライバシーの問題上から一部画像を加工しています


荒れ道を進むと藪が解けたあたりから左側に再び真締川が見えるようになった。


このとき一緒に歩いた地元の方がこう言われた。
「この辺りに砂防堰堤があるんですが…ここからは見えませんね。」
具体的な名称は聞かなかったが私はそれが真締川に存在する井手の一つだろうと確信するに至った。
用件を済ませて再び採石所の敷地から出るまでに、その方から休日など工場が稼働していない日は無人になるので(私たちは)必要に応じて通っていますという返答を得た。

これだけで当サイトからもただちに「誰でも自由に通ることができる」とまでは書けないが、調査したい案件一つのために通行して良いか関係者に照会するというのも現実的でない。そこで「通行に関して積極的に禁止はしないが場内での怪我や事故についての責任は負わない」という最も一般的と思われる処遇を前提にこのたび踏査経路として通行した。
したがってこの記事を作成した後で関係者から「危険なので休日も含めて通らないで欲しい」との要請があるかも知れないことを申し添えよう。

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さて、現地への踏査はいきなりだがこの場所から始まる。
上の写真から100m程度更に進み、採石所に置かれた資材やトラック等が見え始める場所だ。真締川はこの写真で左側になる。


既にこの場所は採石所の管理道の一部だ。
真締川は管理道からやや離れたところに見える。ガードレールを越えて川面まで近づく道はまったく見当たらない。
黄色いガードレールが設置されていることからかつては公道だったのでは…


水面をズームしている。
ここからでも真締川は波を立てることなく一定の水深を保って流れているのが窺えた。


この辺りは真締川の上流域にあたるので、河川としての縦断勾配は今いる管理道とあまり変わらない。何もなければ川はさざ波だって流れているものだ。それが鏡のような水面で一定の深さを保っているということは…この下流側割と近い場所に堰堤があると想像される。実際、地図でもそのような記述になっていた。

少し下流の方へ移動する。
採石所内の管理道とは言っても敷地内の端で、下流側は例の立入禁止チェーンが張られているので場内ダンプの往来はない。そのためか道自体は何とか歩けるものの両側は盛大な藪の海だった。


黄色いガードレールがツル系の草に蝕まれ色が見えなくなるほどに藪化が酷い。どうやらまったく草刈りされることはないらしい。

日当たりの悪いところまで進むとツル系の藪から竹藪に変わった。
同じ藪を漕ぐにしてもこちらの方が難易度はやや低そうだが…


ガードレールの方へ寄って川面へ降りられそうな場所がないか調べた。
シャバシャバと水の流れ落ちる音が聞こえてくる。堰堤が近い証拠だ。この音は11月に地元の方と歩いたときにも聞こえていた。


ガードレールの末端部分。ここからはどうだろうか…
足元の地面の状態がまったく分からない。まあ、イバラなどはなさそうなのでどうしても他がなければ腹をくくるしかないが…


およそそこに堰堤があるなら過去にそれを造った人が居る。そこまで到達する経路の痕跡でも遺っているはずだ。まずはそれを探そうと思った。適当に藪を漕いで到達できたからとして、経路の再現可能性がなければ私以外の誰かが現地を訪れようと試みるとき悩むからだ。

水が落下すると思われる音から遠ざからない範囲で有望そうな経路を探した。
しかし安泰に進めそうな経路を見つけることもなく採石所の端まで来てしまった。
右側に見える白い立て看板は県が設置した鳥獣保護区域の地図


立入禁止の札が下がっているチェーンが見える。この下流側は採石場外だ。
左側は一昨年にブルドーザが押土しているのを見た現場だ。


地図で堰堤が採石所の管理道とされる破線の道で示されている付近にあるのを確認していたから、これより下流側まで降りては行きすぎだ。実際、水の流れ落ちる音は次第に小さくなったのでまだ視認できない堰堤からは遠ざかる方向になるらしかった。
管理道から直接堰堤方向に進む踏み跡の痕跡でもあるなら、この近くの筈だ。ここから川面までは直線距離で20m程度だろう。どうにも見つからないようなら最後の強行手段に出ることになるが…

野ウサギになった気持ちでここから川面へ降りる踏み跡を見極めた。
そして微かな痕跡のように思えるこの場所を見つけた。


すべてが判明した後なので書くが実際ここだった。現地では上の写真を見ただけではとても踏み跡には見えなかったのだが…

この辺りは管理道より左側の川の方が若干高い。
しかしこの場所は…管理道からもある程度の往来があったせいか僅かながら踏み跡状に低くなっていた。


たとえ道ではなくとも割と与しやすい藪だったし、もっとも明瞭に水の流れ落ちる音が聞こえる場所だった。数十メートル藪を漕げば、道ではなくとも堰堤本体を見ることはできるだろうと思った。

突入を開始する。
管理道より一段高くなっている場所に立って前方を眺めた直後、これが砂どめ井手と呼ばれる堰堤に向かう経路に違いないこと確信できた。


上の写真では不鮮明だが、茶色い落ち葉の途切れる先には堰堤に特有の直線的な稜線が見えていたからだ。
同時に、落ち葉の溜まっているところには経路に対して直角に横切る筋状の領域を見つけた。

落ち葉の上に立って上流側を撮影している。
水路らしき痕跡がかなり明らかだろう。


これは遙か昔の灌漑用水路にほぼ間違いないと思う。堰堤のある場所では水位が上昇するので、そこから引き込まれる灌漑用の水路が造られるのが普通だ。この筋状領域は下流側にもずっと続いていた。今は存在しない田に水を充てていたのだろう。

そして堰堤があったと確信に至ったときの一枚。
落ち葉や草木に覆われて堰堤の稜線はなお不明瞭だが、左側にはかなり低い位置に水面が見えることから明らかだ。


落ち葉の堆積がもの凄い。現地でも何処が堰堤でどこが地山かは分かりづらく、不用意に歩き回れなかった。

堰堤の端から下流側を撮影している。水が堰堤を超えて垂直落下しているのが見えた。
流れ落ちている場所は相当な高さがあるように思われた。


足元がしっかりしていたので自分が既に石積みかコンクリート製かは分からないが堰堤上へ居ることは分かった。しかし落ち葉に隠された地面は何とも頼りなく、踏み抜きに注意しつつ前方に進んだ。

やはり地図にあった堰堤だった。
堰堤で押し止められた真締川の水が垂直落下しているのが僅かに見える。


堰堤の幅や高さなど、地図で予想していたよりも規模がずっと大きい。まだ11ヶ所あるすべての井手を確認できたわけではないが恐らく最大規模ではないかと思った。
もう少し近づいて鮮明な写真を撮りたい。それにしてもここへ近寄った人は近年殆ど居ないらしく進攻は非常なリスクを伴っていた。

(「真締川・砂どめ井手【2】」へ続く)
出典および編集追記:

1. このときの記事について公開するかどうか現在検討中。
記事そのものは既に執筆済み

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