国道190号・西岐波地下道

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記事作成日:2023/10/21
最終編集日:2024/9/11
情報この総括記事は内容が古くなった旧版をコピーして再構成されました。旧版は こちら を参照してください。旧版の編集追記は行わず将来的に削除します。

西岐波地下道は、国道190号西岐波区江頭にかつて存在していた地下道である。 写真は北側歩道部分からの撮影。


この構造物がある場所をポイントした地図を示す。


この総括記事を作成している現時点で、西岐波地下道(以下「地下道」と略記)は通れなくなっているどころか双方の下り階段部分シートや土砂で覆われ、周囲もフェンスで囲まれて物理的な立ち入りが不可能である。近年ではかつてここに地下道が横断していたことを知る人も少なくなってきている。
《 概要 》
正体が判明するまでの経緯は 旧版の総括記事 を参照。
【 地下道建設以前 】
国道190号のこの場所の4車線化(常盤拡幅)が完了したのは昭和46年(1971年)5月頃のことであった。[1] 拡幅以前からこの場所は野黒目川の横断水路があり、4車線化のとき元からあった道路横断の水路を改造し延長している。

4車線化により、中央分離帯を含めれば道路の横断に要する時間は従来の倍以上となる。車は渋滞なく快適に走行できるようになったものの、歩行者が道路を横断するのが負担になった。特に昭和53年4月に常盤小学校が誕生し西岐波地区の国道以南に住む学童にとっては、日々の登下校で学童が国道横断する危険が認識され始めた。
【 地下道時代 】
常盤小学校の登下校で国道横断の危険に晒されるのは、国道以南の浜中や長生地区から通う学童だった。現在の市道常盤公園江頭線の終点から野黒目川に沿って北上すれば常盤小学校の最短の登下校路である。この場所に陸橋を造るのは幅が長すぎるので、既存の野黒目川に蓋を掛けてその上を通路とする地下道を造る案に決まった。

大まかな地下道の経路は以下の通りである。


新規に地下道を建設するとなると1億円近い費用がかかる。しかし現地には野黒目川の排水暗渠があり、この上に蓋を被せて人が歩く形の地下道に改造した。子どもが3人横並びで通行可能な幅があり、安全面を考慮して両側の出入口に非常用の防犯ベルと押しボタンが設置されていた。既存の暗渠を改造したスタイルの地下道なので小規模だが改造費用を730万円に抑えて実現している。地下道の諸元は高さ2m、幅1.5mで延長は54mで、昭和53年(1978年)10月に完成し、同月21日に開通式が実施された。[2][5]
【 地下道の廃止 】
西岐波地下道はその後30年間ほど江頭での国道横断手段として利用されていた。しかし平成期に入って浜中・長生地区から通う学童が少なくなったこと、地上から見えない地下道の防犯面での問題が生じた。現に地下道へのスプレー落書き、隠れてシンナーを吸う場所として使われている実態が報告された。豪雨時に排水が滞ることで地下道が水没するリスクも認識され、治安面から閉鎖して欲しい旨の要望があった。

平成19年時点での通行実態調査では、地下道の通行者が平日で7人、休日で4人だったことも報告された。同年5月に地下道閉鎖の告知を行ったものの一年間経過しても通行需要や苦情が発生しなかったことから、平成20年(2008年)9月から10月にかけて閉鎖工事が行われた。閉鎖作業は将来的に再び地下道の要望が生じる可能性も考慮して、通行部分は土砂で埋めて隙間部分をコンクリート詰めしている。入口や階段の除却は行わない代わりに、周辺レベルと同一になるまで埋められた。[3]
《 現在の状況 》
現状では、地下道の両端入口部分は完全に塞がれた上に経年変化で土が溜まり植物園のような状態になっている。


海側出入口跡は草押さえシートで覆われている。


現在はほぼ同じ場所にで押しボタン式信号機付きの横断歩道が設置されている。ただしこの場所で国道を横断する人は殆ど見かけない。

地下道の下を流れている野黒目川接続水路は市の指定水路である。[4]後年、国道沿いにパチンコ店の駐車場ができたことで宇部線の手前まで暗渠が延長されている。


野黒目川に並行して里道が通っているらしく、廃止された踏切の痕跡がみられる。
《 類似する構造物 》
市内の地下道あるいはボックスカルバートのような立体交差で、防犯上などの理由から物理的に塞がれた事例は他にはない。簡素な通路を備えた水路で後から通れないようにフェンス門扉で塞いだ例としては、山口宇部道路雀田水路のボックスカルバートの例がある。


沢の水が流れ込む構造ながら、その横にある点検通路はフェンス門扉が施錠されていて通れない。下り階段のところまで通り道があった痕跡もないので、当初から水路メンテナンス用で一般向けの通路ではなかった可能性もある。ただし下流側には水路沿いの畦道があり、立体交差部分は塞がれておらずフェンス門扉の反対側まで到達可能である。
本件の正体が判明する前に撮影し推察を重ねた記事。日を改めて3度訪れたものを第1〜3巻として掲載している。全3巻。
時系列記事: 地下道の造りかけのような構造物【1】
出典および編集追記:

1.「広報うべ」第469号(昭和46年5月13日)の表紙に江頭〜常盤公園間の4車線拡幅完成の記事と写真が掲載されている。

2.「株式会社宇部日報社|昭和53年(1978年)10月21日の1面記事

3.「2016/3/5のタイムライン|江頭地下道(仮称)

4.「宇部市防災マップ(常盤地区)|宇部市

5.「株式会社宇部日報社|平成10年(2008年)9月10日の1面記事

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