市道岬赤岸線【2】

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(「市道岬赤岸線【1】」の続き)

元から狭く四輪の先行きを不安にさせる市道だが、万が一にも四輪通り抜けを企てようとここまで進攻してきた猛者は、古いスレート葺きの建屋を左に見て完全に頓挫させられることになる。
どう頑張っても四輪は通り抜けできません(>_<);


一応舗装はされているが、ここから先は原付や自転車ですら安全にすれ違いできない狭さだ。
岬明神川の水路もここは狭くなっており、仮に暗渠化されても恐らく車が通れるようにはならないだろう。
物理的に通行できても精々軽四限定のしかも一方通行か

もっとも向こうからやってくる人や自転車さえ居なければ、自分一人進むのは全く安泰に思えるだろう。これが更に先へ進めばそうも言っていられないことが判明する。

スーパーの倉庫横を過ぎると駐車場が見えてくる。市道は駐車場と岬明神川の間の狭い部分に押し込められている。買い物客の通行に配慮しているのか、この近くだけは転落防止柵があった。


スーパーとの境にはブロック塀があったようだが、かなりの幅で根元まで削り取られているので自転車ならそのまま駐車場へ乗り入れ可能だ。市道は更に先へ続いているが相変わらずの幅で、しかもまた転落防止柵がなくなってしまっている。


駐車場は店舗のある地盤を含めてある程度沢を埋める形で造られており、市道や用水路より高い。駐車場側は背丈を超える高さのブロック塀が連なっており、かなりの圧迫感がある。



「狭い道に出会ったら必ずやるお約束」をやりたいのだが、この道幅では自転車を横置きにすら出来ない。下手をすると水路に落っことしてしまう。
後日訪れたとき乗り捨てられたと思われる自転車が水路に投棄されていた


岬明神川のコンクリート護岸幅が約10cmと、舗装された幅が50cm程度。これでも認定市道なのだ。

山間部へ行けば、狭い以前に幅員も経路さえも不鮮明な認定市道は沢山ある。しかし買い物客で賑わうスーパー横のような場所でこれほど狭い市道はちょっと例がない。人や車の交通という面から言えば、先に出会った市道神原町草江線が終点でそこから先は地元管理の道…というのが妥当なところだろう。
水路管理のための認定市道はこういうものなのだろうか…


国道190号が見えてきた。それもこの近辺では珍しい立体交差である。

国道との高低差が2mくらいあって相互に行き来はできない。元々水路用に造られたボックスカルバートに通路も押し込んだような格好だ。カメラは普通に構えており、視座の高さからすればこのまま進めばボックスの天井に頭が当たりそうな位に低い。


立体交差入口の手前にコンクリート塀が切れる場所がある。
通常ならここに国道へ上がる階段などが備わっていそうなものだが…階段どころか、侵入を拒否するように単管を組み合わせたバリケード状のものが立っていた。

振り返って撮影している。
よく見ると単管バリケードの奥が溝状になっていて似たような立体交差が見えかけている。しかし明らかに通路ではない。国道の歩道から伸びるコンクリート斜面がその入口を塞ぎかけている。


実はこの部分はかなり早くから今の状態になっていた。通路でも水路でもないのにこの部分だけ溝状に遺されていることに不自然さを感じ、幼少期の頃から気になって注意深く観察していた。

この溝状領域の正体が何であるか未だ決定的な解答は得られていないが、宇部興産(株)常盤工業用水導水管の施工跡ではないかと考えている。
詳しいことはこちらの寄り道記事を参照されたい。
派生記事: 宇部興産(株)常盤用水の擬似開渠区間
さて、市道は国道下をカルバートで横断するのだが…初めて通る人にとっては本当に安泰ではいられない。歩行者も自転車でも。
誰の目にも天井の低さが明白で、通行者に「頭上注意」を促す掲示が出ていた。また、立体交差部分は暗く水路に落ちる恐れがあるからか転落防止柵が設置されていた。


天井が低くて狭くて暗い…という3拍子揃った立体交差に救いの手を差し伸べる要素があった。
少しでも圧迫感を取り除こうという配慮からか、壁面にほのぼの系なアート・ペイントが施されていたのである。
類似する「カルバート・アート」は床波付近の国道立体交差にも観られる


通った人にしか分からず目立たない存在だが、なかなか好ましい取り組みだ。スプレーで「仏恥義理」などと訳のわからないマーキングで汚されるよりずっとスマートだ。

中ほどまで歩き、ペイント部分が見えるように撮影している。


壁一面に何かが描かれているのだが、蛍光灯が付属しないので一度に全体像を見渡せなかった。
これは仕方がないだろう。この低い天井や側面に出っ張った蛍光灯をつければ逆に危ない。
アートを描くときサーチライトが必要だったのでは…^^;


出口付近にそれでなくても低い天井より更に低い位置に何かの出っ張りがあった。
自転車に乗って通るなら、ここで思い切り身を屈めなければ必ず頭を打ち付けること請け合いだ。


NTTの地下ケーブルが格納された鞘管だ。入口にあった太い管(恐らく水道管だろう)は立体交差の外に取り付けられており、天井部と同じ高さだった。しかしこの管は内部に取り付けられているので更に天井部が低くなってしまっている。


さすがに車が通らないから良いようなものの、これを引っかけてザックリ切断なんてしたら一大事だ。
もっとも通常走行で打ち付ければ頭の方がザックリ逝きかねないだろう
まあ、天井の低さなどは警告など出されなくても「見りゃ分かるだろ」状態だ。最小限の「頭上注意」だけ掲示されており、この先狭隘区間ありとか天井が低いので通行注意など小うるさく掲示されない分だけ逆に清々しい。個人的にはこういう自己責任で通れと促す種の道に好感が持てる。

カルバート・アートの全体像を撮ろうと思えば動画撮影以外ない。しかし自転車に乗ったままカメラを回すと頭の天辺を天井で削り取られそうなので、手ブレを承知で自転車を押し歩きしつつ撮影した。
最後の方で急に振り返っているのは反対側から歩いてきた下校中の中学生を被写体に入れないため

[再生時間: 37秒]


下校途中の生徒をやり過ごし、立体交差を出たところで振り返って撮影。
こちら側には土の斜面が露出しており、国道に付随する歩道へ上がる階段の痕跡が遺っていた。もっとも現在は使われていないらしく歩道の柵は締め切られている。



立体交差を過ぎると別の道へ突き当たり終点到着となる。ここで接続されるのは市道恩田則貞線である。
岬明神川の水路自体は起点当初よりも幅が随分と狭くなりながら更に上流へ続いていた。


終点より振り返って撮影。
どうにかすれば軽四くらいなら間違って入り込めるほどの幅がある。しかし立体交差部分の高さも幅も遠くから目視するだけで明らかに通れないことが明白なせいか、四輪進行禁止などの標示などは出ていなかった。


最後の方は狭くて水路側に柵がなく、天井が低い立体交差もある市道なのだが、車は別として歩行者や自転車にとってこの区間は特に利用価値が高い。それは交通量の多い国道と立体交差になっているのでいつでも安全に横断できる点に集約される。

国道が沢を跨ぐように盛土で通されているので、沢を流れる岬明神川に沿って進む市道は普通に進行するだけで立体交差になる。歩道橋のような上り下りの動作が要らず、地下道のように自転車でスロープを押し歩きすることもない。
国道を横切るなら、交差点や押しボタン式信号機のある場所まで行って信号を待てば済むようなものだろう。しかし自転車乗りにとっては走行テンポを乱されず進行できる道はそれだけで快適な要素が上乗せされる。
いくら急がないとは言っても無駄に信号待ちの長い交差点は本当にストレスが溜まる

なお、立体交差ながらここから国道に復帰するのも容易で、市道恩田則貞線を進めば押しボタン式信号機の手前に出てくる。四輪が通れない狭さ故に歩行者や自転車にとっては快適で、買い物客や登下校の小中学生によって結構活用されているようだ。

その道を通って帰りは国道190号の歩道を通った。
今しがたくぐった立体交差の真上から撮影している。ケーブルに関する注意書きが歩道の柵に取り付けられていた。


さて、帰りに国道190号の歩道まで上がったのにはもう一つ理由があった。
市道の路線名に現れていながら、現在は則貞1丁目になっており住居表示などを含めて行政上では赤岸という地名は消し去られてしまった…

…と思われていたのだが、つい最近になって意外なところに「赤岸」という地名が復活し使われていることが判明したからだ。

それは先の立体交差より歩道を市街地方面へ進んだ次の信号機に観ることができた。


アルク恩田店前の押しボタン式信号機に取り付けられた地名板。
「宇部市赤岸」と明示され、振り仮名もローマ字表記されている。


今年のGW最終日にある会合に参加するメンバーを則貞バス停まで迎えに行くとき、久しぶりに国道を走っていて気づいた。車だったし待ち合わせの時間が押していたので、市道レポート向けに撮影目的で走った帰りに立ち寄ったのである。
少なくとも半年に一度は自転車なり車なりでこの区間を通るし、信号機に付属する地名板は結構注意して観察している。それ故に設置されたのはそう昔のことではないと思う 。

現行の町名やバス停名などに現れなくなった小字がこういう形で再登用される例は皆無ではないがかなり珍しい。
地名板を見れば、近隣在住者もドライバーも「この辺って赤岸っていう地名だったの?」と再認識するきっかけになる。信号機に設置することで場所を説明するランドマーク的役割を持たせることができるし、何よりも軽視され失われつつある小字を表舞台に引き出し活用する効用が期待できると思う。

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