市道藤曲門前線【6】

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(「市道藤曲門前線【5】」の続き)

ここでは直進する踏み跡と山側へ曲がるあぜ道の分岐があった。手元のメモではここで大きくコースを変えるようにはなっていない。この先である別の山道市道を横切り、それから更に進んで直角に左へ曲がる場所がある。それまで暫くは直進の筈だ。
後々のことも考えてこの目立つ場所を「ピラカンサ分岐」とでも名付けておこう…

直進した先で出会った道の形は大変に心強いものがあった。
平坦な道が伸びており、周囲はかなりの藪でありながら確かに道らしき形が続いていたからである。こんな場所に市道が隠れていようとは…という印象だった。


ピラカンサ分岐から見下ろしている。
宇部変電所の敷地より更に一段高い場所にいる。変電所の周囲に沿う道なら車でも何度も通っていたのだが…


これが地図に載っていたあの市道なのだ…
両側が酷い藪ながら道は一定の幅を保ってきれいに刈り取られていた。


自転車を連れてきてよかった。メモ書きによれば、この調子で真っ直ぐ山沿いにそって横切ればあぜ道のような細い道を脱してある程度広い道へ出るようになっていた。自転車置き去り状態だったらまた取りに戻らなければならなかっただろう…

しかし…その希望的思考が潰えるのにそれほど時間はかからなかった。
前方の様子がおかしい。道がなくなっているように見える。


幅広と思われた道は先でぷっつり途絶え、一段高い敷地へあがる木製の階段になっていた。


階段?
そんな筈はないだろ?


階段は道なりに対して直角に左へ折れる形で設置されていた。もうそれ自体がおかしい。そんなイレギュラーがあるならメモ書きの段階で拾い上げられている筈なのだ。
何かの事情で付け替えられたとか…?

本来ならここは直進でなければならないのだが、一段高い畑地へ上がる以外に道の選択肢がなかった。
もうこの時点で行き止まり確定、辿り着くのは民家の私有地である畑という線が濃厚だった。雲行きが怪しくなったのを感じつつも自転車はそこへ置いて歩いて先を偵察した。

果たして残念ながらその通りだったので途中の写真はカットして末端部の様子のみ撮影した。
長方形状の畑地には防鳥ネットや農機具などが置かれており、その一番奥は利用されていない空き地で終わっていた。その先は壮大な藪だ。


一定幅できれいに刈り取られていた道は市道だからではなく、単純にこの畑へ行き来する住民が普請したからに他ならなかった。いずれにせよこんな場所でウロウロはできない。私有地の恣意的な立ち入りは何の目的があるにせよトラブルの元だ。階段のところまで引き返した。

この階段も畑の所有者が拵えたものだろう。恒久的なものではなくあり合わせの幹を切断して埋めている。
道と思われた部分と畑との高低差は2m以上。真っ当な道ならそんなイレギュラーが生じる余地はない。


市道路河川管理課の地図を閲覧した限りでは、この山道部分は直線的に伸びていたにせよ完全な直線ではなく若干のカーブなどは在った。
もしかするとさっきの場所で山の方へ移動しなければならなかったのだろうか…また迷いが生じた。

ここから下界側を眺めた景色。民家の裏手の藪になる。
辿り着いた場所を記録がてらに撮影しておいた。


再び自転車を押してピラカンサ分岐まで戻ってきた。
ここから山側へ入る道筋だろうか…そんな折れ点はなかったように思うのだが…


一応、進める道はあった。もっとも畑の畝の一部のようでもあり、確かな道とはとても言い難い。
途中まで自転車を押し歩きしたが、再び歩きモードで偵察した。


方向としてはこのまま直進は有り得ない。本来の進行方向を90度左に振っているのだから、この辺りで右へ修正する場面が必要だ。

しかし右の方へ伸びていく道などなかった。
これはマズいだろう。どう見ても畑へ入っていくだけで、しかもすぐ裏手に民家がある。こんな場所を自転車押し歩きなどやっていたら精神構造を疑われる。
それでも一応前方に見える樹木のところまでは歩いて先に道がないことを確認していた


じゃあ、ピラカンサ分岐から一旦下へ降りるのだろうか?
まあ、そっちも確かに物理的に歩行可能な畝程度はあるのだが…


あんなに曲がりくねって細い畑の畝を通るのが市道とは思えない。大体、地図で眺めた限りではそんな難しい経路ではなかった。基本的に直進だけなのである。


手詰まりである。
無理…分かりません。


「ピラカンサ分岐」は地図では概ね以下の場所になると思う。
本路線の経路としては、ここまではゼッタイに正しい。←力を込めて言明^^;


即ちYahoo!地図でも確かに道として表記されているどころかこの分岐路の枝線まで記載されている。同じ表記が東桃山地区の住居表示地図でもなされていたのだから、ここに道があったことはかなり確からしい。他方、この近辺では地図で記載されている道が現在においてどれほど引き当てならないかは市道金山線の記載例でも明らかだ。

現地で考えていても事態は進展せず、この日は諦めて来た道を引き返しアジトに帰った。


場所としてはここで間違っていない。予想では畑へ上がる階段までは正しく、そこを更に直進する道があった筈だ。本当に誰も通らなくなったために荒れ放題になっているのだと思う。
しかし道の形も失われる程に自然へ還るものだろうか…もしかするとやっぱり何か思い違いをしているのではという弱気に傾きかけたのだった。

現地踏査日:2013/11/16
記事公開日:2014/1/8
それから4日後のこと…ここからは第二幕になる。
市内の離れたいくつかの場所で用事があって、車で移動していた。その後前回見学できなかった桃山3号配水池の展望台に上がれればとも思い、車で現地を訪れた。もっとも主要課題は専ら本路線の経路確定だ。

山道部分はどうやら道の痕跡さえも怪しい状態になっていることが判明した。ただし経路としては間違っていない…と言うかこの先の区間に関しては他にどの道の選択肢も存在しない。
自転車に乗るどころか押し歩きさえ無意味な藪なのだから、調査は徒歩の方が相応しい。そのために今回は車で乗り付け桃山3号配水池の前へ停め置いた。長距離を歩き回るのは大儀だが、どのみち乗って進める場所などない。個人の畑地かも分からない場所を自転車で押し歩きするよりは単身歩行の方が幾分不審者の臭いを和らげられるだろう…

未だに市道とは信じがたい状況ながら、ここ以外有り得ない確信を得ているので堂々と歩いて入っていった。
もし誰かに呼び止められたとしたら自分は今から着手しようとしている作業を説明するだけだ。
断じて不法投棄場所を探す下見じゃあないよ^^;


さて、前回と同じ場所へ向かうのだが、まったく同じことをしても仕方がない。今回は違うスタンスで取り組む。
市道崩金山線の交点部分を確定する。
本編の最初の方で「この先である別の山道市道を横切り…」と若干ぼかした書き方をした。この「別の山道市道」こそ、4年前既に自転車を引き連れてトレースを完遂した市道崩金山線である。

地図では不明瞭にしか記載されていないが大方の位置は分かっている。概ね以下にポイントした場所に交点がある筈だ。


適当な所で道の記述がなくなっている。宇部変電所の敷地を周回する道(市道小松原桃山線)から分岐し山へ向かう市道崩金山線は、上の地図でポイントした部分で出会い更に山を越えていくことが分かっている。
起点から交点付近までの経路は このマップ に記載している

前回はピラカンサ分岐から数十メートル程度進んだところで個人の畑に入り込み道を失った。しかし上の地図で分析すれば、同じ程度の距離ほど藪を堪えて直進すればかならず崩金山線に出会う筈なのである。その道は峠越えの場所までは明瞭な山道になっていることは最近の踏査で明らかだった。
具体的な手法として、前回引き返した畑付近から藪へ突っ込み、道の痕跡を探しつつ市道崩金山線へ出会うまで強行突破する。もしかすればこの過程で藪に埋もれた道の痕跡程度なら見つかるかも知れない。

鉄塔がある敷地横の様子。確かにこの部分だけ通路のように残されていると言えなくもない。


養生マットを敷いた場所や先方の緋色に目立つピラカンサもそのままだった。
自転車がなく持ち物はポケットに入れた携帯電話と替えのバッテリーのみ。デジカメはずっと右手に握ったまま歩いている。歩くのは大儀にしても確かに身軽だ。


ここで大きな進展があった。

ピラカンサ分岐の手前の畑で土いじりをなさっている地元の方に出会ったのである。


自転車を押し歩きしているならタイヤに連れてチェーンの動くチリチリ音がするので若干離れていても分かるだろう。今回は徒歩でしかも草地の目立つ道なので、本当にギリギリ近づいたところで私の存在に気付いていただけた。
迷い込んでいるにも等しい来訪者は私なので、私の方から声を掛けた。
「こんにちは〜♪」
分かっている場所の踏査なら出来れば誰にも会いたくない。独り静かに調査して成果をデジカメに収めサッと退散するのが定石だった。
今回は珍しく逆だ。いくら調べようがこの近辺に関して異邦人にも等しい私に理解できることには限界がある。永くこの地に暮らしている人々がより多くの知識を蓄えていることは明白だ。可能なら私はその一部を拾い上げたかったのである。
何だか市道崩金山線で出会った元金山住民の対面と似たようなシチュエーションである

畑仕事をなさっていて声を掛けられたのだから、今から自分が始めようとしていることを素直に尋ねてみた。

(「市道藤曲門前線【7】」へ続く)

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