山口宇部道路・未知の跨道橋【2】

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(「山口宇部道路・未知の跨道橋【1】」の続き)

跨道橋が本当に人の渡るための橋なら、両側の何処かへたどり着く道がある筈だ。それが上の道にも下の道にも見つからず、この課題が当初考えていたよりもずっと困難であることを認識した。
それで最後の手段として山口宇部道路から直接跨道橋へ接近することにした。

山口宇部道路は有料道路だったものの料金所は両端より幾分走った先に設置されていたので、料金所までの間には早くから枝道が数本造られている。しかし車通りの多い道と連絡するよう設計されているので、古い道との接続はあまり考えられていない。すぐそこに見えていながら遠回りを余儀なくさせられる場所が沢山存在する。

ここなど代表的な場所だ。
地区のごみステーションの外側に新しい道が見えている。現在走っている市道迫田長谷線の後半部分だ。


この道はすぐ先で山口宇部道路の旧料金所付近に到達する。しかし現在地とはフェンスとガードレールで隔てられていて相互の行き来ができない。直線距離で数メートルなのに、ここを通れないためにこの先一旦臨空頭脳パーク入り口まで数百メートル迂回しなければならない奇妙な場所だ。この場所は市道を記事レポート化したとき派生記事を作成するかも知れない。
これほどまでに近い場所を通っている

アップダウンの目立つ道を経て臨空頭脳パークの中の市道臨空中央線を走り、山口宇部道路への分岐点へ移動し、さっき眺めたフェンスの反対側を通り…
漸く山口宇部道路へ出てきた。ここを右折だ。
すぐ左側に旧料金所のブースがあった


そしてついさっき下をくぐったボックスカルバートの上を通る。
何処か一ヶ所階段ででも繋がっていたなら自転車を抱えてここまで移動するところなのだが…


さて、見えてきた。
今も使われているか素性が不明な跨道橋ながらその下をひっきりなしに車が往来していた。


この辺りから切り通しが始まる。
進行方向左側は先ほど通った谷底の道なのだが、切り通しの低い場所も木々が鬱蒼と生い茂っていて外側はまったく見えない。
ネットフェンスが見えているのでその外側は私有地なのかも知れない


2つの跨道橋は殆ど同じ構造である。両岸に接続される部分は盛大な藪に覆われていてどんな状況になっているか道路からではまったく分からなかった。


ここで自転車を停めて歩行調査に切り替えた。

交通量がとても多い。なるべく往来の車が入らないようタイミングを見据えて撮影しているものの上下線とも殆ど途切れることがない。無料開放され現在は主要地方道なる県道扱いなのだが、道路構造は有料時代のままで路側部分が狭いしもちろん歩道などない。停めた自転車が風で煽られ車道に転がり出てしまわないか気になった。

東側の接続部を下から観察する。管理用のも含めて道路から跨道橋まで接続される階段などは見当たらなかった。
跨道橋まで登るには腹をくくってこの斜面に取り付き藪を漕ぐ以外なさそうだ。それほど高くはないにしても目測で5mを超える。


一旦通り過ぎて反対側から撮影する。


跨道橋には両側に手摺りがついていた。
このことから水路橋である可能性はかなり低いと思った。もっとも水路だったとしても点検用の通路が付随するなら、路面へ転落すれば一大事なので手摺りは備わるだろうが…


跨道橋の接続する斜面はコンクリートで固められている。ツタ性の植物がぺったり貼り付いているがコンクリート自体にそれほど老朽化した感じはしない。
そろそろ何処から手を着けようかと考えつつ観察していた。


跨道橋の真下にチョークによるマーキング痕がみられる。
補修を予定しているのだろうか。


同様のマーキングは下の市道のボックスカルバートにも観察された。初めて目にしたときはあまりにも大量に問題箇所がマークされていたので構造的に大丈夫だろうかと心配される程だった。
山口宇部道路は昭和50年代始めに供用開始されたので既に40年以上経過している。この跨道橋も当初のまま一度も全体的な補修は行っていない筈だ。マーキングされているということは、何処から到達できるか分からない程度に顧みられない橋ながら撤去はせず補修する方針らしい。
補修よりも撤去の方が遙かにコストが高くつくという現実的な問題もあるのだろう

自転車は路側へ寄せて停めているし、作業用の青服を着て[2]うろうろしているのでドライバーからの注目度はバッチリ(?)だ。さてどうしようかなどと躊躇すればむしろその方が目立ってしまう。腹をくくってまずは斜面の張りブロック数段を登った。

視座と跨道橋のスラブが概ね等しくなる位置まで登ってきた。


ここから先はカメラを一旦ポケットへ仕舞い込んだ。木々をかき分ければどうにかなる藪の密集度だった。葉の裏に不快害虫などくっついていないかそっちの方が心配だった。

最上部へ到達した瞬間である。
跨道橋に接続されるのはやはり里道だった。一応は水路橋の可能性を考えていたのである。


迫田側の接続部は近くに生える樹木で完全に覆われていた。
跨道橋の幅は目視で2m程度。欄干はシンプルなアルミ製のようだ。


木の葉が堆積していたのは取り付け部付近くらいで、中央は吹きさらしになるせいかコンクリートのままだった。
苔が密集していないところを見ると排水は巧く機能しているらしい。


さて岡ノ辻側の接続部。橋の上へ登るなりすぐこちらへ向かったのは、傍目にも酷い荒れようだったからだ。


迫田側よりもはるかに荒れている。こないだの台風で倒れたらしい笹や竹などが接続部に枝垂れかかっていた。


まったく道の痕跡すらも窺えないのだが、現地の状況からしてあるとすれば里道はこの方向、橋を渡って右側だろう…


藪の高さは私の背丈を優に超える。さすがに進攻しようという気が起こらなかった。今の時期はもちろん秋口や冬場になっても素手では太刀打ちできないだろう。


撮影はしなかったが反対側は藪が酷い上に抉れた斜面で明らかに道がないと分かった。他方、上の写真では里道があるらしい場所だけ周囲より木々の背丈が低いことで間接的に道の存在を推定できる状況だったのだ。

進攻を自重したのは物理的な藪の酷さの他に、私有地へ入り込みそうな懸念があったからだ。橋を渡るときこの方向に個人の設置物と思われるものが見えた。こんな酷い場所をガサガサ草木をかき分けて歩くなど尋常ではない。誰も居ない山奥ならまだしも、すぐ近くに民家があるらしいことからも躊躇われた。しかも9月と言えばハミが最も攻撃的になる時期である。

岡ノ辻側に背を向けて撮影。
道路斜面から生えた樹木が跨道橋の上まで顔をのぞかせる状況だ。


この状況からしても今や跨道橋は廃橋状態と考えられる。下の道路は秒単位で車が往来していながら、上の跨道橋を人が渡ったのは私くらいでそれも数年振りという塩梅かも知れない。
あれでも道路を挟んで安全に往来できるので、野ウサギやタヌキのような野生動物はむしろ選好して通っているだろう。跨道橋が架けられて数十年も経つなら車にはねられず通れるルートとして学習するものである。仮に跨道橋の欄干に赤外線カメラを取り付けて夜間監視すれば、確率高く野生動物が橋を渡るのを撮影できると予想する。

現在ではハイウェイ建設により野生動物の動線が分断され横断事故が起きる問題が認識されている。動物にとって不幸なばかりではなくドライバーにとっても不意な野生動物の飛び出しが重大事故に繋がるので、跨道橋や暗渠など何かの方式で往来を確保する傾向にある。
そうは言ってもこの跨道橋に限定すれば架橋時期は昭和50年代はじめであり、当初から野生動物の事故防止で橋を造ったはずがない。一番あり得るのは元から里道があったのを通行補償として架橋したという事例だろう。他方、この地域の広範囲に土地所有していた地主が道路で分断されるのを嫌気し、橋をかけて双方の往来を保障することを前提に土地交渉に応じたというケースもあるかも知れない。

では、迫田側はどうなっているのだろう。里道の痕跡でもまだ存在するだろうか。もし真に道の痕跡さえも分からなかったら後者のように分断された私有地を連絡する橋かも知れず、その場合は橋を離れて周囲をあまりうろうろしない方が良いかも知れないと思った。

(「山口宇部道路・未知の跨道橋【3】」へ続く)
出典および編集追記:

1. その後市道迫田長谷線の総括記事を作成する折にこの場所について派生記事化している。詳細は「市道迫田長谷線|自己路線中のショートカット」を参照。

2. 業務で萩原方面へ行くときは誰か分かってもらえるように支給されたネーム入りの作業着を着ている。

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