山口宇部道路・未知の跨道橋【1】

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現地踏査日:2015/9/12
記事編集日:2015/12/6
跨道橋(こどうきょう)とは、その字の通りある道を上から跨ぎ越すための橋である。立体交差と同一視されるかも知れないが、長さや構造によっては下の道をコンクリートのトンネル状に造ったり上の道が斜めに横切ったりするタイプもあるので別の概念である。

さて、山口宇部道路の前身は山口宇部有料道路であり、有料道路である故にI.C.以外の場所から一般車両が流入・退出することがないように交差する公道の殆どが立体交差になっている。終点の大沢西交差点から北へ辿ると3つの跨道橋に出会い、それらはすべて現役の認定市道との立体交差で交通量も相応にある。特に3つ目の跨道橋は子落とし坂へ向かう市道岡ノ辻新浦線のもので、後年山口宇部有料道路へ降りられるようにハーフインターチェンジの形で岡ノ辻I.C.が設置された。[1]

岡ノ辻I.C.から更に北へ500m程度進むと、それまでのよりやや小振りな跨道橋2つに出会う。堀割の法面に両脚を降ろした跨道橋というタイプはそれまでのものと同じである。しかしこの2つにはそれまでの跨道橋とは異なる特性がある。
橋の上へ到達する道が見つかっていない。
自転車で市内の物件を求めてウロつくこと数年目なので、市内の近場なら今や容易に到達可能な場所の殆どを訪れている。跨道橋から山口宇部道路を俯瞰するアングルは秀麗なので、前出の認定市道にある3つの跨道橋を通ったとき撮影済みだ。そして最近のこと萩原団地を数回訪れる過程でこの近くを通り、この2つの跨道橋には未だ到達できていないことに気づいた。
この跨道橋自体は既に公開済みである山口宇部道路の時系列レポート向けに一通り自転車で走ったとき知っていた。しかし無くなるものではないし下からの撮影は容易なので特に追求していなかった。

この跨道橋付近の地図である。


跨道橋の存在が二本線で示されているだけで、その両端は周囲の道路に繋がっていない。しかし更に調べると山口宇部道路の両側にある市道から橋の方へ向かっているように見える枝道の記述がある。重要度の低い山道などは記載が省略されるのはよくあることだ。
地図の等高線からも推察されるようにこの近辺は尾根伝いとなる昔からの道(市道丸山黒岩小串線)と、逆に谷底を辿る市道迫田長谷線が併走し、その間を山口宇部道路が通っている。市道同士は水平距離で200mも離れていないのだが、双方の高低差は30m近くに達する。東側が急斜面となっているために古くから名前の付いた坂道がいくつか知られる地でもある。山口宇部道路は両者の間を深い堀割で通されているため、分断された両側を跨道橋で連絡しているようだ。昔からあった道かも知れないが、他方山口宇部道路により分断された私有地を往来可能にするために架けられた橋とも考えられる。
本当にこの橋を必要とするだけの道があるのだろうか?
その道は今どうなっているのだろう…
今年の夏場以降、業務で月に数回萩原方面へ行くようになった。移動手段は例によって自転車なので、地図をざっと見て頭に入れた上で初回の調査を行ってみようと思った。
なお、一連の跨道橋について名称が分からないのでファイル名は適当に設定(crossover_1.htm)している。

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亀浦を経て市道丸山黒岩小串線を岡ノ辻方面へ走ってきたところだ。
左側は季節によってはセイタカアワダチソウ畑状態になる広大な荒れ地、その先にアパートが見えるこの景色は通ったことのある人ならかなり馴染み深いだろう。


特に名前がついているわけではないが車を運転する人なら「岡ノ辻の交差点」と言えばここだろうと理解できる程度の場所だ。見かけは十字路だが右折すると山口宇部道路の上を跨道橋で通って子落とし坂に至る市道岡ノ辻新浦線、左折は自動車学校へ至る地元管理の道で、亀浦方面から来た車の殆どはここで右折する。
本編および関連する記事で「岡ノ辻交差点」と言えばこの先の十字路を指している

さて、例の跨道橋は岡ノ辻交差点より更に北側にある。距離にして市道の跨道橋より500m程度北側、市道丸山黒岩小串線を直進して次の住宅地に出入りする押しボタン式信号機がある場所あたりから右へ入ったところと頭に入れていた。

その押しボタン式信号機のある三差路である。団地から出る取り付け道から撮影している。
正面の道路反対側に見えるレンガに囲まれた祠は岡ノ辻八王子社だ。
派生記事を含めて市道の記事化を終えているのでリンク張るだけ…楽チンだね♪


変なアングルから撮影しているようだが、実は先の岡ノ辻交差点で写真を撮った後に左折して自動車学校の方へ降りる道に入って寄り道していた。別件でちょっと調べておきたいネタがあった。その後、住宅地の中の道を通ってここへ出てきた次第だ。時刻は既に午後4時近く。天気は曇りで暑いアツイと嘆かなくても済む気温である。しかしスタートが遅かった上に寄り道が過ぎた。
自転車は左側通行なので、当初車道の左端をゆっくり走りつつ右側に目を遣っていた。この辺りは道路際の殆どに住宅が並びその向こうは見えない。もっとも高低差があるから住宅がなくても山口宇部道路は直接は見えないと思うが…

枝道を見つけられないままズルズルと進んでしまった。
ここから先は緩い下り坂だ。行き過ぎた後での引き返しは登りになるので、下りきってしまう前にもう少し丹念に探さなければならない。


ここで一旦道路を横切って右側へ移った。
上の写真でも望んでいる方向へ進むような道が見えるが、民家の庭先への乗り入れ口でさすがに自転車はおろか徒歩でも進攻するわけにはいかない。

押しボタン式信号の手前、ある歯科医院の横まで戻ってきたところで普通車でも入れる程度の枝道があった。


最初ここではないだろうと軽く流していたのも、押しボタン式信号機に近すぎたからだ。跨道橋の位置を地図で確認したとき「押しボタンよりも100m程度北側」と頭に入れていた。あれでも先でこの枝道は進行方向を北側へ振っているかも知れない。
それで一応自転車を乗り入れたのだが、意図した方向に進まなかったのでそそくさと引き返した。

位置的には最初に引き返した後岡ノ辻バス停付近がもっとも有力なのだが、どう見てもその近辺には山口宇部道路の方へ向かう獣道らしきものも見つからなかった。

後岡ノ辻バス停を過ぎると市道右側に一戸建ての寄り集まる住宅地になり市道からも乗り入れ口がいくつかある。そのうちの最初の団地へ乗り入れた。
名前の分からない団地は山口宇部道路の方へ向かってやや下っていた。その途中に地元管理の公園を見つけた。
これのみ後日19日踏査時の撮影


入口に岡ノ辻迫田公園という標識柱があった。
この住宅地に暮らす子どもたち向けの公園らしい。あまり訪れる人がないのか園内はやや草地が目立った。


上の写真を撮ったのは位置を確認するためと、迫田という地名の確認できる資料採取のためだった。市公園緑地課の管理する公園ではなく記事化も予定していないので近接写真をあと一枚撮影しただけで立ち去った。
そのときは何も深く考えていなかった

この住宅団地の通路は山口宇部道路の方へ下るだけ下っていたものの、繋がる道は見当たらなかった。まあ、団地内からあの跨道橋へ繋がる道が簡単に見つかるなどさすがにそんな虫の良い想像はしなかったが…
跨道橋そのものは山口宇部道路から容易に観察できるし、今の瞬間でもその下を車が通過しているだろう。それほど苦労する物件でもないと楽観視していたのだが早くも先行きに暗雲がかかり始めていた。

周囲の眺めが効かないのが悪戦苦闘の原因である。そもそも現在居る場所に対してあの跨道橋がどの方向でどの程度離れているやらも分からない。
そこでまずは自分の現在位置だけでも確認しようと思った。


団地のプロパンガス庫からフェンス越しに身を乗り出している。
思いの外山口宇部道路は近いところを通っていた。高低差もかなり少なくなっている。先の方に見えるのは迫の田池だ。


現在のところいつもそうなのだが、よほど複雑な場所にある物件以外は手書きの地図など携行しない。ましてスマホのような文明の利器も持ち合わせていないのでGPS機能を使って自分の居場所を突き止めるといった芸当もできない。
「そろそろスマホくらい持てよ」という読者の声が聞こえてきそうだ…

アジトを出る前に地図を眺め、位置関係を頭に入れてそれっきりである。それでも迫の田池があの位置に見えるということは…跨道橋は上の写真で言えば右側だ。つまり既に通り過ぎている。このことから2つある跨道橋の双方とも現在は接近する安泰な道がないか、私有地から直接伸びているのではと推察された。
上からではダメだ。下の道から探そう…
団地内の道はループになっていて何処にも出られず、また後岡ノ辻バス停のある市道まで自転車で登り直さなければならなかった。

さて再び市道まで戻ってきた。
下の道へ降りるのにまた岡ノ辻交差点まで引き返すなんて真っ平ゴメンである。この近くから降りる道を探した方が早い。それですぐ次の枝道から右に入った。


そこは先のとは独立した住宅団地になっていた。市道レポートでも書いたように統計調査で一度だけ訪れたことがある場所だが、遙か昔のことで今はさっぱり思い出せない。下の道へ降りられなければまた引き返しになるなーと思いつつも住宅地の一番奥まで自転車を転がせた。
写真は撮らなかったが、住宅地のどん詰まりに簡易な柵がされた細い道を見つけた。四輪は通れないが自転車なら通れそうな幅だったので、取りあえず下の道へ降りられることが分かってホッとした。

ついでながらこの団地内から跨道橋の方へ高度を下げずに進める道がないか探した。そしてすぐ次のカーブに奇妙な場所を見つけた。


地図で示すとこの場所になる。


カーブから外へかなりの勾配で下るコンクリート路がある。その横にはすっかり藪に包まれたコンクリートの小屋らしきものがあった。間違って人や車が入り込まないよう入口にはロープが張られていたし、側溝には蓋がかかっていない。先の方は藪で道はなかった。

跨道橋への経路探しからは離れるがこの先にあるコンクリートの小屋にちょっと興味をそそられた。如何にも廃物の匂いを放っている。窓がないので民家ではなさそうだ。
手前の紐は立入禁止を訴えるほどの主張はなく容易に跨ぎ越せる状態だったが、すぐ近くの家で庭先に人の姿が見えていたので接近は自重した。カメラを持ったまま自転車を押し歩きしているだけで怪しい人と疑われるに充分だったので。
後日の踏査でこれが何であるか一通りチェックは行っている[3]

降りる道へ向かおうと引き返したちょうどそのとき、一台の原付がその狭い道へ入っていくのを見た。エンジン音が次第に遠のいたので、どうやら原付でも乗って通れる程度の降りる道があると悟った。

後を追うように自転車を押し歩きすると、確かに真っ直ぐ下の道へ降りる坂道に出会った。


原付のオッサンは乗ったまま下ったようだが、それほど幅がない道でかなり急だ。大人しく降りて押し歩きした。そして下の道へ到達するまでもなく出てきた場所を理解した。


ちょうど山口宇部道路の下をボックスでくぐる場所だった。
同時に今下ってきた細い坂道について、これが以前何かの書物で解説されていた迫田坂ではないかと感じた。
時系列は前後するが、この坂道は翌日再び訪れて下から辿ることで写真を撮り直している。詳細は以下の派生記事を参照。[2]
派生記事: 迫田にある里道の坂
さて、今度は下の道からの探索だ。跨道橋はこのボックスカルバートより南にあるので、市道迫田長谷線を逆方向に進む。
山口宇部道路のある右側の斜面を観察しつつ進んだ。


山の斜面が迫ってくる場所で、一ヶ所ガードパイプが切れている場所を見つけた。
これはかなり怪しい。


水路には花崗岩を並べて拵えた石橋が架かっている。先の方は山道らしき踏み跡も明白だった。昔からある道だと言われれば素直に納得いくような外観である。しかし…そこには進攻を躊躇わせる要素がいくつかあった。
ロープが張られ通れなくなっている。
最近、こういう場合の対処に悩んでいる。ロープだけ張られていてもその意図が読めないからだ。
この道が真に里道なら、何の理由もなしに一般の通行を拒絶する権利は誰にもない。誰でも勝手にロープを解いて通って構わないのである。他方、私有地に向かう私道の場合はとてもそうはいかない。まったく明白な不法侵入であり折悪しく土地の所有者が近くに居たなら場合によっては警察沙汰になる。

一番あり得るのは、里道で誰でも通って構わないけど先で道が荒れているとか草刈りなどの普請がされておらずマトモに通り抜けられないから塞いでいるといった状況だ。間違って入り込む通行人が現れないようにとの配慮と善意に考えたい。他方、私のように道を通ること自体が目的ではない場合は戸惑うし周囲の状況によっては進攻を諦める原因になる。
そして実際、このときは進攻を見合わせざるを得なかった。それほど離れていない畑で野良仕事なさっている人の姿が見えていたからだ。石橋を渡った先にその人の土地があるなら、私がロープを跨いだ瞬間遠くから「そこへ入るな!ロープが張ってあるだろうが!」などと怒鳴られるのは確実だ。
まあ、誰か近くに居るのにわざわざ通れなくしてある場所へ挑発的に入ってみせることもないだろう…と思ってもう少し先をあたった。

市道萩原住宅2号線との分岐点である。
この辺りは江頭川を隔ててすぐみっしりとした藪である。ガードパイプの切れている場所はなかった。


その先で第二の「有望な場所」を見つけた。
これは市道の起点から来たとき逆向きのスロープになっているためか見落とされていた。


今度は先に見た道よりも広い。軽トラ程度が往来しているらしくダブルトラックができていた。
しかし近づいてみるまでもなくこれは調査の対象外だった。


スロープの先に鉄門扉が設置され、遠目にも立入禁止の看板が見えていたからだ。このような場合、目的場所へ到達可能か否かにかかわらず進攻は非常識の部類である。立入禁止を明記しているということはこの先はほぼ間違いなく私有地だ。里道がこのような形で塞がれていることは通常あり得ないからだ。
遠方からのズーム写真はこちら

更に市道を起点側へ戻る。あまり戻り過ぎると再びターゲットから遠ざかってしまうのだが、あと一つチェックしておきたい怪しい枝道があった。


市道のかなり起点に近い場所である。
ここから進攻してみて可能性がなさそうだったら下からの道も諦めて次の手段を考えよう…


果たして予想通り可能性がなかった。住宅地の道は更にターゲットから遠ざかる向きへ進んでいたし、山の斜面を登るだけ登って何処にも出られなかった。山口宇部道路はかなり近い場所を通っているようで、車の行き交う音が聞こえていた。コンクリートの階段も見つけていたが、民家の庭から伸びていたので遠目に確認するだけで写真も撮らずそのまま引き返した。

一連の攻略態度は何だか酷く弱気で半ば諦めているようにも見えるが、そうでもない。あの跨道橋へ到達する里道を上下の市道から見つけ出す必要はなく、どうしても駄目なら奥の手を考えてあったからだ。即ち「山口宇部道路から直接跨道橋を攻める」手段だ。

再び市道へ戻ったとき、山口宇部道路へ向かうのにどちらへ行くべきかしばし考えた。岡ノ辻からの方が明白に近いが、そのためには子落とし坂を登らなければならない。それも坂を登った後ですぐ岡ノ辻I.C.から思い切りスロープを下ることになる。いくら近くてもあまりに労力の無駄が多い。

それで距離は犠牲にして再び市道迫田長谷線を終点に向かって進んだ。


山口宇部道路のボックスカルバートをくぐるだけで、残念ながらすぐ上には出られない。元々が有料道路であり現在も歩行者向けの仕様になっていないので階段も備わっていないのである。したがって律儀に車も走るルートを経て大回りせざるを得なかった。
時刻は午後4時半近くで空模様も若干怪しくなっていたので、そろそろ本気を出すべく先を急いだ。

(「山口宇部道路・未知の跨道橋【2】」へ続く)
出典および編集追記:

1. 造られた時期はよく分からないが当初は市道との連絡スロープが存在しなかった。昭和49年度版の航空映像でも純粋な立体交差になっていることが確認される。


2. この住宅地一角の雨水を集めて沢下の江頭川へ降ろすためのポンプ所ないしは緩衝池と思われる。下の沢地から高低差があるので一旦ここへ貯留する形で排水しているようである。なお、このポンプ所より先に道はなく行き止まりだった。

3. この派生記事は後に迫田坂として単独記事に昇格されたが、更に後になって迫田坂は別の里道にある坂と判明したため再度派生記事に降格されている。本来の迫田坂はテキスト中のリンクを参照。

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