仏坂隧道(初回踏査・美祢市側)【1】

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現地踏査日:2011/12/23
記事公開日:2011/12/31
(「仏坂隧道(初回探索・宇部市側)」の続き)
中国自動車道の仏坂トンネルのすぐ近くに
いつのものか分からない程に古い
素堀りの隧道がある。
自分で直接調べたわけではないこの話を手がかりに、いち早く現地へ赴いて坑口を発見したという情報を得た。今も閉塞していないらしく宇部側へ抜けることができたという追加の情報も入ってきた。私は藪の勢いが収まる秋口以降、現地を訪れ、その隧道が何処にあるのか正確な位置を断定し、現地の映像を持ち帰りたいと思った。

12月の下旬、寒い日の午後に私はこの隧道を宇部市側と美祢市側の双方からアクセスする計画をたてた。既に前編でお伝えしたように宇部市側の方では何らの手がかりも得られなかったので、坑口の存在が知られている美祢市側は丹念に調べる積もりで中国自動車道の仏坂トンネル方向に車を走らせていた。
前編でも少し述べたが、この隧道の名前が「仏坂隧道」として確定的に知られている訳ではない。毎回「素堀りの隧道」では分かりづらいので、中国自動車道の仏坂トンネルに倣ってこの隧道を「仏坂隧道」、この場所および峠部分を「仏坂」「仏坂峠」などと書いている。便宜上私が付けたに過ぎないことを断っておく。
場所は中国自動車道の仏坂トンネル下り線の坑口付近である。
私はまず上り線側で仏坂トンネルの写真を撮影後、下り線の坑口横になるこの場所に車を移動した。


現地へ到着早々、最初にしたのは車の向きを変えておくことだった。
それと言うのも仏坂トンネルの真上に至る道と手前で分岐する道の間に蓋のない溝が草で隠れていたからだ。
踏査を終えて気が緩んでいるとき無造作に車を転回させると脱輪するだろう…気がついたときにやっておかなければならない。


枝分かれの道は、すぐ先で再び枝分かれしていた。
右に向かう道はすぐ行き止まりになっているが、何かが見えている。


砂防ダムだった。
ダムは踏査のテーマ対象とは言ってもさすがに何処にでもある規模の砂防ダムは対象外だ。
もっともこういう構造物を眺めるのも決して嫌いではない


この近辺は土質が脆いのか湧水が多いのか、法面を固めたり砂防ダムを設置したりの場所が結構目立つ。地図の掲載は省略するが、この場所を航空映像で眺めると砂防ダムが4基くらい連なって設置されているのが分かる。特に最上部は土砂崩れで地肌が顕わになっている。

奥へ向かって伸びる分岐を進む。地面の至る所に杉の枝が散乱していた。しかしある程度車が汚れるのも気にならなけれ車でも進攻できそうだ。


実際、ここまで軽トラが入ってきたようなタイヤ痕があった。
結構出入りのある場所なのだろうか。


先の少し広くなっているところに複数のタイヤ痕があり、枝道部分を利用して向きを変えたらしい。
もしかして先駆者たちのタイヤ痕?


軽トラ程度ならどうにか進攻できる幅の道は、先で終わりを告げるようだ。
山の斜面を伐採したような場所が見えてきた。そこまでは最近できたタイヤ痕はない。


何となくそれらしき場所へ到達したような気配を感じた。
山の斜面を溝状に削り取ったような道形が軽くカーブしつつ伸びている。それにしても一体いつ伐採したのだろうか…周囲は適当な長さに伐られた枝や幹が無秩序に散乱していた。


嫌な予感がした。
周囲の山裾は高くなりながら、溝状に高さを変えず進む線形がある。どう観てもこれは隧道に向かう典型的な地形だ。しかしこの溝状領域まで木の枝や幹がなだれ込んでいて、歩きづらいことこの上ない。坑口らしき黒いものが見えるがまだ断定はできない。


足元は非常に悪い。それだけなら我慢できるのだが、とにかくこの場所と言うか山全体に湧水が目立つ。至る所に水溜まりが出来ていて不用意に踏み込めなかった。
天気は曇りで既に午後でもあり、更に深い堀割の中で光量不足を招いている。肉眼では割とハッキリ見えているのだが、撮影された画像は悉くピントが甘かった。
以下見苦しい写真が目立つがご容赦頂きたい


これなど典型例だ。
撮影時にはちゃんと見えていながら、撮れた写真はまるで手ブレを起こしているかのようだ。
光量調整が簡単にできるカメラに買い換えるべきか…


周囲を水浸しにするほどの湧水を供給しているのは、目の前にある坑口に違いなかった。
足元が覚束ない。やはり深い長靴を持ってくるべきだった。
野山に立ち寄ったのだが足に合わないきつい長靴しかなかった…


全体像は未だ把握できないがもう間違いない。これが仏坂隧道の美祢側坑口だ。
坑口の手前に枝を沢山伴った大きな伐採樹が垂れかかっている。枝か邪魔で接近に骨が折れた。


足掛かりになる幹を厳選して踏み台にしつつ進む。細い幹だと足場にしても水没してしまう程の溜まり水だ。
何とか腕を伸ばす。


これ以上の接近は無理。もし幹から足を滑らしたら帰りの道中ずっと足が冷たいのを我慢しなければならない。バランスを保つのに充分なしっかりした幹を見つけるのも大変だ。
坑口の岩肌と崩落した土砂が見えている。


ここで初めてフラッシュモードをオンにして撮影した。
こんな場所でバッテリー切れになっても交換不能…フラッシュオフにしていた
手前の木々が照らし出されるだけで内部は全く写らなかった。


ダメだ。あまりにも条件が悪すぎる。
日が射さないから写真は不鮮明だし、湧き水が多いし、何よりもこの伐採樹のせいで坑口の鮮明な写真が撮れない。樹木が倒れて出来た自然の洞ではないかと言われても反論できなさそうだ。

同じ場所から振り返って撮影。こんな状況なのだ。


なべて古い隧道というものはおどろおどろしい要素があるものだが、現地へ赴けば認識していた以上の不気味さを感じた。久し振りに暗黒の坑口に臨んで本能的な恐怖を感じたのかも知れない。いずれにしろ前進はできないし、伐採樹をかき分けて撮影できる写真の品位もおのずから限定された。

そこで別方面からのアクセスを目論んで一旦引き返すことにしたのだが、来た経路を安全に戻るにも細心の注意が要った。

(「仏坂隧道(初回踏査・美祢市側)【2】」へ続く)

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