御手洗様で拾得されたデジタルカメラ

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記事作成日:2016/10/9
ここでは、2016年10月7日に御手洗様で発見された持ち主不明のデジタルカメラについて記述する。
写真は第一発見時の映像。


御手洗様の位置図を示す。


場所的には真締川を川添地区の手前まで遡行したところ、南小羽山へ上がる道(市道真締川南小羽山線)の反対側の御手洗橋を渡った袂である。

このドキュメントは、カメラを失われて探していらっしゃるかも知れない方への情報提供を主眼に作成しているが、一般に何かの重要なものを拾得した場合どのような処理をするのが適正なのかについての参考にもなると思う。
以下、詳細報告を兼ねて時系列を追って記述する。物件の記録目的ではないので、当サイトの管理ドキュメントを置いたフォルダへ仮置きしている。先々で移動または記事ごと削除される可能性がある。

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この日は上宇部方面へ1件訪問する以外に仕事の用事がなかった。
現在、東岐波にある西蓮寺坂の時系列記事を作成している。日が暮れて通りかかった旅人に赤子を抱かせようという伝承のある坂だ。これと類似する話が小串の南向き地蔵にもあるという記述を見つけ[1]、小串の湯田・風呂ノ浴辺りを探してみた。しかし現物を見つけることができなかったので、諦めて訪問先へ向かっていた。

寺の前方面へ行く経路は何本もある。訪問先は約束時間がなく別に急ぐこともなかった。まして自転車であり最短経路を求める必要もないので、普段あまり通らない御手洗橋経由に自転車を乗り入れた。

手持ちのカメラ不具合に悩まされ良い写真が撮れずにいたのだが、ごく最近マニュアル設定である程度回避できることが分かった。良好な写真が撮れたら既存の記事に掲載されている分を差し替える目的で、御手洗橋とそのすぐ近くにある祠へ立ち寄った。この祠については以下の記事に書いている。
総括記事: 御手洗様
橋の近くに自転車を停めると、この祠が正面に見える。訪れるのは初めてではなくこれで数回目である。このとき祠の前に新しい榊と幣が捧げられているのが目を惹いた。
《 発見 》
現地で撮影する過程で、祠を背面から撮影しようと回り込んだとき、入口の石段横の植え込みに白いカメラがぶら下げられているのを見つけた。本記事の冒頭に掲載したショットがそうである。
御手洗様の記事の最後のショットにも写っているがこのときは気づいていなかった

近づいたところ。
入口の石段に対して逆方向だったので、来るときはまったく気づかなかった。


最初これを見つけたとき、どういう事情あってカメラが置き去りにされているのか理解できなかった。最初はすぐ裏のお宅の方がすぐ戻って来る積もりで掛けておかれたのだろうかと思った。それと言うのも私がこの場所に来て撮影開始したとき、植え込み越しに庭先を掃き掃除なさる方の姿が見受けられたからだ。榊と幣が新しくなっていたので、御手洗様を看ていらっしゃる方かも知れない。しかし私がカメラに気づいたときにはもう庭先に人の姿はなかったし、まったく無関係で私のように撮影目的で訪れた人のものかも知れないとも思った。

あるいは近くに落ちていたのを別の来訪者が木の枝に掛けたのだろうか。
取りあえず概要が分かるようストラップにぶら下がった状態のカメラを撮影している。


このときは上の一枚を撮っただけで、動くかどうかの確認操作はしなかった。すぐ戻って来る積もりで仮に置いたのだろうという考えと、人様のものを持ち出したくない気持ちから撮影を終えた後カメラはそのままにして退出した。寺の前町への訪問予定があり、時刻も午後4時半近くだったので。
《 帰宅後の動向 》
【 判断の変化 】
寺の前町での用事を終えてもう一箇所予定していた撮影地(旧給食センター)に立ち寄ってアジトへ帰宅した。それから夕食や雑事諸々を済ませて本日採取した画像の取り込み作業を行った。取り込んだ画像を当サイトの基準に見合うようリネーム[2]した後、出来映えをチェックしていた。一連の原典画像を見ているうちに御手洗様のところにあったあのカメラのことを思い出した。
現地ではワンショット撮ったきりで顧みなかったのだが、上の画像を見てもカメラは新品同様に見えた。壊れたから棄てたという風にはとても見えない。特にストラップが木の枝に掛かっていたという状況から、ここを訪れた人が別のことをしようとカメラを木の枝に掛けたのを忘れて帰って仕舞われたのでは…と思われた。

後から思えば、最初の時点でカメラを保護預かりして持ち帰るか、訪れたとき裏で掃除をなさっていた方に尋ねてみれば良かったかも知れない。ただ、現地では近くの人が落とし物を見つけて分かるように掛けたとも思えたし、明らかに自分のものではないカメラを触る気にならなかった。そんなのいちいち自分が肝を焼くことではない…家に帰ってカメラが無いことに気づけば、ここへ忘れたことを思い出した人が取りに戻るだろう…という考えもあった。

しかし尚も本人が気づかずカメラがそのままになっていたとしたなら、そのまま捨て置いていてはならないという気持ちが働く新たな要因が生まれた。
明日は午後から雨降りになる。
天気が下り坂となること自体は分かっていたが、明日8日の予報は雨で、午後は強い雨という予報が出ていた。[3]防水機構を謳っている製品でなければ、デジカメは雨に打たれれば故障する。それもちょっと水濡れする位ならまだしも、置き去り場所は雨風など凌げないモロに屋外の木の枝だ。降りしきる雨の中でマル一日放置されればまず駄目になるだろう。

どうも私と同様に御手洗様を訪れたある方がうっかり忘れてしまわれたように思われてならなかった。人のことなので別に首を突っ込まなくていい(この辺の言葉で言えば「転婆を焼く」)のだが、もし忘れたなら何処で無くしたか分からず探していらっしゃる筈だ。何よりも御手洗様はそれほどメジャーな訪問地ではない。それほどレアな場所をカメラ携えて訪れるような方なら、きっと私と同様の活動をされているのだろう。この種の活動ではカメラの損失もだが、中に入っている画像データの逸失は更に大きい。私が第一発見者ではないかも知れないが、明日の雨降りに遭ったらカメラが駄目になると知っていながら何もしないというのは道義ではない。

時刻は午後7時半だった。もう4時間近く経っているから忘れ物に気づいた人が取りに戻っている可能性はあるが、恐らくそうはなっていないだろうと考えて行動を起こすことにした。
【 下準備 】
もしカメラがそのままになっていたなら、すべきアクションは拾得物として警察に届けることである。デジカメは昔より安くなっているとは言え、どの種のカメラでも万円単位する物品である。まして中に入っている画像は、カメラの所有者にとってはもしかして算定不能なほど重要なものかも知れない。

ただ、迂闊な行為も取れないと思った。私がカメラを回収した後で翌朝本人が現地へ戻ったなら、カメラが木の枝に掛かっていないのを見て誰かに盗まれてしまったと考え落胆するだろう。カメラとも所有者ともまったく無関係な部外者の私が介入してアクションを起こすなら、齟齬が起きないような手順を踏まなければなるまい。同時に「お前このカメラをネコババしようとしただろう」という嫌疑を掛けられることを明瞭に否定する必要性からである。

そこで仮に所有者が御手洗様へ戻って来られたときにも分かるように次の文書を準備した。
雨が予測されていたので油性ボールペンで書いている


現地は祠があるだけなので恐らく真っ暗だろう。現地に着いてからではまず書けないので、あらかじめノートに上記を書き付けた。現地へ行ったときカメラが(本人が取り戻したか第三者が勝手に持ち去ったかにかかわらず)既に無くなっていたなら、この計画はまったくの骨折り損になることは承服済みだった。

アジトから御手洗様まではそんなに近くはない。狭い道なのでもちろん自転車で行くのだが、実のところわざわざこのためだけに別便で出かける面倒さはなかった。午後8時過ぎに総菜が半額になる店があり、今日はこのカメラの件がなくてもその時間に合わせて自転車で買い出しに行く腹づもりだったからである。
【 現地再訪と現地処理 】
ショルダーバッグに先ほど書いた置き手紙と懐中電灯を入れた。それからポケットにはもちろん記録用の自分のデジカメを入れた。その後で買い物するので財布とマイバッグも。

短時間に着くことが必要なので、昼間とは異なり参宮通りを走った。時刻は既に午後8時を回っていた。このとき上宇部ふれあいセンターの明かりがついているのを横目で確認したので、センターへ持って行った方が良いかも知れないと考えた。センターは私自身、御手洗様の詳細を知ることとなった上宇部郷土マップを入手した所であり、場所の説明ができるし所有者が校区内在住者であれば立ち寄る可能性が高いと思ったからだ。

現地到着。
御手洗橋の西側に外灯が備わっているだけで御手洗様のある側は真っ暗だった。


自転車を停めて懐中電灯を片手に御手洗様へ行ってみた。カメラはやはり最初に見つけたときと同じ状態で植え込みの枝にぶら下げてあった。
懐中電灯がなかったなら御手洗様の石段を登ることさえ困難だっただろう。

カメラを回収してショルダーバッグに納めると、一旦御手洗橋の外灯がある真下まで移動した。この場所では暗過ぎて何もできなかったので。

置き手紙の端に「上宇部ふれあいセンターへ」の文言を付け加えておいた。
ただ、電気が点いているだけで玄関は閉まっていて立ち寄れないかも知れないとも思った。


外灯の下で御手洗橋の欄干を使ってこの一文を追加し、カメラがぶら下げてあった木の枝に置き手紙を串刺しにしておいた。
現地へ立ち寄ればまず目に付く場所である。


マムシ避けの祠の中なら雨が降っても大丈夫だろうが、そんな所へ押し込んでは失礼だし逆に目につきづらいだろう。木の枝なら用が済んだらすぐ取り除ける。もし本人がここへ戻って書かれた内容を理解したなら自主的に除去してくれるだろう。
【 上宇部ふれあいセンター 】
カメラを保護した後は来た道をそのまま戻り、まだ明かりのついている上宇部ふれあいセンターへ立ち寄った。


果たしてふれあいセンターにはまだ担当者が数名いらした。御手洗様が市の管理案件とは思わなかったが、榊と幣が新しくなっていたので地区での清掃活動と分かれば関係者で心当たりのある方がいらっしゃるかもと思った。しかし手がかりは得られなかった。

そうとなれば、やはり拾得物として警察署へ届けるのが筋だろう。先の置き手紙を踏まえて、もし地元在住者がセンターを訪れたとき分かるようにカメラのメーカーや色などを書き留めてもらい、名刺を置いてきた。それから再びカメラをショルダーバッグに格納して警察署へ向かった。
【 宇部警察署 】
一旦買い物先もアジト前も通り過ぎて警察署へ自転車を漕いだ。夜間ライトを着けて自転車走行するのは買い物のとき位のものである。流石に夜は気温が下がってくれるので涼しく快適だ。

宇部警察署の正面玄関。
思えば訪れるのは免許証の更新期以来である。


事故事件を取り扱う部署なので24時間空いているのは分かるとして、急を要する案件でもない拾得物くらいで受け付けてくれるのだろうかという気持ちは正直あった。宿直担当が居るだけで明日の時間内に出直して欲しいと言われるかもと思ったのである。
置き手紙に「明日届けます」と書いた所以

拾得物件について告げると、専属の担当者が居るらしくすぐ呼んできますのでお待ち下さいと言われた。


ここでのやりとりは、重要な落とし物を見つけて届け出るときの参考になるだろう。なお、以下の文言は私が聞き覚えた内容を書いているだけであり、担当者の一言一句においてまで正確を期してはいないので注意されたい。
特に法律用語について厳密に確認した上で書いているわけではない

当然ながら、まず落とし場所の説明をした。市民だろうが御手洗様とか御手洗橋の袂と言っても分かる人はまず居ないので、ゼンリン(R)で場所を指し示した。それから現地に撮影目的で訪れた状況を話し、カメラが木の枝に引っ掛けられていた状態は私のデジカメ映像で説明した。それから現地では当初誰かがすぐ戻る積もりで置いてきたと考えて一旦その場を立ち去ったこと、翌日土曜日の天気予報で大雨が見込まれていて、もしカメラが回収されなかったら雨に濡れて駄目になるという考えから先ほど保護に向かった…という顛末を説明した。

担当者は拾得物件預り書に私の住所氏名と連絡先、逸失された場所の所在地、拾得されたカメラの属性を書き込んだ。その上で恐らくもっとも重要な事柄なのだろうが、次のような意向確認を受けた。
「3ヶ月ほどうちで預かりますが、持ち主が現れなかったときどうしますか??」
預り書の冒頭に有権、棄権などというチェック項目があった。そのすべてについて詳細な説明を頂いたわけではないが、要は落とし主が見つからなかったときのカメラの処遇を指示するものである。有権であればそのまま届け出者に所有権が移転するし、無権であれば当該物件を処理した警察署側になる。その後の処遇がどうなるか等は分からない。

適正な手続きを経た後でなお所有者がみつからず処分されることになるなら、有効活用してあげた方が良いのではないかと思い、当初はそう深く考えず有権を選択した。担当者はそこへチェック印を入れた。
一部個人情報にかかる部分を抹消処理しています


私の人生の中で拾得物を警察署へ届け出たのは過去一度、大学時代に宇部新川駅で裸の五千円札を出札口付近で拾った件である。このときは半年ほど公示[4]後(殆ど予測されたことであるが)落とし主が見つからなかったため通知が来た。その通知を警察署へ持参し、所定の手続きを経ることで私のものとなった。カメラのような物品の場合はどうなるのだろうか。
「持ち主が名乗り出たときと、3ヶ月経っても現れなかったときのそれぞれの処理を教えて下さい。」
「名乗り出られた場合、うちの方から所有者に拾得し届け出られた方へ所定のお礼をして頂くよう指導します。その際にここへ記入された連絡先は届け出られた方へお伝えします。また、期間内に現れなかった場合はうちの方から通知いたします。2ヶ月以内にその通知書を持って来られれば当該物件をお渡ししますが、それ以降はうちの方で処分するようになります。」
なるほど…冒頭の項目で棄権などのオプションがあるのは、些末な拾得物でお礼を求めるまでもないと考えたり、無用な接触は煩わしいと思う拾得者の判断によるものだろう。特に有権を選択すると、公告期間が経過した後に連絡をする必要性から拾得者の住所氏名を記入するのだが、落とし主が見つかったときこれらの情報も露呈してしまう。そういうのが嫌だという人も権利放棄を選択するかも知れない。

そうは言っても一定期間の公告後、落とし主が名乗り出なければ拾得者へ所有権が移り自分のものとなるのは完全に法的に認められている処理である。有権を選択することに後ろめたさを感じる必要は何もない。私の場合、たしかに以前から手持ちのカメラの調子が悪く新しいカメラが欲しい環境に置かれているのは確かではあるが、そもそも人様の所有物である。本当に欲しくて必要なら無理してでも買うものだ。「御手洗様からの贈り物なのかも…」という意見もあり得る[5]ことだろうが、少なくとも私自身にはそういう感覚はまったくなかった。落とし主にとっては、カメラ以上に中に入っている画像を失うダメージが大きいのではと思われたからだ。

例えば公告終了後なお落とし主が見つからず私のものとなった折に、中へ保存されている画像を元に本人を捜し当てるというのはどうだろうか。本件については確か海外で旅行中にカメラを逸失してしまい、善意の発見者が撮影された画像を元に落とし主を解析して遙か離れた異国の地から愛用のカメラが画像と共に戻ってきた…という感動の話を聞いたことがある。旅行先でカメラをなくした本人はまさか戻って来るとは思わず大変に感激したという美談となっているが、一般論としてそのようなことをすべきではないと明言された。担当者の話は次のようである。
「(中に保存されている画像などを元に落とし主を探すというのは)個人情報の観点からも止めた方が良いと思います。どのような方が落とされたか分からないこと、中の画像を見てまで落とし主を捜されることに嫌悪感を持たれる可能性があるからです。」
本当にこのカメラ(と中に保存されている画像)を大事なものと考えていた落とし主なら、間違いなく感謝されるだろう。少なくとも私ならそうするが、自分と同じ感覚で一般論を唱えてはならない。家じゅうをどう探しても見つからず落とした場所も分からないので割り切って新しいカメラを買い直しているかも知れないし、私よりずっと裕福な方で数ある数台のカメラのうちの一つかも知れない。たまたま金曜日の午後発見されただけで、カメラ自体はその数日前から置き去り状態だったかも知れないし、持ち主が遠方在住者でカメラを回収するにも宇部警察署へ出向くコストが高くつく可能性だってある。

実のところ、再度回収に向かって御手洗橋の欄干で書き置きに追記したとき、当該カメラが正常動作するかスイッチを入れている。著しく破損していて動作しなのが明白なら、棄てる積もりだったかも知れないという見方ができるだろう。
電源スイッチを入れたとき数枚の画像が表示され正常に動作するらしいことを確認した。しかし他社カメラで操作方法が分からなかったことと、迂闊に触り回っていて保存された画像を誤消去する恐れがあると考えたのでそれ以上は触っていない。この電源投入操作を行ったことについては担当者にも正直に明言したが、個人情報保護の観点からも一般にはすべきことではない。

なかなか厳格な話になったが、何も拾得物を届けた自分を「勝手に人様のデジカメを操作した」などと悪者にすることもないだろう。私は何を問われても完全に明瞭に説明できるように、夕暮れ前に御手洗様を訪れて最初にこのカメラを撮影した画像から今さっきのこと現地で懐中電灯を持ってカメラを回収し、置き手紙を現地へ置くところまでの経緯も撮影して担当者に話した。
「賢明な判断だったと思います。普通そこまでなさる方っていらっしゃらないですから。落とし主が見つかるといいですね。」
書類を作成された後は、そんな感じのちょっとした世間話になった。宇部警察署に来るならば出来ればこういった「善い行い」で訪れたいものだと感じた。担当者から拾得物件預り書の控えを受け取って退出した。

もし明日雨降りの予報でなかったなら…さあ私はどうしただろう。所詮人様のことだし自分が首を突っ込むこともあるまい…と早々に買い物へ行っていただろうか。
御手洗様は地元在住民か、あるいはよほどこの方面の興味がなければまず訪れることも知ることもない場所だ。そして自分と同様にこういった史跡を訪ねて撮影されるような方なら、画像の逸失は手痛いだろう。

不幸なことに、もし期間内に落とし主が名乗り出ることなく権利が私に移転するなら、その時点でカメラは初期化されるだろう。個人情報保護の観点から、前の撮影者が写した画像が残ったままで私に引き渡される筈がないからである。画像が消去されてしまう前に本人の許へ戻ることを願う。
警察署の方でメディアのバックアップは…当然そこまでやらないだろう
【 そして我が身にも… 】
宇部警察署を出たときには既に午後8時半を過ぎていた。あまりに遅いのでもう半額シール付きの総菜とか残ってないだろうなーと思いつついつも行くお店へ買い物に行った。そしていくつか辛うじて売れ残っている総菜をカゴに入れて持ち帰り(拾得物件じゃないよw)本日の夕食に充てることにした。

ここまで、なかなかいい感じの物語風になっていたのだが、最後にズッコケの場面があった。
アジトへ帰って自転車を駐輪場へ入れようとしたときのこと…
これって私のハンカチやんか…sweat


また、やっちまった。
ポケットに入れたジャガードタオルである。あろうことかアジトを出ようと自転車に跨がる前からポケットより逸脱していたのである。
まったく…お前さんはどうかしてるよ。


私の履くスポーツウェアとジャガードタオル。これ以上に相性の悪い仲を私は知らない。どういう訳か、このウェアのポケットに入れたジャガードタオルはかならずポケットから落ちるのである。もうかれこれ十枚以上のジャガードタオルを失った。
一番甚だしいのは、すぐ要るからとアジトから数百メートル離れたお店で新しいのを買って一度きり手を拭いてポケットに入れ、アジトに帰ったときにはもう無くなっていた事例である。落としやすいと分かっているので、自転車を漕ぐときもしばしば右手でポケットに触れて存在を確かめるのだが、それを数回やっている間に無くなっている事例すらあった。

落としたジャガードタオルが見つかったのは今までに一度しかない。写真は小羽山に行くときで、本当に好きな柄のタオルだったので本気で探し、坂道の下まで自転車を押し歩きしてやっと見つけている。
これ以来このお気に入りのジャガードタオルは外へ持ち出さなくなった


ジャガードタオル自体まったく安いものなのだが、結構気に入ったタオルをもう何枚も落としているので、今では落としても構わないタオルでしかポケットへ入れないことにしている。値段よりも「落とさないよう気をつけているのに落としてしまう」ダメージの方が大きい。
ウェアのポケットの素材とジャガードタオルの摩擦、そして自転車を漕ぐ動作がくせ者だ。ペダルを漕ぐために足を上下する動作につれてタオルが擦れてポケットから自然と「這い出て」しまうらしい。落とす瞬間を見たことがないので詳細はまったく不明だ。こういった拾得物件が届け出られることはまずなく、道路管理者にゴミとして処分されているのだろう。
【 付随する拾得物件 】
そう言えば、先月も落とし物を拾っていたのを思い出した。
市役所へ登庁したときには庁舎裏手の自転車置き場に置いている。用事を済ませて帰ろうとしたとき、薄暗い自転車置き場に財布が落ちていたのだった。


このとき、すぐポケットから落ちた財布と気づいたので状況説明のため撮影した。


拾い上げて申し訳ないながら中を開けさせて頂いた。
カードなど何か手がかりになるものがあるかも知れないと思ったからだ。


その後、市役所玄関から正面にある総合受付に行って財布を拾ったと届け出た。デジカメ画像を見せつつ場所など状況説明し、窓口の担当者に財布を渡して立ち去った。[6]拾得物としての正規な手続きをしていないので、このような場合は拾得者無しのまま警察署に届け出られるのだろうか…もっとも小銭ジャラジャラ状態だから落としたと分かっていても多分諦めるだろうが…

更には、数日前のこと半額シールのお総菜を買ったあのお店で買ったものをマイバッグへ入れようとしていたとき、サッカー台の上に袋へ入れられなかったサンドイッチ2つが置き去りになっているのを見つけてお店の人へ届けている。見つけるのはいいとして、いつか自分も大切なものを落としてしまう前兆ではないか…とかなり気になっている次第だ。
《 記事公開後の変化 》
【 拾得の翌日 】
果たして天気予報の通り、翌日(8日)は午後から雨になった。私は隣町へバドしに行っていた。帰る午後5時過ぎのこと、車を運転していて前がよく見えないほどの酷い豪雨に見舞われている。
写真は国道2号岡の坂交差点での信号待ち


このときは市内ほぼ全域に酷い雨が30分以上にわたって降っている。もしカメラを回収していなかったら間違いなく水濡れで故障していただろう。

更にその翌日(9日)は東小羽山方面へ行く用事があった。急ぎではないので自転車を漕ぎ、その途中で立ち寄ってみた。前日の夕方の雨は異常だったので置き手紙が飛ばされているかもと思ったからである。

現地へ着いたときの最初の状態。
祠の右側奥まで飛ばされているのが見えている。


叩きつけるような雨だったため置き手紙は飛ばされるだけではなく半分に折れてその上に泥まで被っていた。


こんな降り方なら外へ放置されたままなら水濡れでまずカメラは駄目になっていただろう。回収して正解だった。

文字の書いていない部分に穴を開けて今度は植え込みの枝2箇所で固定しておいた。
まあここまでやっても年月が経てばまた外れるなり破れるなりして飛ぶのは仕方ないが…


ここを訪れればすぐ分かる場所に掲示している。
用事が済んだらいつでも外して捨て去ることができる。


ここまでやっておけば充分だろう。後は善きにお取り計らい願いたい。

前述の通り、本拾得物は届け出られた日から起算して3ヶ月間公示される。解決時の状況によっては本記事ごと撤収するかも知れない。
【 所有権移転手続き 】
項目記述日:2017/1/24
落とし主が所有権を維持できるのは3ヶ月後までの2017年1月7日である。それ故に1月8日になれば法律に則った方法で私が所有権を得ることとなる。ただしそのためには権利移転から3ヶ月以内に受領を申し出る必要がある。それを過ぎると警察の方で適正に処分されることとなっていた。

上記の記述を行った後も何の情報もなく、落とし主が見つからない可能性が濃厚だったので御手洗様には一度も訪れていない。そのまま年が明けて上記の期日を迎えた。ちなみに期日を迎えても何の連絡もなかった。いつ宇部警察署を訪れてもいいのだが、特に急ぐことでもなく同月23日に行った。


受領するためには拾得物預かり書の他に本人確認できるものと印鑑が要ることが書かれていた。それらを揃えて会計課へ出向いた。暫く待った後、私が拾ったあの白いデジタルカメラが提示された。免許証で本人確認後、受領したことを示す記述として住所・氏名・連絡先の記述を求められた。そして捺印後、カメラが渡された。
「それではお渡しします。なお、カメラに装填されていた記録メディアは個人情報保護の観点からうちの方で処分させて頂きました。」
残念だがこれは当然だろう。たとえ電磁的手法で抹消したとしてもメディアの現物があるならそれを復旧してしまう可能性があるからだ。こうしてカメラは私の所有物となった。
【 知人への譲渡 】
項目記述日:2017/8/23
こうして正規の手続きを経て拾得されたカメラは私のものになったのだが、まだ先があった。ここからは現代社会の商品消費を反映するあまり喜ばしくないものかも知れない後日談となる。

せっかく救出したカメラなので、私は何とかそれを役立たせたいと思った。しかし購入したものではないからカメラ本体と挿入されているバッテリー、記録メディアだけである。今すぐ撮影はできるがこのままではそれ以上のことはできない。ケーブルが付属していないからPCへ画像を取り込むことができないし、何よりも装填されたバッテリーが尽きたら充電器がないのでもはや使えなくなる。少なくともPCへ取り込む接続コードと充電器がなければただの飾りである。そこで現物を持って最寄りの家電店へ行って相談した。

家電店の担当者からはがっかりさせるような答えばかりが返ってきた。そもそもこのカメラはかなり型式が古く同じものはもう売られていないこと、カメラ自体に価値はあるが、同等以上の機能をもつカメラが一万円以下で購入可能なこと、更に(これが一番決定的なのだが)このカメラを活かすために別途接続コードと充電器を買うならば、恐らく新規にカメラを購入した方が間違いなく安くつくという事実だった。

既にこのカメラと互換性のある接続コードやバッテリーを持っている人なら活用できるのだが、私の常用しているものとはメーカーが異なる。カメラに限らずメーカーの異なる家電製品に互換性などないので、一連のアクセサリはすべて一から買い直さなければならない。そして個別にそういった部品を購入しようとなると需要がないために店舗には置かれておらず、個別に注文して取り寄せなければならない。しかもそのアクセサリ単体だけで同等以上の機能を持つカメラでアクセサリもセットになったものを買う方が安くつくのだった。

この時点で私はカメラの落とし主が現地まで取りに戻らなかった一つの理由が分かったような気がした。それほど安価に入手可能なので、新しくもないカメラなら一から新品を買い直した方がずっと安くつくのであった。アクセサリを持っていない私がそれらを買い揃えることにまるで意味がなく、そのまま退店した。

拾得したカメラは私にとって無用なものに過ぎず、最初は遺憾ながら荒ゴミへ出そうかと思って玄関の土間のところへ置いていた。オークションや古物サイトへ提出すればいくらかで売れるかも知れないが、そんな面倒な手続きをする気もなかったし、何よりも使えるモノをいとも簡単に諦めて捨ててしまう現代社会の商品消費構造に失望したのである。

この情報をFacebookの自分のタイムラインで公表したところ朗報があった。現物を使いたいから譲って欲しいという知り合いが現れたのである。彼は同じメーカーのカメラを複数台持っており、画像をポストして示してみせた。したがって新たにアクセサリを購入せずともこのカメラをそのまま活用できると話した。私は荒ゴミとして捨てるよりはその方が商品冥利に尽きると考えたので、迷わず現物のカメラを彼に進呈した。

そういう訳で私が拾得して東奔西走することとなった現物のカメラはそのまま彼の手に渡り、サブ機として活用されている。私にしては何の利益にもならなかったが、拾得物が現代社会においてどのような扱いを受け、どういった手続きの元に拾得者に渡るかの流れを知ることが出来たという点がプラスになった。何よりも「未だ使えるものがそれを必要とする人に活用されている」というハッピーエンドとなったことは、価値がないからそのまま荒ゴミ行きという顛末よりも精神的に満足のいくものとなったのではないだろうか。
出典および編集追記:

1.「宇部ふるさと歴史散歩」p.39

2. 西暦年+月+日を冒頭に配した8桁の数字。

3.「Yahoo!天気・災害|山口県宇部市の天気

4. 当時は半年だった。2006年の法改正で3ヶ月に短縮されている。詳細は「Wikipedia - 遺失物|警察署長等の措置」を参照。

5.「FBページ|2016/10/7の投稿

6.「FB|落とし物のお知らせ(9/26)

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