真締川ダム

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記事作成日:2012/9/1
記事編集日:2016/7/31
真締川(まじめがわ)ダムは、宇部市を流れる2級河川真締川および支流の戸石(といし)川[1']を堰き止めて造られたフィルダムである。
写真はダム管理所横からの撮影。


一般的事項は[1] [2]を参照して頂くとして、ここでは各論的内容を述べる。
《 アクセス 》
真締川ダムの余水吐を中心にポイントした地図を掲載する。


市街部から向かうなら、国道490号を北上し、山陽自動車道のランプを過ぎて白石交差点で左折する。200m程度進んで最初に出会う信号機のある交差点に真締川ダムの案内板が出ている。
撮影時期たまたま開催されていたフリーマーケットの案内看板が見えている


ここを右折して市道男山線に入る。ダム建設によって付け替えられた対面交通の新しい道を進むと、ほどなくして真締川ダムの堰堤が正面に見えるようになる。


ダムを目前にして市道は一旦坂を下る。この下りきった場所から左へ伸びる道があり、ダム下へ向かうことができる。ダム下にも若干の駐車スペースがある。


ダムに合わせて若干高度を上げ、山陽自動車道の立体交差に差し掛かる手前に真締川ダム管理所への入口の案内板が見えてくる。それほどきつい坂ではなく、自転車でも何とか行ける勾配だ。


駐車場に区画線はないが数十台停められる。
洗面所とトイレはダム管理所の1階にある設備が常時訪問者用に開放されている。


市道男山線はピストン市道であり車では何処にも抜けられないので、帰りは来た道を引き返すことになる。
《 特徴 》
・真締川ダムは真締川(本川)と、その支流である戸石川(支川)の落ち合う地点に設置された。それぞれの沢を堰き止める形のため堰堤は中央付近で折れ曲がっている。
施工上は戸石川に寄せる形で真締川の放流路を付け替えている

・ダム堰堤上はインターロッキング舗装されておりハイヒールでも問題なく歩ける。通路の両側には現地で産出した岩が並べられている。
岩はチェーンで結ばれており通路から外側のフィルダム部分は立入禁止となっている。


・現時点でダム堰堤上やその周辺にはベンチやテーブルはない。広いスペースを生かしてフリーマーケットの会場としての知名度は少しずつ高まってきているが、その他にこれといった定期イベントは開催されていない。近くの住民が散歩したりジョギングコースとして使われる程度である。
竣工は新しいながら来訪者に配慮した景観施設に乏しいせいか、一部の市民からはその役割や存在意義に対して批判を持たれがちなダムである。工業用水や飲料用原水としての利用がなく、マイクロ水力発電機能も持たないことも一因と思われる。もっとも来訪者が少ない分だけ純粋にダムを眺めたい人には格好の題材であり、落ち着ける場所とも言えよう。

・真締川ダム施工のため、かつての真締川を遡行していた市道男山線は対面交通仕様に拡幅された上で付け替えられている。湛水域にかかった区間は水没ないしはダム湖へボートを降ろすための通路に転用されている。
未来湖の水位が下がったとき旧市道のガードレール支柱が現れる場所がある。同様に未来湖のやや上流部中央付近でダム施工時に設置したと思われる測量杭が見えることが知られている。

・構造区分はフィルダムであり、洪水吐の流水路付近以外は心理的にゾッとするほど高低差のある危険な場所はない。万が一堰堤からダム湖に転落してもフィルダムの勾配は緩やかで相対的に危険度は低い。そのためおだやかな感じのダムという印象を与える。


・選択取水塔の側面にスケールが貼られていて、通常水位はEL=61.6を指している。
EL=65.5は洪水時の最高水位とされている。


この数値は余水吐の高さが固定されていることに起因する。
雨続きなど流入超過の場合には、余水吐より流れ出る分量に追いつかない分だけ61.6より上昇する。

・余水吐の部分は高いコンクリート壁に囲まれており、真締川ダムで高低差に恐怖を感じる唯一の場所である。


正面部分には1.2m×1.2mの流出口があり、満水位になるとここから自然に流れ出る。即ち真締川ダムはゲートによる調整機能のない穴あきダムである。
上部には監視カメラが未来湖の方向に設置されていて、監視データは宇部土木まで無線送信される。また、ここからは見えないが流出口の面にも選択取水塔と同じスケールが貼られている。

余水吐の両袖部分は「数十年に一度レベルの大洪水」を想定した構造になっている。ダム湖の水がここから流れ出たのは平成19年3月に実施された試験湛水のときのみである。

・真締川と戸石川を一つのダムで堰き止めて未来湖を造っているので、慣行水利権を保障するために河川維持放流量と余水吐から流出した分を含めて、かつての真締川と戸石川の流量比率を遵守して配分されている。


余水吐から流れ出た水は自然に分水されるが、選択取水塔から出たダム湖水はバルブ室で4対1の比率で分水されたものが真締川・戸石川に放流されている。真っ直ぐ流れるのが真締川、右方へ屈曲していくのが戸石川である。
厳密には付け替える以前の旧真締川にも補償分を供給している

・ダム右岸は広場のようになっているものの、現在のところ何も活用されていない。


堤体の強度検査などで試料採取を行う際には再度掘削する可能性があることも理由となっている。

また、この広場の斜面から高台にかけてはダム全体を一度に眺められる数少ない場所である。
高台までの階段はあるものの一般来訪者が安全に登れるようにはなっていない


・それほど堰堤高がないフィルダムという構造上、監査廊が存在しない。通常は監査廊内部に漏水量を測る設備があるのだが、真締川ダムの場合は漏水を集めて変動量を測定するための浸透流観測室が左岸と右岸のダム下に1ヶ所ずつ設置されている。


浸透流観測室の窓はダム管理所の窓と同様マジックミラーになっていて内部を観ることはできない。
顔を密着させて微かに内部の様子が分かる程度

・毎年7月中旬より開催される「ダム・森と湖に親しむ旬間」における一般見学会対象ダムであり、期間内に限りダム管理所内部に入ることができる。
監査廊がないダムなので他のダムに比べて涼みながら見学することができず魅力に欠ける。見学会では管理区域内の施設が一般公開されるため、申し出れば担当者随伴で取水塔や浸透流観測室の内部を見学することができる。真締川分と戸石川分の放流量を厳密に計量しつつ分水している送水管路は監査廊のような独特な造りをしており興味深い。

・ダム湖には未来(みらい)湖という愛称がつけられている。この呼称は公募による。2つの沢の落ち合う部分を堰き止めて生まれた湖なので、宇部丸山ダム湖と状況は似ている。しかし真締川と戸石川の交わる角度の違いから、未来湖は鳥が羽ばたくような形をしている。


ダム湖となった場所は田畑のみであり、水没補償対象となった家屋は存在しない。

・未来湖は治水が主な目的で水深も浅いせいか、一般のダムには必ず備わっている網場(夾雑物防止目的で湖中へカーテンのように垂れ下げた網を浮きで結んだもの)がない。このため宇部丸山ダムのダム湖と同様、湖面がスッキリした感じがある。


湛水効率を上げるため堰堤付近や人工的に造られた汀付近は急に深くなっているものの、ボート搬入路や元からあった自然の汀は概ね遠浅である。渇水期には水位が著しく低下して湖底の一部が露出することもある。ダム湖底部は広範囲にわたって概ねフラットである。

・堰堤や選択取水塔付近を除いて未来湖の湖面は解放されており、一般人がボートを持ち込んで利用することができる。この目的でのボート搬入路がダム管理所駐車場内と市道男山線側にそれぞれ設置されている。


目立った魚類の棲息がないからか今のところ釣り愛好家の姿は見受けられない。

・戸石川向けの浸透流観測室の隣が小さな児童公園になっていて簡素な遊具が設置されている。


もっとも訪れる親子連れが少ないことからそれほど利用されているようには見えない。また、隣接する浸透流観測室は児童公園のトイレに間違われがちなようだ。
現在のところこの場所にはトイレも水飲み場もない

・未来湖を周回する管理道路(林道大無田線)があり、市農林部の所管になっている。車は通行できないが、自転車や歩行者は自由に通れるようだ。
ただし自転車はフェンス門扉の横を通すのが難しいかも知れない


付近に民家などがないのは宇部丸山ダムの管理道と共通するものの、比較的山が浅く周囲の草刈りも定期的に行われているせいかそれほど暗く怖い場所というイメージはない。ただし外周路を散歩する人は殆どいない。
《 個人的関わり 》
真締川ダムは完成してまだ年月が浅い。ダムが造られる以前から男山地区へ向かう細い道があったが、行き止まりの道で男山地区に誰も知り合いが居なかったため昔から一度も行ったことがない。ダム建設に伴い市道が付け替わる工事が進んでいる最中、工事現場に数回足を運んだことがある程度で、旧道の正確な経路も覚えていない。
ダムに関する興味は昔からあったものの、計画段階から厚東川ダムや丸山ダムとは異なる形式のフィルダムと聞いていたし、発電・工業用水の目的を持たないダムだったためその効用を理解していなかった。とりわけ建設当時は「ダムは無駄」などと全国的にダムの効用を疑問視し新規着工に反対する風潮が強かったこともあり、公共工事発注による地域活性化が目的なのでは…と考えていたほどだった。

こうした自分自身の無理解もあって、初めて真締川ダムを訪れたのは竣工数年後のこととなった。
市内にできた最も新しいダムであるだけに、身内に注がれる目は厳しくなりがちなせいもあって最初に起こした踏査レポートは必ずしも温かくはなく、批判的な内容の記事であった。

例えば当時書いた記事によれば、ダム管理所の裏にある説明板は大判ながら地面に水平近い形で置かれており読みづらい。子どもなら親に抱っこしてもらうか説明板の上に登らなければ読めない。
この形状が採用された裏には別の事情があったことが後から判明した


ダム下から堰堤に上がる道は、足腰の弱い人や車椅子でも登れるよう緩やかなスロープになっている。
しかし入口に設置されたステンレスゲートの幅が狭く、車椅子は通らないのである。せっかくのバリアフリー設計が死んでいる。車椅子での単独自走は危険だが介助者つきで押して通りたい場合もあるだろう。
最近この場所を訪れないので現在では改善されているかも知れない


何度か期間をおいて訪れることと他のダムをいくつも観てその役割を知ることによって初めて真締川ダムを理解することができた。

現在の自分なりの理解では、真締川ダムの最も重要な役割は治山治水である。そのことはダム単体を観ていても理解しづらい。集中豪雨や長雨に見舞われるたびに川添地区が浸水被害を受けていたこと、平常時でも山から土砂が運ばれて真締川の河床に溜まって流下速度の妨げになっていたことなど、真締川の治水と連携して考えることでその役割が見えてくる。実際、真締川ダムは洪水と渇水による流下水量の急変動を均すことに貢献しており、川添地区に排水機場を新設することで同地区の浸水被害は昔より格段に改善されている。

ただし水力発電が再び見直され始め、県内各ダムでも僅かな高低差と水量を元にマイクロ水力発電を新設する動きが出始めている。
例えば国土交通省管轄の島地川ダムでは現在マイクロ水力発電設備を新設中
未来湖程度の水量と高低差では困難かも知れないが、初期投資コストが充分に下がれば今富ダムなどと合わせて検討対象になる日が来るかも知れない。
《 記事リンク 》
夏期に開催された見学会の記事で、一部は限定公開記事になっている。全4巻。
時系列記事: 第一回・平成24年度見学会
真締川ダムに関する原典画像集。
画像集: 真締川ダム・ギャラリー
出典および編集追記:

1.「Wikipedia - 真締川ダム」による。
なお、上記記事の概要では石戸川と記述されているが、戸石川の誤りである。これは次項[2]にある真締川ダムは、真締川(本川)堤体と石戸川(支川)堤体の2つの堤体でせき止め…の誤記をそのまま参照してしまったためと思われる。(2014/10/3確認)
修正して差し上げたいが当サイトは方針によりWikipediaの編集には一切携わらないこととしている

2.「山口県|河川課|真締川ダム

この他、記述にあたっては以下の資料を参照した。

真締川ダム(山口県宇部土木建築事務所作成パンフレット)
豊かな自然を守り育てるために - 真締川治水ダム(同上)

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