宇部丸山発電所

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記事作成日:2016/7/23
最終編集日:2023/7/29
宇部丸山発電所宇部丸山ダム取水塔内部に設置されている小水力発電所である。
写真は発電タービン。右側に見えるのは工業用水の制水ゲート。


位置図を示す。


宇部丸山発電所の一般的事項は企業局のサイト[a1]に記載されている。ここでは補完的内容を記述する。
《 概要 》
平成28年4月より運用が開始された新しい発電所である。水力発電所と言うとダムから水圧鉄管が伸びてタービンを回す大規模なものを想像するが、宇部丸山発電所は、山陽小野田市有帆ポンプ場向けに送出されている工業用水道の取水塔内部に設置されている。


取水塔には工業用水として取り出すバルブが2基備え付けられていた。そのうち1基を小型タービンに置き換えることにより、利用されていなかった有効落差を取りだしている。従来の減圧用の流量調整弁を発電機へ置き換えることにより電力を得る。当初最大出力134kW、年間可能発電電力量約650MWhで平成26年3月の運転開始が見込まれていたが、その後建設予定が平成26・27年度と変更されている。[a2]

発電タービン設置以前は通常のバルブだったので、ダム湖水の位置エネルギーを利用せず捨てていたことになる。新規に発電所を設置したのは、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)によって設置コストの回収が容易になったことが大きい。

発電規模が小さいので発電所に特有な厳つい送電鉄塔が建ち並ぶ景観はない。出力は小さいものの年間の発電量は二俣瀬地区における一般家庭の2割相当量にあたる。産み出された440Vの電力は、管理道沿いにある設備で66kVに昇圧し電力会社へ送られている。
奥の直方体の建屋は取水塔向けの非常電源用燃料庫


なお、ダム湖表面に太陽光パネルによる発電を行う筏があったが、現在では撤去されている。
《 アクセス 》
ダム堰堤上の管理道を経て取水塔の前までは車で到達可能である。ただし取水塔を外から眺めても発電所であることが分かる部分は何もない。取水塔へ至る桟橋手前の管理道沿いに新規設置された昇圧設備のみである。

工業用水の取水塔はダム湖の南岸にあり、制御バルブおよびタービンは取水塔の底部に設置されている。取水塔は関係者以外出入りすることはなく、塔に向かう桟橋から一般の立ち入りが禁止されているため通常は発電過程を目にすることはできない。ただし宇部丸山発電所は夏期に開催される「森と湖に親しむ旬間」の見学対象発電所であり、期間中は係員随伴で見学することができる。
【 Google ストリートビュー 】
管理道を通行しており、取水塔前の道と前後をたどることができる。
映像は取水塔前。


2016年7月の「森と湖に親しむ旬間」で開催された宇部丸山発電所の初めての見学会の様子。全3巻。
限定公開記事: 宇部丸山発電所【1】

2019年7月の「森と湖に親しむ旬間」で開催された宇部丸山発電所の見学会の様子。全3巻。収録静止画像47枚、動画2本、文字数約12,000文字。(2020/6/26着手、7/16脱稿、7月末配信予定)
時系列記事: 宇部丸山ダム取水塔と発電所【1】
【 限定公開記事ダイジェスト 】
以下に上記限定公開記事の本文より300文字(但しタグや埋め込みオブジェクトを除く)を掲載する。
前出の地図を北へドラッグすると分かるように宇部丸山ダムは厚東川ダムより2km程度南にあり、増え続ける水需要に対応して昭和53年に建設された。宇部丸山ダムの貯水池は水底の隧道で小野湖と繋がっており、実質的に小野湖の延長のように機能している。しかしながら宇部丸山ダムの知名度は厚東川ダムに比べて低い。精々、一部の釣り愛好家にブラックバス釣りの穴場として認知されている程度である。それでも工業用水好きな宇部マニアックスにとってはなかなか面白い題材で、ダムはもちろん関連施設も一通り写真を撮っている。

市内ではマイナーな部類に入る宇部丸山ダムに水力発電所が建設されるという情報をキャッチしたのは今から5年くらい…
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外部サイト: 「凜」RIN - 友の会
出典および編集追記:

a1.「山口県|企業局総務課|小水力発電開発支援サイト・山口県内の取り組み状況

a2.山口県|企業局総務課|平成24年度企業局概要」の「4-電気事業の概要.pdf」に掲載されている。(リンク切れ)
《 近年の変化 》
項目記述日:2017/12/9
実地にダムを訪れた人に交付される「ダムカード」の水力発電所バージョンとも言える「発電所カード」人気が高まっている。前述のように宇部丸山発電所の稼働開始は平成28年で、発電所カードも同時期に交付開始された。カードのスタイルや記述内容などはダムカードに準じている。

宇部丸山発電所の場合は小水力であり導水隧道内の設置という仕様のため外部から明瞭な形で観察できる機会は少ない。中部関東などの山岳地帯では水圧鉄管が斜面を駆け下りるダイナミックな水力発電所を観られる機会が多いが、本州の西端であり標高もそれほどない山口県の県西部ではそのスタイルの水力発電所は多くはない。このことは逆に言えば、高低差のみを利用して遠くまで送水するには不利な地勢である。そのために工業用水などの確保については早くから真摯に取り組まれていた。県西部は標高が低いながらダムや工業用水道の整備が進んでいるのはそういった背景もある。

ダムや発電所、道路や橋のような生活基盤となっている構造物そのものを見直すインフラ・ツーリズムの流れが旺盛である。これは今までになかった新たな人の流れを造るものであり、周辺地域の人的および経済交流を進めるものとして歓迎する。
出典および編集追記:

b1.「山口県内限定の発電所カード 配布数1万2千枚突破、人気じわり|山口宇部経済新聞
《 個人的関わり 》
宇部丸山ダムに発電所ができることは情報キャッチしていたが、何処にどのような形態のものが造られるかは分からなかった。当初はダム堤体に圧力鉄管を取り付けて水を取り出し発電するものと思っていた。

注意以下には長文に及ぶ個人的関わりが記述されています。レイアウト保持のため既定で非表示にしています。お読みいただくには「閲覧する」ボタンを押してください。

2016年の7月に入って本年度の森と湖に親しむ旬間の実施計画を見て、宇部丸山発電所がリストに入っていることを知り見学に行った次第である。取水塔の桟橋部分からの撮影が充分できていなかったため、あと一度程度見学会で訪れることはあるかも知れない。

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