低水位の小野湖・小野地区第二次踏査【1】

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現地踏査日:2012/9/29
記事公開日:2012/10/21
(「低水位の小野湖・小野地区第一次踏査」の続き)

かなり長いことまとまった雨がない。小野湖の水位を知る上で近くて参考になる丸山ダム湖の水位は60%を切って久しい。水資源は懸念されるが、低水位踏査にとっては好適なタイミングになる。
小野湖で低水位に目立つ場所となれば、小野地区の小島と基礎跡が思い浮かぶ。今なら一次踏査のときよりも行動範囲が広がるのでは…と想像された。
そこで市道一ノ坂黒瀬線にある水没階段から先を踏査した後、小野地区に向けて車を走らせた。

台風17号が接近しており、この日の夜から雨になることは週間予報で数日前から分かっていた。生憎といっては語弊があるが、まとまった雨が降れば水位が上昇してしまう。その直前が最も低水位になる可能性があるので踏査時期を調整していた。
小野に向かう途中、空がかなり暗くなってきたので降り出すのでは…と思っていたらやはり花香付近でぽつぽつ雨粒が落ち始めた。到着した途端に本降りだったら意味がないので引き返そうとも思いかけたが、予報では弱い雨という内容だったので、少々降っても概況だけ撮れれば…と考えて予定通り小野地区に向かった。

一次踏査のときと同じ場所に車を停め、国道を横断する。


既にごく小さな雨粒が落ち始めていたので、すぐには湖底へ降りる階段に向かわず様子見していた。遠くまで歩いた先で本降りになったら急いで戻ることができないからだ。
国道の路肩に立って湖底をざっと眺めるだけでも、前回訪れたときよりも遙かに水位が低いことが分かった。現れた干潟の面積が比較にならないほど広大だったのだ。

雨降りのような天候で遠景を撮影しても光量不足で明瞭には写らない。しかしここまで車を走らせたからには、この概要だけは映像に持ち帰ろうと思い、分割してパノラマ撮影してみた。
横に並べて配置すれば良いのだがタグを書き換えるのが面倒臭い…^^;


そして国道490号のバイパス区間だ。
この枝道部分となる路地に車を停めている。


撮影の間、雨は強くも弱くもならなかった。雨宿りする程の量でもなく、この程度なら湖底を歩いていれば濡れる端から乾きそうな降り方だった。何よりも次のチャンスがないかも知れない状況なので、少々の雨に降られることを覚悟で湖底へ向かった。


今回は屋敷の基礎跡を後回しにして、先に行ける場所まで進攻することにした。今でなければ踏査できないかも知れない場所が最優先だ。
基礎跡の遺構は帰り際にざっと撮影しておいたので、別途記事を参照されたい。
派生記事: 低水位の小野湖・屋敷の基礎跡
まずは小島の上流側に回り込んだ。
水位の低さ故に到達可能な場所が拡がっているし、前回見られなかったものが先方に確認できた。


小島と右岸の中間あたりに何か土塁のようなものが見える。
一次踏査のときは何も見えなかったか、精々天辺が僅かに水上へ現れていただけと思う。


ズーム撮影する。
周囲には整然と並べられた大きめの石が見えており、何かの石積みのように思える。土塁部分には木杭が立っているようだ。明らかに人の手が入った得体の知れない何かだ。


あの場所まで行ってみたい。
この我が儘な好奇心ほど厄介なものはない。本来ならズーム撮影で満足すべきところだが、小雨交じりの曇天ではズーム撮影しても画像が不鮮明なのだ。

周囲はまだ水位が下がってそれほど期間が経っていないらしく、壮大な干潟だ。とてもスニーカー如きの装備で直接歩いて行ける状況ではない。
低水位踏査向けに長靴を買おうかと本気で考えた瞬間だった^^;


直接は行けないが、少しでも乾いた地面が右岸へ張り出している部分を探しつつ湖の中央に向かって歩いた。

この場所は見覚えがある…一次踏査のとき測量杭のようなものが立っていた岬だ。このギリギリまで端に立って小島を撮影したものだった。


粒の細かな雨が少し気になるくらい頻繁に落ち始めた。しかし先に見えてしまった土塁への興味が容易には萎まず、何とか渡れそうな場所を探すべく更に先へ引き寄せられていた。

一次踏査でここを訪れたとき、岬の端から急に深くなっているように見えていた。確かにこの場所から先は大きな段差ができていた。昔の棚田の跡だろうか。
前回は台地状の上部まで浸っていたから、一次踏査よりも更に1m程度水位が下がっていることになる。


小さな池のようになった汀に沿って辿っている。
その端はあぜ道か何かのよう、一定の高さを保ったまま下流に向かって延々と伸びていた。


凄い…こんなものが小野湖の底に隠されていたとは…
自然にできたものとは考え難い。昔築いた土手か個別の田を隔てる換地畦畔にも見える。
最近になって湖底を浚渫した泥濘を積み上げただけ…なんてことはないよね


振り返って撮影。
この湖のような低地はちょうど小島の裏側に位置していた。


上流側を撮影している。
あぜ道か農道か…そのように思われる周囲とは明らかに違う帯状領域が伸びていた。そして最初に見た土塁はこの先端に繋がっていた。


期間限定で目の前に次々と現れる異様な光景に言葉を失っていた。しかしここから先を追い求めるには困難な課題が提示されていた。

あの土塁に向かうなら、
足元がはまるリスクを最小にする場所はここしかない。
この短い区間だけはまだ完全には乾ききっておらず、若干水に浸っていた。普通に歩くとかなり深くはまってしまうのは、長靴で横切ったと思われる深い足跡に現れていた。
幅は目測で5m程度あり、とてもジャンプでやり過ごせる状況ではない。


先客が置いたと思われる拳大の礫石が浅瀬に並んでいたが、喜び勇んで渡るのは早計だ。子どもが渡るとき置いた石なら、大人の私が踏めば石ごと沈み込むだろう。
もっとも手前の石の一つに足を載せ、少しずつ重心を移動した。戻るときもここ以外通れる場所がないのだから、エイヤッと渡ってしまうことはできない。強引に踏みつけて泥濘深く石を押し込んでしまったら、足を汚さずに帰ることができなくなる。

ものの数歩分だったが慎重を要する区間だった。
幸いどの石も私の体重を支えて飛び石の役割を果たし、靴を無傷に保ったままこの危ない場所をやり過ごした。

上流側を撮影している。先に観た土塁まで”粘土の道”が続いていた。


この近辺の土が大気に晒されたのは久方ぶりの筈だ。
この痕跡が何なのか正体が分からない。まるで工事現場で粘性の残土を適当に積み上げたようだ。


足元の近接撮影である。
田に特有な粘性土のようであり、上流から運ばれた泥の堆積のようでもあった。


何か昔を物語ってくれるものが落ちていないか、かなり注意して周囲を見渡した。しかし昔のものはもちろん最近のゴミすら見あたらなかった。

粘土の道は周囲よりも若干高いせいか、充分乾いており足元に不安はなかった。
いよいよ前方に土塁が見えてきた。

(「低水位の小野湖・小野地区第二次踏査【2】」へ続く)

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