写真は市内のある場所にみられる典型的ななると石の例。
後述するように何のためのものか、いつ頃造られたものかが分かっていない未解決素材である。現在は外観を元に記事名を与えている。正式な名称が判明次第、正しいものに置き換える。
《 概要 》
写真のように外周部をギザギザにした歯車のような形に加工されている。直径は20〜30センチ程度で、厚さは数センチのものから数十センチまで様々である。素材は墓石に使われるのとほぼ同じごま塩系の花崗岩ということが共通する。自然にこのような岩が産出することはおよそ考えられず、意図的にこの形状に加工されたことが明らかである。
ギザギザ部分が噛み合うように並べて置かれた場所が知られている。歯車のようにも見えるが、中心に軸穴がないことからその目的で造られたとは思えない。
(市道常盤駅線の沿線にあったこの石材は住宅建て替えに伴い消失した)
人家にあるものは、いずれも築数十年は経っているような場所に限定される。
近くに人家がなく浅い里山に放置され埋もれかかっているものも知られている。
(写真は真締川の鎌田堰付近にみられる石材)
この形状に加工するには相当な労力が要る筈である。白岩公園の初期の踏査で見つかった梵字の刻まれた石盤も類似する形をしていた。
鍋倉山にある監視所跡の前にも3個置かれている。
(2017年の撮影なので現在は草に埋もれているかも知れない)
近接撮影。中央に何か金具を差し込む目的で削ったような跡があった。
ここのなると石は3個が列を成して並べられているので、何か宗教的意味合いを持つのかも知れない。
《 Googleストリートビュー 》
冒頭に掲げたなると石は、市道五三舞線の起点角地の入口にみられる。家は解き除けられているが、なると石は2025年1月の時点でまだ写り込んでいる。
ここの石材は直径がやや小さい代わりに高さがあり、十数個置かれている。エクステリアの建築資材のようにも見えるが、このような石材の実物が売られているのを見たことがない。
《 市内の分布状況 》
今のところなると石は非常に限られた場所にしか見つかっていない。市内では把握している限り数ヶ所である。昭和中期以降に家を建てたような場所には見つからず、民家自体は新しくてもそれ以前から居住していたような場所に限られる。鎌田堰近くにあるものも恐らく昔は民家があったと考えられるような立地である。2015年頃から存在に気付き始め、見つけ次第写真を撮るようになった。この総括記事を編集した時点では注意して観察することで更にいくつかの場所と新たなパターンを見つけている。
【 近年の発見例 】
西岐波区床波の旧街道沿いの道ばたに見つけた例。サイコロ型の石材と一緒に置かれていた。
同じ旧街道沿いの草むらの中に異型のなると石を見つけた。
楕円形の外側を同様に削った形をしている。
この形状からは、回転させて用いる歯車のような機構の一部という説が否定される。自然石がこのような形状を呈することはあり得ないため、純粋に外形の面白さを味わうためのエクステリア素材ではないかと考えられる。旧街道に隣接して石材の加工所があり、扇型の直線部分を同様の波形に加工した石材も見つかった。
(住居表示板があったので里道と考えて通行したがこの場所は私有地かも知れない)
その数日後に上宇部地区の里道沿いの個人宅庭先に、同種の形状を模して造った”なるとコンクリート”を見つけている。外周に波板の跡があり、コンクリートの中に砕石が見られたので、波板を丸めてコンクリートを流し込むことで擬似的に作成したと思われる。
厚南際波にある長寿の森にも同様のものを見つけた。
ここには中心に穴が空いているものとないものの2個が見つかった。いずれも既に知られているなると石と直径や厚みなどがほぼ共通しており、八王子神を祀った私設の祠のようにある時期量産されていたのではないだろうかという気がする。
【 保全ランク 】
既知の現存箇所から、かなり少なく消滅が懸念されるランクに認定する。| ランク | 呼称 | 概要 |
|---|---|---|
| 4 | 絶滅危惧 | 非常に少なく、将来的な消失が懸念される。 |
《 現時点での推察 》
この記事を元に、新川歴史研究会の高良氏が画像検索で調査している。石材の外観は、ギリシャ神殿などによく見られる柱の装飾を連想する。同種の石材がエクステリア素材として挙がってきたことから、昔のある時期に西洋の雰囲気を醸し出すために製造されていたのではないかという仮説が提出された。ただしそれを裏付ける客観資料がない。現在ではエクステリア製品を扱う店舗などでも同種の石材は見つからない。中央に金具を差し込む穴のあいた石材もあることから、歯車部分を噛み合わせて回転を伝える運動機構をもつ道具の一部ではないかという見方もあった。しかしその目的で使うには外周に刻まれた溝が浅すぎること、その機構を持つ道具自体がいっさい見当たらないことから違うように思える。現在与えている勝手呼称のように、柔らかくて容易にスライスできるなるとを、硬くて加工が困難な御影石で実現しているところに意外感がある。そのギャップを視覚的に愉しむために造られた素材なのかも知れない。
最終編集日時点において、集估館の裏手にある長寿の森でなると石が見つかった。近日中に集估館の館長に写真を見せて尋ねてみる予定である。
《 関連記事リンク 》
情報を募るため、新規に総括記事を作成した。以前の派生的項目は こちら に置いている。外部サイトにも写真を投稿[1]したほか、サンデーうべのコラムでも Vol.78「フォルムを愛でよう」でこの石盤の写真を掲載している。
