白岩公園・初回踏査【1】

インデックスに戻る

現地踏査日:2013/3/17
記事公開日:2013/3/24
(「白岩公園・初回踏査【序】」の続き)

17日の午後、私は当たりを付けた場所に自転車を走らせていた。
写真は県道琴芝際波線で中山観音の方を向いて撮影している。カーブの外側から山手に向かう道が見えている。


この分岐点をポイントした地図だ。
ここから左へ入る地区道が先で水色の線で描かれた常盤用水路を横切っているのが分かるだろう。


面河内池を踏査したときは中山観音の駐車場に車を停めて歩いた。そのルートでもこれから向かう場所に到達できるが、裏山になる八十八箇所はとてもきつい坂道で、それから先も更に相当歩かなければならない。かと言って下調べもしていないこの地区道へ勝手に車を停めて歩くわけにもいかず…結局、この方面に来るときは常用している市道上条金山線を経由して自転車でやってきた次第だ。

県道はここで2段階に大きくカーブしており、その内側に上中山バス停がある。
ここ5〜6年の間に追加で造られた県道においては最も新しいバス停だ。


右側に石垣が見えるあの坂道を登っていくことになる。
何度か通っているので道の状況は頭に入っていた。


途中から坂道はデコボコなコンクリート路になる。勾配が非常にきつく乗って進める状況ではないので押し歩きしている。
そして最後の民家一軒から先は部分的に未舗装路となっていた。


この未舗装路との境に常盤用水路が通っている。県道よりも10m程度高いところになる。
短距離でいきなり高度が上昇しているのでかなり息があがる。


この道が常盤用水路の開渠区間に至る経路であることを知ったのは、野山時代に初めて訪れた4年前だった。その後活動拠点を現在のアジトに移動した後も数回訪れているし、最近では面河内池の第二次踏査を行ったときも自転車を押し歩きしてこの道を通った。
後から思えばこのとき重要なポイントを軽く見送っていたことになる

さて、今回の目的は常盤用水路の踏査ではなく白岩公園の探索である。幾度か訪れて馴染みある場所ではあるが、今は一度も訪れたことのない公園の手がかりを得るのが目的だ。
それで常盤用水路の撮影は殆ど行わず、その周辺に目を配りながら自転車を押し歩きした。

その過程でさっそく気になると言うか「こんなものあったっけ?」を見つけた。
水路の山側にひっそりと佇んでいる祠であった。


写真を撮りながらこの開渠区間を何度も歩いていながら、祠の存在には今まで気付かなかった。
しかしこれから極めようとする物件に恐らく関係なさそうだし私有地に設置されているように思えたので接近は見送った。

その先、水路に沿って上流側に線路の枕木をたなげて造った渡り橋があった。
ここから山側に向かう道などあっただろうか…


残念ながらそれは道ではなく単に畑地へ向かうための通路だった。恐らくこの近くにお住まいの方が畑での作業に向かうときのために架けたのだろう。畑から先はまったく山側へ向かう道はなかった。

地図が示唆する公園の石段らしきものがあるのは、この開渠を辿ってNo.2隧道手前の山側だった。小さな踏み跡はもちろん何かの手がかりが得られるかも知れない。


開渠に沿った管理道は狭い。写真には入っていないが水路の外側は急斜面で自転車に乗って通るなどとんでもなく危ないのでずっと押し歩きしている。
適当な場所に留め置いて歩けば良さそうなものを…^^;


開渠に沿ってNo.2隧道の手前まで歩いたが、結局山側に向かう道や踏み跡は見つからなかった。少なくともここから直接公園に向かうための道はない。

もっとも道は存在しないか、あっても既に失われていると考えていたので想定の範囲内だった。再度山側に手がかりとなるようなものがないか注視した。
沢の上の方に石垣が見えている。
さあ、この写真で判別できるだろうか。


ズーム撮影する。
写真でも石垣と分かる程度なので肉眼では明らかだった。しかし光量不足で明瞭な写真にはならない。


この石積みの存在もこの場所を数回訪れた中で初めて気づいたものであった。もっとも初期の常盤用水路踏査では時期を選ばず、観たいときに随時訪れていた。藪も旺盛な春先や夏場の訪問もあったわけで、視界が効かない時期ならまず見えないだろう。しかもこの方向に著名な遺構があるという事前の情報を持っていればまだしも、仮に石積みを藪の中に見つけたとしても写真すら撮らないかも知れない。実際、この程度の藪に眠る石積みなら厚東川1期導水路踏査の時期から既に何度も接していた。

この石積みが今から企てようとしている踏査に重要な意味を持つかどうかは分からない。敷地か古い道の擁壁部分ではないかという憶測もできたが、単に土砂が流れないよう遙か昔に気付いた土留めに過ぎない可能性もあった。その正体を見極めるには現地へ到達する必要があった。

沢はすぐ目の前だが、常盤用水路で隔てられていた。助走すればひとっ飛びな水路なものの、膝を痛めている今の状態でそんな無謀なことはできない。

No.2隧道の下流側坑口。
この上を歩いて反対側へ移動することも考えたが、ポータルの上に土のうが積まれているために高低差が大きく安全に移動できなかった。


面倒だがさっき見つけた枕木橋のところまで戻って用水路の反対側に移動した。
ここから先は歩くのもやっとという足元の悪さなので、自転車はここに留守番させておくことに。


何となくあるものを感じ、自転車を離れるときに施錠した。

近くに民家が見えるもののここは停めてある自転車を失敬されるほど人通りある場所ではない。だがもしかしてこれが探していた物件に関連するものなら、長時間自転車の元には戻らないだろう…施錠は踏査が長丁場になりそうな予感がしたときのお約束の動作であった。

さっきの小さな沢の入口に到達した。
山から転がり落ちたのか、この近辺は大小交えて岩がごろごろしていた。


踏み跡などない。そんなことは水路の反対側から石垣を見つけたときから分かり切っていた。
しかし山の陰となる沢地は竹主体で藪は薄く、容易に突破できそうだと見極めていた。


沢の端を遡行していく。
この辺りからして既に大きな岩が目立つ…いやが上にも公園の存在を予期させる要素があった。


至る所倒れかかっている枯れ竹を振り払いながら進攻する。あと少しだ。


ここまで近づけばさすがにズーム以上の解像度をカメラと肉眼に与えてくれる。
見立てていた通りそれは確かに人の手によって築かれた石積みだった。しかし…


それは純粋に「ただの石積みである」以上の何の情報も与えなかった。
石積みはどうやら単に沢の土を留める目的だけに造られたらしかった。何かの敷地だった可能性もなくはないが、少なくとも人の歩く古い道の跡はそこにはなかった。


敷地だった可能性をなお捨てきれず、ざっと見渡してみたが本当に何もない…ゴミすら落ちていないということは近年まったく人が立ち入らない山野らしかった。石積みはこの一段だけで、沢の上部には原生林以外の何も見えなかった。

藪の中まで踏み込んだ以上、このまま何も成果なしで引き返したくなかった。しかし闇雲に歩き回っても前回のような徒労に終わりかねず、悪くすれば山中に彷徨いかねない。沢の対岸から山の斜面まで更に目をこらして観察したところ…
あんな高い場所にも石積みが!!


山の斜面上の方に石積みが見える。しかも今しがた見つけたのよりずっと大きくて高い。また、石積みの周辺で空がかなり見えていることから、石積みに沿った空間ができているようだ。道があるのかも知れない。今度こそ白岩公園にかかわる何かだろうと推察された瞬間だった。
行って確かめねばなるまい…
そのためにはここから高低差10m以上はあろうかという急斜面を登って行くタスクが必要だった。

いや…膝が痛いからなんて言っていられない。それだけの覚悟をもってここへ踏み込んだのだ。
当然のようにここから斜面を登り始めた。

(「白岩公園・初回踏査【2】」へ続く)

ホームに戻る