白岩公園・初回踏査【2】

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(「白岩公園・初回踏査【1】」の続き)

常盤用水路の開渠から見つけた最初の石積みは単なる山留めだったが、そこから更に斜面の上方にもっと大規模な石積みが見えていた。


到達する前から期待が大きく膨らんだ。
これは殆ど間違いなく白岩公園に関係があるものだろう…
私は道のない斜面を強引に登り始めた。日当たりの悪い斜面なので足にまとわりつく下草の心配はなかったが、大量に積もった木の葉は如何にも滑りやすく、右膝を庇いながら慎重に経路を選んだ。

最初に見つけた石積みを俯瞰している。
確かに石積み以外その両端にはあぜ道などもない。単なる昔の砂留めか敷地の跡だろうと推測した所以だ。


半分程度登ってきた。
出発点の常盤用水路が木々の隙間から遙か下の方に見えていた。


それは少しずつその全容を現し始めた。
石積みの手前が妙に空いている感じがする。道か何かがありそうだ。しかしこんな所へやってくる道などあっただろうか…


思わず うぉーっ!! と歓声が口をついて出てきた。
間知石の空積みでかなり高い。しかも先に見たような単純な石積みではなく、恰も城壁のように低い側の転びが緩やかに変化している。


この石積みの下には細い水路があり、恐らく水路の管理道と思われるあぜ道が付属していた。しかし水路自体は木の葉が一杯詰まっており、最近水が流れたような様子がない。


さすがにこの石積みは単純な山留めとは思えなかった。先のとは如何にも規模が違う。しかもかなり丁寧に築かれている印象がある。
この石積みの正体もだが、私はまずここへどうやったら安泰に来れるのかを知りたかった。白岩公園にまつわるものかどうか分からないが、取りあえず今日踏査を終えて自転車の元へ戻るのに今登って来た滑りやすい斜面を下るようなことは避けたい。また、自身の位置の確認に合わせて次回ここを訪れるときの経路も知りたかった。
そこではやる気持ちを抑えてまずはこの水路に沿って辿ることにした。

あぜ道の上にはまるで浮き上がった血管のように木の根が露出していた。
枯れ葉の詰まった水路に露出した木の根…しばしば人が訪れる場所ならここまではならないだろう。


水路の上流か下流かは分からないが、とりあえずこのあぜ道を東の方に歩いた。
この方向なら面河内池踏査を行ったときの道の何処かに出てくると思ったからだ。


進むにしたがって水路より上の段にあるらしい道との高低差が次第に小さくなってきた。
水路と上の段にある道とで石積みが2段になっている。もっともどんな道なのかは未だ分からない。


この辺りは不定形をした自然石の乱積みで見るからに古い。
もしかすると百年に近いくらい経っているのではないだろうか…


殆ど人が歩かず苔びっしりになったあぜ道の中央に何となく気になるものをみつけた。
あの丸いものである。


これは昔の木製電柱ではないだろうか。
少なくとも自然の野山に生えていた樹木ではないという感じを受けた。


それと言うのもに断面は殆どきれいな円形に整っていたし、これと同種の外観を持つ樹木が周囲に見あたらなかったからである。
もっとも百年近く経つなら植生は変化するので一概には言えないかも知れない

電柱という人工設置物の存在を疑ったのも、かつてこの場所に電源を引く需要があった可能性を考えたからだ。

白岩公園はかつては御堂があり相応に人が集まる場所だったとされる。年一回の祭りでは明かりを灯す必要もあったことだろう。現在では発動機で電気を起こし携行式のキャプタイヤ(専業向けの長い電気向け延長コード)を使うだろうが、そういう器具がない昔なら御堂まで電気を送る常設の電柱があったと考えるのが自然だ。

もう一つの根拠は先ほど見つけた碍子の破片である。斜面登攀を強行し水路を目前にした場所に碍子が転がっていたのを見つけていた。
もっともそんなに古い碍子ならこんな感じで地表には現れず木の葉に埋もれているものかも知れない

こんな感じで私は目にするあらゆる物を白岩公園の証拠物件に結びつけようとしていた。それと言うのも些か逆説的ながら、ここが白岩公園であるということを特徴づける決定的証拠を未だ何も見つけていなかったからである。木製電柱の痕跡なら山野部なら結構みられるものだし、石積みとて然りである。これほど決定的ではと騒ぎながら、実のところ名前も知らない古い廃寺院の遺構だった…という可能性を捨てきれない。全く場違いな遺構を見つけて白岩公園と騒ぎ立てているのかも知れず、いくら確証は高かろうがあの書籍に掲載されていた石碑類を拝まないことには断定できなかった。
もっともそうでなければこれほど連載記事を進めてもいないわけだが…^^;

上の通路と高さが同一になった場所で水路を横切っていた。
形の上では斜めに交わる十字路になっているらしい。水路を横切る道は更に山を下っていた。


この山道は今まで水路沿いに辿った踏み跡よりも明白だった。水路沿いではなくこの道の先が何処に繋がっているか調べた方が今後の役に立とうが、取りあえずは分かりやすく水路沿いの細い道の先を究めた。

== この間に数枚の写真撮影があった… ==

恐らく100m程度歩いただろうか…如何にも長くなるから水路を延々辿っている道中の写真は省略するとして…
この場所に出てきた。もちろん見覚えがある道だ。


ほぼ一ヶ月前のこと、面河内池を踏査するとき通っている。この道から分岐が出ていたらしいことは知っていたが、白岩公園を案内する標示板は見あたらなかった。
今後の先行きがどうなるかはさておいて、これで今日の帰り自転車の元へ戻るのにあの急斜面を降りる必要はなくなった。

現在の自分の居場所を確認できた後、水路を辿り再びここまで戻ってきた。
水路沿いよりもここで自然石の橋を渡るこの道の方がずっと広い。何か主要な場所へ向かうことが示唆された。


それと言うのも道の縁にあたる場所に加工された石が並べられていたからだ。
単純な水路沿いのあぜ道ならこれほど丁寧なことはしない。


水路に沿って上段の道を通る形になる。
確かに昔の道にしては幅が広い。いやが上にも公園に向かう古い遊歩道を想像したくなった。


この道自体はほぼ平坦だったが、下のあぜ道と水路は下っているらしく次第に高低差が開いていった。
メインの道には山側にもう一つの石積みがあった。


その石積みの先には…
石段が見える!


位置的には先に城壁のような高い石積みが始まる場所だ。
斜面を上がってくるときは手前の城壁石積みに隠れて見えなかった。


この石段から先が白岩公園になるのだろうか…

いくら何でも全く無関係なものとは思われなかった。
今度こそは白岩公園であるという決定的な証拠を掴みたいと感じ、この先にあるものを偵察しに石段を登った。

(「白岩公園・初回踏査【3】」へ続く)

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