白岩公園・第九次踏査【序】

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白岩公園の時系列記事はこれが第9次となる。
正直な話、もうそろそろこの種の記述は控えて体系的な記事造りをしなくてはと考えていた。物語風に追っていくのは読むには面白いものの、ある遺構がいつ再発見されたか、どういう特性を持っているかを調べるのが大変だからだ。時系列記事で記述した各遺構にインデックスを付けていないので自分ですら把握しきれなくなっている。

暑くて藪漕ぎには不適切な季節は過ぎ、今年も再び涼しくなってきた。遺構ごとの記事整理の必要性は念頭にあったので、手始めに9月中旬のいくらか山歩きが可能になった時期を見計らって現地を訪れた。このときはまだ時期が早く、後述するように踏査どころではなかったのでざっと遺構ごとの撮影を行って早々に退散した。藪の中を歩いたり現地で時間をかけた調査を行うにはもう暫く時期が経つのが必要と感じ、一ヶ月後に再訪している。いくらかの成果があったこのときの記事を第9次踏査として時系列で記述しようと思う。

まずは9月度のプレ調査報告を以下に述べる。大した成果はないので本編となる第9次踏査から読み始めるにはこちらのリンクからジャンプすることができる。

《 9月度のプレ踏査報告 》
現地踏査日:2014/9/18
記事公開日:2014/11/1
白岩公園を掘り起こして日の当たる舞台へ引きずり出す活動を初めて今年で2年目になる。最初の出会いは2013年の3月だった。ここまでの時系列記事をご覧になった読者なら理解なさっているように、この公園と言うか歴史的庭園は経常的な管理の手を離れているため草木の伸びる時期は酷く藪化し接近困難になる。そのため新緑が芽吹く野山をハイキング…とは行かず真逆になる。即ち4月以降から9月あたりまでは訪れたことがない。

前回の訪問は半年前で、そのときは藤山八十八箇所の第6番、倒壊御堂の扁額救済や登山道白岩公園コースからの到達可能性を検証していたのだった。あれから半年経ち、現地には訪問できないながらも白岩公園のことはFacebookのタイムラインや関連ページでときおり言及され、そのたびに熱心な有志が食らい付いて来ていた。夏場のシーズンオフは踏査こそ停まっているものの決して終わった物件ではないことを感じさせる。

私自身の変化と言えば、夏の暑い時期を前に執筆活動が脅かされる不愉快な持病を抱え込んでしまった。それから9月入り前に5年以上使ってきたデジカメが遂に動かなくなった。カメラ無しではこの種の記事造りができないのでその日のうちに新調した。一時的な出費は当然痛かったが、暗い場所では自動的に明るさ補正したり距離に応じて通常・接写のモードが自動調整されるなどかなり使いやすくなっている。以前はこれらの切り替えは手動で行わなければならず、せっかくのチャンスを品位の悪い写真で台無しにする事態が多発していた。このため未だ藪の多い白岩公園でも割と明るく見やすい画像が採取できるようになった。白岩公園に限らず9月以降作成される記事の写真品位向上に貢献してくれている。他方、動画は機能的には進歩しているのだがPCが追いついていないので当面はあまり動画撮影を行わないようにしている。[1]

さて、以下に9月度のプレ踏査の時系列報告を進める。大した成果はないので変化のあったところだけ足早に書き進めている。

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訪れたのは平日のそれも午前中という奇妙な時間帯だ。昼前に平原方面へ出かける便があったので用事を済ませてそのまま自転車を漕ぎ着けていた。


白岩公園関連ではないが、県道から面河内池へ向かう地区道の入口に行き止まり標識が設置された。


この変化は他のメンバーが指摘していたし、この立て札は県道からも見える。以前からあった立て札は文字が掠れて何も読み取れなかった。

坂がきつく超狭い地区道を進めば白岩公園の入口前に軽四程度が一台停められる余剰スペースがあり、第7次踏査では実際にメンバーを乗せて2度ほど車を乗り付けている。白岩公園がクロースアップされ車で乗り込む人が散発的に現れるようになったため地元の人が更新したのだろう。
面河内池や登山道白岩公園コースにも繋がっているこの道は恐らく里道であり、外部の人が徒歩や自転車で通る分に問題はないと思われる。他方、地元管理の道であっても車を乗り入れるのは微妙である。頻繁に車が通れば路面が傷むし、その補修費はすべて地元負担なので何のメリットもない。入口に標識も出ていることであり、地元住民から道路が傷むから車を乗り入れるなと言われればトラブルになる前に自重すべきであろう。

今回は物件ごとの撮影を意識していたので、まずは坂を押し歩きして常盤用水路を渡ったすぐ左側にある藤山八十八箇所の第8番に接近しようと思ったのだが…
祠へ至るまでの道が酷い藪状態でとても進攻できる状況ではない。


この状況を知った時点で、ちょっと時期が早すぎただろうかと思い始めた。

白岩公園のメインの道に至る分岐点。
珍しく湧き水が水路を流れ出ていた。


ここから先は徒歩である。
ある程度覚悟はしていたが…まだ藪が元気で道が相当に荒れていそうだ。


最初の倒木をくぐった先、さっそく面倒なものが現れ始めた。
クモの巣が酷い。写真でも前方に直線状に伸びる糸が見えるだろう。
もっと明白な写真はこちら


目の高さにある巣は通る前に両手で振り払って破壊しつつ進んだのだが、少し高いところにある巣は殆ど気付かずモロに頭から突っ込んでしまった。
クモの巣を頭から被ったときの感触は何とも言えないものがある。軽い網に触れたかなと思ったらパリパリパリッと巣の糸がまとわりつく音がする。獲物の掛かる糸はもの凄く粘り着いてなかなか取れない。もっとも生活に直結する仕掛けを破壊されたクモこそ気の毒だが…

あまりにもクモの巣攻撃が酷く、途中からは木の枝を手に持って前方を振りかざしながら歩かなければならなかった。

久し振りに訪れた勝手呼称「ボール橋」である。
ここでも新たな変化を見つけた。細い水路に水が流れていたのだ。


初期の踏査ではこの水路は両側の至る所で崩れていたので、廃されているということを書いたと思う。
それは誤りで現在も使われていることが判明した。


水は写真そのまま進行方向に流れていたので、面河内池かその上流の門前池から導いていると思う。途中で登山道白岩公園コースの下を通している。また、先ほど白岩公園入口でちょろちょろ流れ出ていた水がこの水系であることも分かった。

クモの巣攻撃から藪漕ぎはまず無理と思ったので、忠魂碑がある東側ピークには行かずメインの道を進んだ。
半年のうちにメインの道は大変に荒れていた。雨が多かったせいか、斜面から押し出された木の枝が目立つ。


石積みのあるところも上部から木の枝が園路まで流れ落ちていた。
園路の幅が広いところはさすがにクモの巣はなく安心して歩けた。


メインの道が石畳の階段に変わる地点に「白岩公園跡」の立て札が設置されていた。
これもメンバーによって報告された変化の一つである。


大自然の文字が刻まれた八丁岩や五重塔、下池などを撮影するためにメインの道を進んだのだが…
下池前の中央広場はもう水浸し状態である。足をとられず歩く場所を見極めるのも困難だった。


足元を観察する過程で、既知の柱跡とは別のものを見つけた。
このプレ調査における殆ど唯一の新規発見である。


既存のものは少し離れた場所にあり、当初これは鳥居か木戸の基礎ではないかと考えていた。この場所は大自然碑や五重塔を同時に眺められる最初の広場なので、来園者にとって中央広場のような位置づけと考えられる。
しかし一対の基礎跡はこの先の園路に対して垂直には位置していない。このため木戸の跡ではなくもしかすると東屋の基礎ではないかと考え直している。
もしそうなら、あともう2箇所ほど同様のものがあると思う。現地では調査はしなかった。周囲が水浸し状態だし、その水気に誘引されたヤブ蚊がわんさか居て私の貴重なタンパク源を狙っていたからである。

この後、五重塔や法篋印塔、子安弘法大師石碑などを総括記事向けに撮影して回った。何処へ行ってもヤブ蚊が酷く、また至るところにクモの巣トラップが仕掛けられていた。
やはりまだ時期が早かった…と思わされたのであった。

退散途中での撮影。
何度もクモの巣の中に頭を突っ込んだので帽子が酷いことになっていた。


まして園路を外れて藪へ入るとなるとクモの巣とヤブ蚊攻撃のダブルに見舞われとても歩ける状態ではない。結局、東ピーク側には行かずに退散した。

それから一ヶ月経過し、幾分涼しくなったところで再訪した。このときは事前にあることを実験しようという目論見があった。今年の後半入りして初の独自踏査となる。小さな発見はいくつかあったので、プロセスも含めて些か冗長気味にレポートしてみたい。

《 第9次踏査 》
現地踏査日:2014/10/21
記事公開日:2014/11/1

第9次踏査の実行にあたって準備した物品である。
スニーカー、メジャー、火挟み、手揉みポンプ。


シューズは白岩公園専用ではない。履いているスニーカーが安物で裏に孔が空きかけていたので新調したのである。
メジャー。これも白岩公園専用ではないが用途はかなり明白だろう。園内に設置されている主要な遺構の測定を行うためだ。大体の寸法なら写真を元に概略の推測はできるものの、メジャーなど安いものだしそれほど重くもないから測定ごとを含む踏査では常時携行しようと思ったのである。

しかし…火挟みと手揉みポンプ。これは何のための用途かさっぱり分からないだろう。


これも純粋に第9次踏査のためだけに買ったのではない。役目を終えた後手揉みポンプは冬場に石油ファンヒータへの給油に使える。火挟みは当面の用途はないが、安いものだし常備しておけば役に立つこともあるだろう。例えば部屋に大きなMKDが出没したとき、慌てず火挟みで掴んでつまみ出すとか…
そういう状況が起きないに越したことはないのだが…

実はこの2つの小道具が自分にとってある調査を行う上で必須だった。できれば十能も買い求めたかったが、およそ庭というものがないうちのアジトで不要なのは明白だから見送った。

どれほどの本気度かと言われれば、自転車のこの装備状況で理解できるだろう。


自転車での移動が基本なので重いものや嵩張るものは携行できない。手揉みポンプなど軽いものだし、火挟みはその形状を巧く利用して自転車のステムに挟んで持ち込めると考えた。
実際、重くはないし自転車を漕ぐにも邪魔にならなかった。ただ、手揉みポンプが赤いだけにこんな状態で街中を走ればかなり浮くのは仕方がないのだが…

さて、途中を端折って…
常盤用水路前のこの場所まで自転車を押し歩きした。


中途半端な場所だが今回はここに自転車を停めて歩くことにする。白岩公園入口まではすぐだが、露岩の目立つ悪路で帰りも自転車を乗って進めないので。
ガムテープを剥がして手揉みポンプと火挟みを自転車から外し携行した。


入口へ到達。
倒木がなくなり両側から垂れ込めていた木の枝も少なくなっていた。


同一記事ファイルに写真を掲載したので以前の9月の状況が分かるだろう。倒木を片付け枝払いをした人々の存在があったからなのだが、現地を訪れたときにはそれほど大きな違いとして認識していなかった。

右肩に小型バッグを提げ、カメラを持ちながら左手に手揉みポンプ・火挟みを携行して最初の目的地へと進んだ。一連の道具を使ってある場所であることを試したかった。もしかすると新たな発見に繋がるかも知れない期待があったからだ。

(「白岩公園・第九次踏査【1】」へ続く)

出典および編集追記:

1. 以前の動画は *.avi 形式で保存されていた。新しいデジカメでは *.mp4 形式となっている。従来通りの埋め込み形式で掲載はできるものの、古いバージョンの Windows Media Player が対応しておらず再生には別途ソフトが要るのがネックになっている。

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