夫婦池・本土手【1】

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現地踏査日:2013/1/20
記事公開日:2013/2/2
この記事に現れる「本土手」とは、常盤池の本土手および小字を指すのではなく夫婦池の堰堤である。
当初、この記事は考えていなかったが、後続の「塚穴川【2】」に先立って本土手の写真を数枚撮影したこと、最近改めて現地踏査を行って新たな情報が得られたので一物件として記事化した。したがってこの記事には初回に踏査したときの内容や写真が含まれている。

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下に夫婦池本土手の位置を示す。
地図で中心にポイントしているのは樋管が設置されている大体の場所である。


このアングルでの写真が一番場所を理解しやすいだろうか。


地図では気付きにくいかも知れないが、国道190号は夫婦池の本土手の上に盛土して通されている。現況は殆ど勾配のない道路であり、かつて大きく深い沢だったことが想像しにくい。車で国道を走れば堰堤部分を通過するのは一瞬のことだ。しかし堰堤の下流側にある歩道に立って丹念に観察すれば、今でもその存在をはっきり認識できる。

初期に夫婦池を訪れたときの観察では、貯留された水が本土手の左岸側から始まる塚穴川へ自然に流れ込み、国道の下をくぐった先になる固定コンクリート堰を越流していた。このため夫婦池では樋門が存在しないか、水没していて機能していないと考えていた。
しかし樋門が存在しない人工溜め池など聞いたことがない。水を溜めるだけで抜くことが出来なければ、底部に溜まる土砂を浚える作業が不可能である。そこでこのたび改めて昔の堰堤上を歩いて調べてきた。

夫婦池の古い堰堤に降りるための階段が階段がある。ただし一般人にはあまり接近して欲しくない池と思われているようで、降り口はいずれも塞がれていた。


もっとも立入禁止になっている訳ではないので、階段横の斜面を伝って容易に近づくことができる。
錆び付いた鉄柵に何やらタグがぶら下がっていた。


ラミネート処理された注意書きだった。かなり新しい。
接近に注意を促す立て札がまったくなかったので危険だという指摘があったのだろうか…


総括の項目でも書いた通り、夫婦池は常盤池に隣接していながら成り立ちから訪れた人に与える印象までまるで異なる人工の溜め池である。
一般に人工溜め池の本土手付近は一番深い。水が溜まっているから分からないだけで、この柵から向こうは壮大な急斜面になっている筈である。数歩進むだけで大人でも足が届かない深さだろう。

近くの岸辺の様子。
割と透明度がありながら先の方では既に水底が見えなくなっている。岸辺には藻や枯れ木が水没しているようだ。


足を滑らせ転落するだけでも危ない。枯れ木の間に足を挟み込まれたら水上に顔を出すのも困難だろう。
興味深いのは、立て札に書かれた「宇部市公園緑地課管理事務所」の文字である。常盤池とは独立した溜め池でありながら、管理自体は市の公園緑地課管が司っていた。
現在でも夫婦池は常盤池の続きであると誤解している人は多い。それほど近接しているし、繋がってはいなくても常盤池の下位にあって余剰水の受け皿になっていることから管理主体が同じなのは頷けることである。

樋門らしきものがないか汀を凝視しつつ右岸に向かって歩いた。


夫婦池は灌漑用水の需要期・非需要期を問わず常に水位が高い。むしろ水位が高すぎて制御しきれていないような印象を受ける。本土手に設置された古い鉄柵の際まで水が押し寄せ、一部が倒壊していることからも推測される。

やはり、あった。


左岸側の階段を下りて本土手に降りて来たのだが、それほど注視しなくてもすぐ見つけることができた。


独特な形をしたコンクリートブロック護岸の一部にタラップが取り付けられており、上部に排水管がみられる。
どうして今まで気付かなかったのか不思議なくらいだ。訪れた時期のせいで雑草に埋もれていたのだろうか…


最上部の管には栓がされておらず、流下している水の音が聞こえていた。
殆どのタラップは水没している。


タラップは全体が苔に覆われていて殆ど使われた形跡が感じられない。


3段目あたりまでは何とか視認できた。
延々と水底まで続いているのだろうか…


位置が分かるように周囲を含めて動画撮影しておいた。

[再生時間: 37秒]


本土手は何度も歩いていながら、これを見つけることができず「夫婦池には樋管が存在しない」と結論付けてさえいた。
もしかして内側に柵があって見逃していたのだろうか…


樋管がある真上に立ってみると何だか足元がぶよぶよして柔らかい。
水が抜けているのかも知れない。


本土手の護岸部は凸の字型のブロックを組み合わせている。これは初回踏査時から確認できていた。
水位が高いので水上に現れている部材は一つもない。あまり見かけない特殊な形状である。


この位置に樋管があるなら、間違いなく国道の下をくぐって下流側に出てきている筈だ。


下流側には荒手を流れ落ちた流水が溜まる緩衝池が知られている。かつてそこを訪れたとき、正規の流水口以外からもチョロチョロと流入する水があったのを覚えている。
恐らく別経路で緩衝池に流れ込んでいるのだろう。

この樋管がある以上、清掃のときなど必要に応じて開栓し水位を下げている筈だ。もっとも夫婦池に関しては水位が下がったのを一度も見たことがないので、水位を下げての定期清掃がどれほど行われているのかは定かではない。

時系列はまったく異なるが、本土手の下流側を踏査したときの記事を後続として案内しておこう。

(「夫婦池・本土手【2】」へ続く)

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