塚穴川【2】

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現地踏査日:2012/3/9
      2012/3/25
記事公開日:2012/3/27
(「塚穴川【1】」の続き)

前編では塚穴川の国道横断部分手前までをレポートしていた。
その2ヶ月後のある平日、私は殆ど反射的にアジトを飛び出し、自転車を漕いで同じ場所を訪れていた。そこで藪の薄さに乗じて夫婦池との接続部分を調査し、余水吐などの人工物がないことを確認した。その後、未踏査区間になっていた夫婦池の亀浦側本土手付近の踏査を行い、汀を辿る調査を完結させた。

そろそろアジトへの帰宅を考えていた。国道190号の常盤公園入口交差点へやって来たとき、たまたま横断方向の信号が青だった。ただそれだけの理由で私はサッと国道を横断し、その足で塚穴川の国道横断部分から先を踏査しようと思い立った。
公園入口交差点の信号は極めて長い…たまたま訪れて横断方向の青に出くわしたことは殆どない

塚穴川の欄干部分である。
アルミの転落防止柵があり、その内側にメッキのガードレールが設置されていた。
なお、撮影開始時間が遅く写真の品位が悪かったので25日に再度踏査して一部の写真を差し替えている


欄干から下を覗いてみた。
鬱蒼と木々が茂っていて見えづらいが、滞水していた。


自転車を停めた場所から交差点までの間に古い歩道が遺っていることに気づいていた。


元の塚穴川が流れていた沢がどれ位深いのか確かめるために、古い歩道に入って交差点側に歩いてみた。
後続の記事を書くかも知れないので別途寄り道記事として仕立てておいた。
派生記事: 夫婦池・本土手【2】
あらかじめ地図で確認していた通り、塚穴川を渡った先ですぐ川下の方へ沿って伸びる地区道があった。


一度も入ったことのない道である。
塚穴川の沢の上部になるらしく、道路の端は斜面のようだ。路肩注意の誘導標が設置されている。
宇部市の銘入りの路肩標でありながらこの道は認定市道ではない


欄干の端が切れている場所から降りられるようだ。
実際、ここから塚穴川まで降りる用途があるのだろう。斜面を下る踏み跡があった。


自転車をここまで連れて来た後、斜面を降りる。
この辺りから夫婦池の堰堤が始まっているようで、欄干のついた歩道部分は桟橋形式になっている。


コンクリート製の井堰らしきものが見えてきた。


振り返って撮影。
歩道からの高低差は3m程度か。


やはり井堰だった。
コンクリートの柱が突き出ていて堰板を掛けられるように加工されている。昔の幅広な用水路ではよく見かける形式だ。
現在は堰板が外されており、コンクリートの固定堰の上を越流していた。


既に見た通り、塚穴川は夫婦池と全く自然な形で繋がっており、国道を横断した後この固定された井堰で初めて高度を下げることになる。
…ということは…

夫婦池の水位は今よりも下がらない。

ことになる。

ただでさえ国道側に設置された柵を水没させ、芝生に浸水するほど夫婦池は水位が高いように思えるのだが、実際はこれが一番水位の低い状態なのだ。

何だか設計がおかしい気がする。
国道側のすぐ下にある鉄柵を設置した時期よりも後にこの固定堰を造ったのだろうか。固定堰の天端を元に等高線を描いたとき、夫婦池の湛水領域が何処まで及ぶのか調査することもなしに。
もっとも知らない場所に斜樋があってそこから水を抜くことができた…という可能性もあるが
コンクリートの井堰は、高さ50cm程度の堰板を設置できるようになっていた。ただし堰いて上昇させた水を導く用水路らしきものは見つからなかった。
井堰の手前側のコンクリートが大きく壊れているのが気になった
もし今の状態なら、ここに堰板を設置するだけで国道側のあの鉄柵は半分以上水没し、汀は2mくらい国道側に押し寄せるだろう。

おかしいと言えば、この国道の橋梁部分も構造が変だ。
古いコンクリート製の橋桁の上にそのまま土を盛って道路を通しているのである。まるで二重橋みたいだ。


橋桁の高さが妙に低いことは、夫婦池との接続部を視認しようと苦労して川面へ接近したときから気づいていた。拡幅で造られたボックスカルバートは充分な高さが確保されているのに、古い端桁は水面からスラブ下まで1m程度しかない。


これでは上部の路面から浸透した雨水は古い橋桁の上に溜まるから、土砂が流れるのではなかろうか…

いや…
「流れるのでは…」と懸念する以前に、実際に流れ出てしまっていた。長年、横から降り込んだ雨で盛土部分が侵食され張り出し歩道の基礎コンクリートが宙に浮いている。
コンクリートの下部には基礎砕石を敷くのが常だから、土砂と一緒に流れ出てしまったようだ。これでは車道側のコンクリート基礎は殆ど張り出し歩道支持の役に立っていないだろう。 まあ、今はこの内側に転落防止柵を造って人が歩かないようにしているから大丈夫だが…
河川と言うよりは道路カテゴリに入る話題なのでこれ以上は追及しない


井堰の上流側は上昇した水が護岸を侵食しないように間知石が積まれていた。割と新しい施工のように思える。


結局、塚穴川は国道横断部分の先にあるこの井堰までは夫婦池と同じ水位を保っていることになる。川の形状を成していながら水の流れは穏やかで水深も30cm程度だ。
そして井堰で高度を1m程度下げ、その先は漸く自然な川らしい流れを見せるようになる。

詳しくは確認できていないが、井堰からすぐ先の方で荒い岩肌を急に下る部分があるようだ。
川底が失われ、空中に放り出されるような部分が見えている。滝になっているのだろうか…


できればこの先を確認してみたいと思った。井堰から先はそれほど水量がなく、かつて歩いた荒手の排水路と同様露出している岩肌部分が多いので、降りることさえ出来れば接近できただろう。

しかしこの井堰から川底までは結構な高低差があり、安全に昇降できる状態ではなかった。


まあ、無理してここを降りる必要はないだろう。下流まで進んでそこから遡行できると思ったからだ。

一旦自転車の元へ戻り、地区道を進む。
国道から数十メートル進んだところに沢の方へ降りる別の経路を見つけた。その入口が分かるように振り返って撮影している。


見たところすぐ近くに建つ家の畑にでも向かう道のような感じだ。しかし下り坂は間違いなく塚穴川の流れる先に向かっている。


進攻してもいいものだろうか…
何となく周囲の雰囲気が進攻しづらい感じだったが、私道につき侵入禁止などの文言は見あたらない。

物凄く急な下り坂だ。自転車を連れて行く意義を感じなかったが、狭い地区道上に放置するわけにもいかず押し歩きした。


石垣が切れた先から溝蓋の上を歩く道になった。落ち葉の堆積が物凄く滅多に人が往来しない場所らしい。
写真では敢えて外しているが左側には古びたネットフェンスがあり、民家の敷地になっていた。


坂を下りる途中から護岸で固められた塚穴川が見えていた。
しかしその先にあったのは、想像していた以上の奇なる景観なのだった。

(「塚穴川【3】」へ続く)

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