(「夫婦池・汀踏査【1】」の続き)
この階段から眺めた夫婦池。
既に午後3時半を回っており、国道の堤部分が夫婦池の汀まで影を落としていた。
この場所を訪れるのは初めてではない。本土手用水路を辿ったときには一枚だけ写真を撮っているし、そもそも国道190号を東に向いて走れば車窓からも眺めることができる。
これは3年前の夏に初めて本土手用水路を辿り、用水路が国道の下をくぐる場所を偵察したときに撮った写真だ。
このときから感じていたことだが、夫婦池の国道190号に隣接する堤部分は構造がちょっと変わっている。
現在は堤にあたる部分を国道190号の道路敷が通っている。昭和50年前半に4車線化に拡幅され今の姿が出来上がった。
堤の上を道路が通る場合、通常は一勾配の斜面にするか、より勾配のきつい擁壁になっている。しかしここでは道路敷から斜面になっているのではなく、汀に遊歩道のような平場があるのだ。
もしかしてこの平場の部分が元の堰堤部分だった…ということはないだろうか?
即ち国道部分は夫婦池の堤として当初から存在していたのではなく、橋を架けずに済むよう追加して盛土したように思う。もし道路部分の盛土がない状態で今の水位だったら、決壊の恐れがある非常事態だ。国道部分が追加の堰堤となっているので水位を上げることが出来たのだろう。
この平場部分に酷く錆び付いた鋼製の柵が汀に並んでいた。朽ちた柵は撤去されたのか、歯抜け状態と言うよりはもう柵が残っていない区間の方が多い。
記憶が確かなら昭和50年頃だったろうか…このタイプの柵は市内で普通に観られたような気がする。例えば車道と歩道を仕切る柵などだ。場所は違っても共通するデザインだった。気がつけば恐らくここでしか見られないのではないかと思うくらいに激減した。
それにしても…誰でも普通に考えそうな疑問だが、
どうして溜め池の水に洗われるこんな場所に柵を設置したものだろう?
常時今ほど水位が高いなら、錆びるに決まっている。この場所は時期を変えて何度か訪れているものの、この水位より下がったのを見たことがない。恐らく今ある柵は、水位が低いときに設置されたのだろう。その後湛水量を増やすために余水吐の高さを変えたか、あるいは不可抗力で流れ出にくくなるなどの理由で水位が定常的に高まってしまったのだろうか。
一部の鋼製の柵は倒壊して池に呑まれていた。柵が無しで済まされるものでもないようで、失われた区間にはロープが張られている。
振り返って撮影。
用水を貯留するというのが溜め池本来の役割なら、これほど高水位な夫婦池は極めて有能に職務を遂行していると言える。しかし眺める溜め池としてはちょっと残念な要素が多い。壊れた柵もだが、歩道から投げ捨てられたゴミがかなり目立った。
そういった残念なものがなるべく視界に入らない場所を選び、堤の斜面に上がって撮影。
日が傾いて暗く写る部分が多いものの、初めに見たあの陰鬱で恐ろしい表情の夫婦池ではない。
汀に接近してみた。普通の芝生状態の場所に池の水が押し寄せている。何とも奇妙な光景だ。
杭の打たれた場所に立つだけで、水がジュッと染み出てくる。藻などと違い水生の植物ではない彼らは殆ど生きながらえることが出来ず枯れていた。
堤の痕跡を示すものがないか、汀を眺めながら東に向いて歩いた。
水面下にブロックのようなものが並んでいるのを見つけた。
T字型をしているブロックがパズルのように並んでいる。それほど大きな傾斜はついていなかった。
ブロックはすべてが水中に没していて、部分的にでも姿を現しているものは一つもなかった。
この辺りは吹き溜まりになるせいか池の水の透明度は低い。ブロックが何処まで続いているか分からなかった。
国道沿いの東岸部分に到達する。ここに別の階段が設置してあった。
見てのとおりこの先は汀を辿れるような状況ではない。雑木が水面スレスレに生えている状態だ。さすがに一旦歩道まで上がらざるを得ない。
階段の下側があの高さまで造られているということは、やはりこの部分が遊歩道だったか、水位を調整するためにここへ降りてくる用途を当初から見込んでいたようだ。
しかしざっと見た限りでは樋門らしき痕跡は見つからなかった。
(あのT字型ブロックがかなり怪しい…水位が高いために水没しているのでは…)
国道190号の歩道から直接昇降できるようになっている。しかし入口部分にはガードパイプが設置されていた。
もっとも階段を通らずとも真っ直ぐ斜面を登ってガードパイプのない場所から行き来できる。
振り返って撮影。
さて、自転車を取ってこなければならない。一旦歩道に出た。
歩道から階段を降りられないように柵で塞がれていた。但し立ち入り禁止などの立て札はなかった。
自転車を取りに戻ろうと歩く途中、歩道から写した夫婦池。明るさ調整して撮影したので、さっきの写真よりは開放感があるだろう。
(読者がこの記事をご覧になる頃には左側に写っている遊園のジェットコースターは無くなっている筈だ)
交差点の隅に停めていた自転車に跨り、さっき上がった階段の近くまで戻ってきた。
そのすぐ先に幅の狭い水路らしきものがある。夫婦池から流れ出る塚穴川だ。
合わせて塚穴川の記事も書けるように写真を撮っておいた。
派生記事: 塚穴川【1】
この用水路みたいな塚穴川に沿って遡行すれば、さっき辿れなかった部分を飛ばして再び夫婦池の汀に接近できるかも知れない…幸い歩道から塚穴川の始点に向かって伸びる小道があり、国道からは見えづらい広場に繋がっていた。
その広場およびその周辺で見つけたものは塚穴川踏査の記事に譲るとして、夫婦池の汀へ接近できる場所が一箇所だけあった。広場にある祠の横側だった。
可能な限り汀へ近づいて撮影した限界。
ここからは汀に沿って左右のどちらにも歩くことができない。
ズーム撮影。
正面に石炭記念館が見える。
他には夫婦池の汀へ安泰に近づける場所が全く見あたらなかった。
既に午後4時近い時刻で、更に時間をかけて接近できそうな汀すべてを当たるのには無理があった。そこで私は兼ねてから気になっていた夫婦池の汀のある場所に絞り、自転車を走らせた。
(「夫婦池・汀踏査【3】」へ続く)