塚穴川【1】

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現地踏査日:2012/1/8
記事公開日:2012/1/30
塚穴川の水源は専ら夫婦池である。溜め池を出た水は国道190号をくぐり、次いでJR宇部線と県道宇部空港線を横切った後すぐ河口に到達する。この間僅か1km程度の短い川だ。
1月の上旬、私は夫婦池の汀を辿る計画をたて、南岸にあたる国道190号に沿った部分を歩いた先に塚穴川へ到達した。それは池のこの斜面を登り切った先にあった。


このときの状況は以下の記事に書いた。
派生記事: 夫婦池・汀踏査【2】
正面になる転落防止柵の掛かっているところに塚穴川があるのだが…
夫婦池の斜面を登りきった所にさっそく奇妙なものを見つけた。ぱっと見たところ、かつて家屋があった場所のような気がする。


近寄ってみる。
鉄平石を敷き詰めた中に周囲とは違う円形部分がある。何か白鳥かツルのような絵が描かれているようにも見えるのだが、かなり年月が経っているのだろう…掠れていてよく見えない。


初めてここへ来たときから気がついていたし、独立した「物件」として記事作成しようかとも考えた。しかし存在する位置からして、どうも個人の所有物のような気がするのでこれ以上は立ち入らなかった。[1]
そこに隣接して芝生のじゅうたんに覆われた自然の小道があり、小道に沿って国道の下を横断しているのが塚穴川だ。

平場から撮影。国道を間断なく車が行き交っている。
塚穴川は幅の狭い川なので、簡素な欄干こそ備わっているものの橋の名称をはじめ基本的な橋としての部材を与えられていない。


歩道から撮影。
芝生の道はその奥の広場に通じていた。


その奥は隠れた広場のようになっていて、何やら建築ブロックでできた祠のようなものがこちらに背を向けている。


ちょっと怖いが身を乗り出して歩道の横断部分真下を覗く。
国道拡幅時代に整備されたようでボックスカルバートになっている。かなり深く降りることは当然できない。


次に気になるものがここに転がされている2本の花崗岩の部材だ。
何となく昔の樋門に使われたものを想起させるようで、正方形の穴が空けられていた。


穴の空いた花崗岩と言えば、道ばたの村境などに立てる石もある。村の祭りがあるときにこの石に沿わせて幟を立て穴の部分に紐を通して固定するのである。
しかしその場合はくり抜かれた穴は円形の筈で、四角いものは見たことがない。樋門の部材ではなく、正方形の木材が入手しやすくなった時代に造られた寺院関係のものかも知れない。


拡大して撮影したのだが全然ピントが合っていない…再訪したとき撮り直しが必要だ。
新しい写真を撮り直してきた…以前の失敗作はこちら


何だか塚穴川という川のテーマ性からどんどん離れていく気もするのだが…この屋根がついた建築ブロック造りの小屋も謎めいている。昔の公衆トイレにしては小さすぎる。


奥には街灯があり、古びたベンチらしきものも見えた。広場の下草はよく刈ってあるものの公園と言うにはあまりにもうらぶれた感じだ。
街灯のランプは失われて塔の部分だけになっているし、ベンチも長らく人が座った跡もなさそうな古さだ。
しかしベンチや街灯がある以上私有地ではなく古い公園ではないかと思う


振り返って撮影。建築ブロック造りの小屋はトイレではなく祠だった。
何か石仏が祭ってあるように思えたが詳しくは見てきていない。
正体を知った後は畏れ多い気がしてちょっと離れて撮影している


塚穴川はこの広場に沿って流れており、この奥で夫婦池に繋がっているはずだ。夫婦池の汀を訪ねる目的も兼ねて接近を試みたのだが…
もの凄い藪。そしてかなりの斜面になっているらしい。
どこまで地山か確信が持てない状況では、さすがにこれ以上は踏み込めなかった。フワフワしている枯れ草や木の枝の上に踏み込めば、須く川面に持って行かれるだろう。


藪の中に何やら白い看板のようなものが見える。及び腰ながら腕だけ伸ばしてズームしてみた。
常盤湖の魚を取ってはいけません。


見たところ割と新しい看板に見える。この先にあるのは常盤湖ではなく夫婦池だから、最初からここに立っていたのではなく別の場所から移動されたのかも知れない。

もしここから降りることができれば、夫婦池から塚穴川へ流出する水の動きが眺められることだろう。
しかし試すまでもなかったのだが、
安泰に降りられる場所など全くない。
広場の端は殆ど何処もあの白い看板が埋もれていたような感じの激藪かつ急斜面になっていた。夫婦池の汀どころか塚穴川に接近できる場所すらない。

例えばここ。
写真では分かりづらいが川に向かってもの凄い急傾斜になっている。しかも干上がっている訳ではなく相応な深さをもって流れていた。


国道横断部分がボックスカルバートだったので整備された三面張り用水路かと思われたものの、実態は全く手つかずな自然の川だった。
両岸は人の手が入らない巨岩だらけ。水面までは目測で5m程度。転落すればここからの上がり直しは絶対に無理。


ズーム撮影する。
よっぽど人の手が入らない空間なのだろう。コンクリートで護岸を造った形跡もなく、おおよそ周囲にはゴミなどの人工物さえも見あたらない。


こういう状況なので夫婦池と塚穴川の接続部がどうなっているかは分からなかった。

しかし人が接近できる場所でないということは、樋門もないだろう。これは夫婦池に溜まる水をコントロールしながら取り出すことができないことを意味する。流入してくる方は本土手用水路の隧道付近にあった樋門から調整可能なのだが…
夫婦池の水位は現在も異様に高い状態にある。それは汀の鉄柵を錆びさせた。普通ならそうならないように塚穴川へ流出する場所の樋門の栓を抜いたり、ポンプ室から汲み出したりするものだ。元からそういう機能を持たないのだろうか。
あるいはそういった設備は普通にあるものの、単にこの場所からは接近できないというだけなのかも…
塚穴川の夫婦池接続部はどうなっているのだろう…
そこには接近可能?
今までの写真からも明らかなように、ボックスカルバートを横断して対岸側を遡行することはできなかった。距離的には広場のすぐ先に接続部がある筈なものの、そこへ行く方法は全くなさそうで撤収する以外なかった。

今回の踏査は夫婦池の汀周回が主眼だったので、塚穴川の下流を辿ることは次回以降持ち越しとなっていた。流れている水量が少なければ、あるいは国道を渡ってボックスカルバートをくぐる形で遡行できるかも知れない。

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さて、以下に続く記事の案内を…

後日、塚穴川と夫婦池の接続部について踏査を行った。この記事はこちらから。

(「塚穴川・夫婦池接続部」へ続く)

同じ日に再びこの近辺まで戻り、国道を横断して塚穴川の先を辿った。その記事はこちらのリンクから。

(「塚穴川【2】」へ続く)

出典および編集追記:

1. 鉄平石を敷き詰めたこの場所は、かつて現代彫刻の「ロッキング・ドール」という作品が展示されていた跡地である。しかし通行人からいたずらされる等の事例が相次いだことから現在は常盤橋の湖水ホール側に移設されている。詳細は上記項目リンクを参照。

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