護岸に沿って回り込み、例の発動機が乗っている台座に接近した。
足元はすっかり乾ききっており、一面に雑草が生えていた。広場の一角に立っているような感覚で、池の底という感じがしない。
このアングルで撮影できるとは…と思えた一枚。
池の底に伸びるパイプは吸い上げ用の管ではなく単に台座コンクリートを支えているに過ぎなかった。遙か昔の水位が低いときに設置したのだろう。
排気筒部分から排熱ファンまで錆び付いている。
木製の台座がくっついているのはどういう目的だったのだろう…
完璧な赤茶色に変色したパイプ。
回転ベルトやホースが付属していた筈だが、使われなくなった時点で取り外されたようだ。
この護岸に接する土地所有者が設置したのかも知れないし、あるいは排水か給水目的で周辺の耕作者によって共同使用されていたのだろうか。
次にこの周辺の護岸が再開発されるときまではこのまま時間をかけて自然へ還っていくのだろう…
堆積した肥沃な土壌を糧に思い切り伸びまくる雑草たちの中にひときわ目立つ大振りなものがあった。
これって何?
何だか大根の葉っぱのようにも見えるんだが…もしかして常盤池底産の大根か?
(あまりに元気よく生育していて引っこ抜くのはさすがに忍びなかったので眺めるだけにしたが…)
護岸の上から見たように、鋭角点付近は水気でぬかるんでいて接近できないと分かっていたので、可能な限り右岸側に接近してみた。
鋭角点からの水は右岸寄りを流れていて、接近するにつれて足元が怪しくなってきた。
とても右岸まで到達できる状態ではない。
ここから眺める限り右岸側は個人の畑のようで、左岸側と違い接近できる経路がなさそうだった。また、護岸が左岸側よりずっと高く、上から降りられそうにない。特に興味を惹くようなものも見えておらず、右岸側はこの先も辿らず眺めるだけになりそうだ。
次に可能な限り入り江の出口に向かって進んでみた。
こちらも汀が近づくにつれて足元が不確かになるのを感じたので程ほどにしつつ…
ここからだとちょうど前方にあの水没建築ブロックが見える。
既にみたように右岸側は護岸の形で高専グラウンドの裏手に続いているので辿ることはできない。
(辿れるほど水位が下がることはまずないだろう…)
ズーム撮影する。
こないだアパートの駐車場から眺めたときよりずっと遠い。一番近い場所は民家の裏手で護岸の下は乾いているようだが、恐らくあの場所に行く方法はないだろう。
(逆に近隣住民ならあの水没建築ブロックの正体を知っているかも知れない…)
そして…
一連のズーム撮影を行うよりも実は先に気付いていたのだが…
あれは何だ?
水没建築ブロックのずっと左岸寄りに四角く見える何かがある。
それは明らかに入り江の中に存在していた。
最大限にズームしてみた。
サイコロ状のコンクリートの先に何か棒のようなものがついている。これは…
すぐにピンと来た。
水上に突き出た鋼管が見えていたあれだ…
航空映像で楢原の入り江に小さな穴として視認される物体を見つけ、果たしてそれが実態あるものか確認するために市道楢原線を走った。そして離れた岸部から水上に微動もしない筏のようなものを見つけ、最終的にそれが池の中にある井戸のような建築ブロックと分かった。あのとき水上に突き出た鋼管らしきものも同時に見つけていたのである。
その当時は先っちょしか見えていなかったので不審には思いながらもそれ以上追及しなかった。池の底に竹竿でも刺さっているのだろう…程度に考えていたからである。
水位の下がった今、その下に何やら巨大なコンクリートの塊らしきものが隠れていたことが判明した。
諸々のものを後回しにしていち早く接近してみたい衝動に駆られた。時系列を飛び越えて先を知りたい読者はこちらから直行されたい。
派生記事: 水没コンクリート構造物
接近するにはまず一旦左岸側に戻らなければならない。しかしそこには入り江に注ぐ小川の水が乾いた領域を濡らし、渡れなくなっていた。
写真で観る限り、あの石積みがある側まではひとっ飛びのように見えるだろう。
それが一筋縄ではいかない。
周辺の地面がどれほど心許ないかは、足元のこの状況をみれば分かるだろう。
次の一歩を踏み出したらどういう事態が起きるかはかなり明らかだ。
流れ出ている水はチョロチョロなのだが、意外に幅があって跨ぎ越せる場所がない。
結局、急がば回れで直接石積みの場所に近づくのではなく、一旦発動機の据わった護岸近くまで戻った。
池の底に降りて来るとき歩いたV字護岸の角である。
石やらブロックやらが流れ着いて足場があるので、ここなら飛び石伝いに渡れそうだ。
さて…
鋭角点は楢原の入り江を潤わせているこの小川というか水路までとして、ここから先は時系列として楢原の入り江として後続記事を書くことにする。先に見つけた水没コンクリート構造物に関しても後続記事から案内されている。
(「常盤池・楢原【1】」へ続く)
なお、一年後に水没コンクリート構造物を再調査する過程で再びこの鋭角点に立ち寄ったので、そのときの記事を案内するリンクも掲載しておく。
(「常盤池・楢原鋭角点【3】」へ続く)