とん堤

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記事作成日:2016/3/21
最終編集日:2022/5/4
とん堤は、西岐波区の村松にある小さな溜め池である。
写真は堰堤からの撮影。


余水吐の位置をポイントした地図を示す。


後述するように溜め池本体よりもその奇妙な名称に興味がもたれている。
《 概要 》
市道吉田丸尾線から南寄りにある住宅地に向かって地区道を下った末端部にある。
最後の住宅から先がそのまま溜め池の堰堤になっている。


堰堤にはネットフェンスが設置され、鋼製の樋管が設置されているので比較的近年改修されたようである。
フェンスには水利組合関連の札はなかった。


溜め池の全容。
周囲が400m程度しかなく、流入する河川は存在しない。水の入れ替わりに乏しいせいか溜め池の水はかなり黒々としていた。


ざっと観察した限りで生物の姿は見当たらなかった。

堰堤より下流側を撮影。
溜め池の水は、幅の広い沢地の堰堤寄りを流れている。


余水吐は堰堤の南側端にあったが、周辺は背の高い灌木に覆われていて撮影できなかった。
《 名称についての考察 》
この溜め池への興味は専らその特異な名称にある。宇部市|宇部市防災マップにおいて西岐波地区向けマップ(PDF)に、とん堤という名称で記載されている。

とん堤のある場所は字布田であり、溜め池の名称に関連していない。隣接する小字も松ノ浴、中尾、中ノ浴などで溜め池の名称に影響を与えていない。このことよりとん堤という名称は地名由来ではなく何か別の起源を持っていると考えられる。

手元の資料および公開された情報、現地での溜め池撮影にあたって接した地元在住民お一方からの談話によっても名称の由来は分からなかった。何の根拠もなく音感だけから推測すると、殿様の堤にまつわるのではないかとも思われた。

「とん」の音から連想されるのは殿(との)がある。厚東区にある山陽街道の一部区間としてどんだけ道が知られる。この由来には殿様だけを安全にお通しする「殿だけ道」という一説がある。同様に「殿様の堤」から「とののつつみ」を経て現在の名称に至った…というのは附会だろうか。同様の溜め池として風呂ヶ迫地区の化粧田池があり、化粧田は地名ではなく側室用の田の義という説がある。[1]

この他に考えられるのは、どんどん水が溜まっていって流れていくなどの擬態語由来だろうか。

「どんどん」のような擬態語が地名などの由来になることは考えづらいかも知れないが、二俣瀬や船木周辺にはそのような地名が特に多い。木田には道々池が知られ、善和の吉原川上流には道々という小字がある。この川に沿う坂道と滝は「どんどん坂」「道々滝」といった名前と呼ばれている。田の小野地区にも同じ小字名と名称をもつ坂が知られている。[2]それらの由来として「上流からどんどん水が流れ出て来る」という擬態語由来ではないかと推測されている。船木の鈍々(どんど)は現在も馴染みの地名であり、同様の由来と思われる。

読みとしてはまったく異なるが、二俣瀬山中地区には婦曽々々(ふそふそ)という特異な小字名が存在しており、恐らくはそこにある3連続溜め池の名称となっている。この名称も水が流れ出ていく擬態語由来ではないかと思われる。擬態語由来を仮定すれば、二俣瀬地区で特に多いのは特定の場所に命名する際の地域性に基づくものであろう。

とん堤は新しいタイプの樋門を有する相応な規模の溜め池なので、恐らく市農林振興部によって管理されている。一部の溜め池で通称名と管理名が異なる場合がある。農林振興部が所管する溜め池名リストから情報が得られたなら随時編集追記する。
初めてとん堤への到達に成功したときの現地レポート。道間違いを重ねた経緯も記録している。全2巻。
時系列記事: とん堤【1】
なお、時系列記事の写真はカメラのレンズが汚れていることに気付かず撮影しているため不鮮明である。後述する2022年に再訪したとき撮り直し、状態の悪い以前の原典画像は削除されている。

Facebookでのダイジェスト報告など。
外部サイト: FB|とん堤
出典および編集追記:

1.「宇部ふるさと歴史散歩」p.81

2. いずれも善和吉原地区、田の小野八窪地区での現地在住者による聞き取り情報。
《 個人的関わり 》
この溜め池自体の関わりは皆無だが、宇部市ホームページの防災マップでその名称を確認したのが初めてだった。溜め池そのものよりも名称に興味を持ち、現地に何か由来となるものがあるのではと考えてかなり早い段階から調査計画をたてていた。マップを元にこの溜め池への接近を試みたものの2度失敗している。この記事における写真撮影は3度目の調査によるものだった。

同様に地名由来でない謎めいた名称の溜め池の一つである隊屋堤は、とん堤の2回目調査を行ったときに見つけている。
【 記事公開後の変化 】
2022年の春に吉田地区を訪れ、およそ6年振りにこの溜め池を訪れて写真を撮り直した。まったくの思いつきで現地へ向かったために、初回訪問時以上に道に迷っている。溜め池の現状に変化はなかった。

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