写真は堰堤からの撮影。斜め前方に見える土手が上池の堰堤である。
余水吐を中心にポイントした地理院地図を示す。
馬の背池は上池・下池と呼ばれる2つの大きな溜め池と、その西側の支流になる小さな溜め池から成っている。
(小さい方の溜め池は新堤と呼ばれている)
《 アクセス 》
山歩きを兼ねて溜め池を眺めるなら、やや距離はあるが中山観音から水路沿いに伸びる登山道を歩くのが分かりやすいコースである。中山観音の駐車場を出発点として山手に伸びる道に向かう。
道なりに進むとやや急な坂を登って高台に出てくるので、左に曲がり馬の背水路に沿って歩く。
ここから先の道中については以下の市道記事を参照されたい。
派生記事: 市道門前馬の背線【2】
市道の末端部を過ぎていよいよ登山道らしくなった先で二俣の分岐と道標に出会う。左が中山観音コース、右が馬の背下池と案内されている。
分岐を右に進みしばらく歩くと溜め池の堰堤とネットフェンスが見えてくる。
余水吐は右岸の端に設置されており、コンクリート床版を渡って堰堤に到達できる。
溜め池だけを訪れたい場合は、市道高嶺中山線から伸びる地区道を利用するルートがある。
以下にポイントした場所まで車を乗り入れる。
(認定市道ではないが先に馬の背遊歩道入口があり車で通っても差し支えない)
ここは送電鉄塔建て替えの後処理が行われている工事現場である。
(現地の様子は今後変動するかも知れない)
工事以前は堰堤に向かう道があった場所で、現場が動いていなければ歩いて通るのは問題ないと思う。
(撮影目的で現地まで歩いている最中に出会った工事関係者と挨拶をした)
この入口から歩けば下池を見おろす場所に出てくる。
急斜面を降りていけば堰堤に到達できる。
《 概要 》
余水吐と走水路はかなりの高低差があるため、危険防止で有刺鉄線付きフェンスで囲まれている。走水路を渡るコンクリート床版の前にネットフェンスがあるが、常時開放されている。
(お馴染みの遊泳禁止の立て札も設置されていた)
余水吐からの走水路。
もの凄い急勾配でかなり深く、近づく方法はない。
(恐らくこのまま蛇瀬川の上流端に繋がっていると思う)
余水吐の構造。
蒲鉾を半割にしたような断面で長さは10m程度、高さ1m程度であろうか。この構造は上池のものと共通しているようだ。
危険が伴わない程度に接近してみた。
人里離れた山地のせいか透明度は高い。余水吐の内側は階段状になっていて、最初の一段は余水吐と同程度の高さのようだ。
同じ場所から堰堤方向を撮影している。
堰堤は平ブロック張りで、中央に樋管が見えている。
平ブロックは昭和後期から登場した資材で、現在でも水路の護岸や道路の法面保護などに使用される。
(勾配の大きい法面や土圧のかかる場所には現在でも練積ブロックが使われる)
このことから最近になって改修されたことが窺える。
堰堤からの眺め。
正面に上池の堰堤が見えている。しかし後述するようにここから直接往来する道はない。
堰堤上は歩ける程度には草刈りされているが、頻繁に訪れる場所ではないらしく本土手斜面は草まみれであった。
堰堤の中央に樋門が設置されている。
階段はコンクリート製で如何にも新しい。
樋門は単一で別部材のハンドルを取り付けて操作するようになっている。昭和後期以降に改修された溜め池の樋門はこのタイプが目立つ。
訪問時は水位がかなり高く、階段の先の方まで水底に伸びているのが見えていた。
余水吐方向を撮影。
透明度が高く水の色が極めて美しい。天候が曇りがちで光量不足のため写真ではその紺碧色が充分に再現されないのが残念だ。
堰堤の端。こちら側がいわゆる左岸になる。
確認しなかったが地区道から中電の現場を経てここへ降りてくる道がある筈だ。
(道が荒れていて藪漕ぎになるかも知れない)
堰堤上に頭が赤く塗られた垂木の杭が打ち込まれていた。
池の上空を通過する送電線の測量用となる中心線の控えと思われる。
余談だが、この送電線は山口宇部線と呼ばれ、平成25年1月に周辺の鉄塔を建て替えて鉄塔の位置が変わっている。古い国土地理院の地図など送電線経路が書き込まれている地図を参照しつつ山歩きする場合には注意が必要である。
(もっともそんなに道に迷うような山奥でもないのだが…)
なお、下池の汀を辿れる登山道や踏み跡は両岸ともに存在しない。左岸側から僅かに踏み跡を辿れるだけで、下池を眺めるのは本土手からと上池の堰堤側からに限られる。
その踏み跡を少し辿って本土手を撮影している。
このように汀は自然の露岩が多く原生林が水面上まで張り出している。
露岩の下の少なくとも2mくらい水底が見透せていた。
水の色は秀麗だが、歩き回れる道がなく池を眺める場所が限られること、池に付随する興味深い設備にも乏しい。そのため山歩きの折りにならまだしもとりたてて訪れる要素に薄い溜め池である。上池と同様に堰堤が改修されて日が浅く、昔を偲ばせるものが少ないことも理由にある。実際、記念碑が設置されている上池とは対照的に下池には池の名前を記したもの自体何も存在せず、来訪者向けの施設もない。余水吐付近は有刺鉄線付きのフェンスで厳重に囲障されるなど、どちらかと言えば関係者以外あまり接近して欲しくない溜め池のように映る。
遊泳禁止の立て札はあるが、釣り禁止とはなっていない。もっとも溜め池までかなりの距離を歩かなければならず、また富栄養化していないせいか魚の泳ぐ様子も見受けられない。
この日は空模様が思わしくなく満足のいく写真は撮影できなかった。再度ここを訪れる便があったら、より映りの良い写真に差し替えるかも知れない。
なお、後日上池を踏査したとき堰堤から下池を撮影している。後続記事としてリンクで案内しておく。
(「馬の背池【4】」へ続く)